52-3 開幕、ハジメさんの嫁探しチャレンジ!
2021.03.29
誤字修正いたしました。
若者→若君
タカシロ家はおれたちに『これでもか』というほどのVIP待遇を用意していた。
会場である複合型施設のそこここに、おれたち+アリサカ家の入れる大きさのVIPブースを。そしておれたち専属のアテンドスタッフ10名もつけてくれたのだ。
最初はもっと人数が多かったのだけれど、いくらなんでもと減らしてもらってこれである。
なおそのリーダーはレインさんであり、メンバーにアスカとハヤトがいる。
しろくろライブ終了後、三人は速攻で移動していたが、それはこのためである。
式典で着ていた燕尾服から、上級スタッフお仕着せと思しきおそろいのスーツに着替え、すっかり『働くイケメン』に仕上がっている。
レインさんはゴージャスな金髪をさっぱりとオールバックに、アスカもデコをひかえめに知的な銀縁眼鏡に。ハヤトは元から質実剛健なんでそのまんまだ。
『やーごめんね美少女じゃなくって~まあみためは美少女にしといたから許してちょ☆』
なぜかひとりだけユカイなねこみみメイド服(♂)がまじっているのは、まあたぶんサービスなのだろう、たぶん。
薄化粧に清楚な笑顔で言うもんだから、マッド動画でも見ているかのような気分にさせられる。
こんなのがそろってる時点で、『お土産』要員で用意されたと思しき美人さんたちの出番はなさそうな感じしかない。一体どうしてこうなった。あとでアスカたちに聞いてみる必要がありそうである。
もっともとうの美人さんたちは、おれたち野郎どもを眺めてめっちゃおめめキラキラしているのだけれど。それでいいのか。
ともあれそんな彼らに付き添われ、おれたちは移動。
『嫁探しチャレンジ』会場であるホールに向かえば、すでに大入り満員だった。
素直にVIPブースにお邪魔し、ちょっと人心地ついた頃に、開始のアナウンスが流れた。
シックな赤の幕前で、マイクをとるのは、黒の燕尾服もつややかに決まった色男。
「こんばんわ、皆様。
まずは、このように素晴らしき場をご提供くださいました、タカシロ家の方々に――
そして、愛し合うふたりの未来を祝福すべく、集まってくださったみなさまにも、心よりの感謝を申し上げます。
これから催されますのは、ファン家創立の頃より伝わる『嫁探しの儀』にございます」
一礼して挨拶を述べたユーさんは、巧みな語り口でファン家設立の物語を語り始めた。
「むかしむかし。ファン家がただのちょっとしたお金持ちだったころのお話です。
とある家の若君が、ファン家の乙女と恋に落ちました。
『どうぞ、娘さんとの結婚をお許しください』若君はそう申し出ましたが、乙女の父親は首を縦に振りません。
なぜなら、若君の家は没落寸前の小さな家で、さらに乙女は五つ子。
それも、実の両親すら見分けに苦労するほどよく似ていたのです。
つまり、若君は不幸な誤解をうけてしまったのです。すなわち、彼の目的はファン家の富であり、娶るのは五人姉妹のだれでもよいのだと。
それでも、そんなことは絶対にない、あの方だからこそ愛をささげたいのですと、幾度も必死に頼み込む若君に、父親はひとつの試練を課しました。
五人の姉妹を若君に同時に会わせ、この中から彼の愛する乙女を当てて見よ、そう言ったのです。
乙女を真に愛していた若君にとってはたやすいことでした。
若君はあっさりと乙女を見つけだし、愛し合う二人は晴れて結ばれました。
その後、若君の秘めた商才が花開き、今の商家・ファン家の基礎を築いたのだと伝えられております」
しっとりと語られたロマンチックなエピソード。ギャラリーがいくつものため息を漏らすのを確認し、ユーさんは晴れ晴れと声を張った。
「その時代から数百年。
今宵、愛の試験に挑むのは我らが愛すべき友、ハジメ・ユタカ。
彼が探す乙女は、『ユウミ』。
二人の愛の物語については、改めて語りますまい。
友として、その恋の成就を願いつつ――いざ、開幕を!」
ネットの調子が悪い……!
のちほど誤字等直すかもしれません。
次回、ついに『嫁探しチャレンジ』決着?!
どうぞ、お楽しみに!




