Bonus Track_50-6 Brand New Dayの、そのまえに~ハヤトの場合~
ミソラ先生があの棒グラフの正体を明かしたのは、『しろくろ』ラストライブ直前だった。
あれは、俺たち有志による、クラウドファンディングの達成額だ。
ぶっちゃけ言えば、自分たちへの投げ銭の半分がそこに振り込まれるようにしてあったのだ。
これは明日にも、学園生全員に祝い金として配られることになっている。
俺たちのエキシビに食われてしまうから、という理由で出場を――すなわち今週の収入をあきらめた者たちには詫びのしるしに、この状況でもがんばって出場した者たちには激励のボーナスになるものだ。
最初は俺たち四人だけでやるつもりだった。
けれど、話を聞きつけた仲間たちが次々乗ってきてくれた。
『うさねこ』『にじいろ』両団体はもちろんのこと、『マーセナリーガーデン』からは三世代トップたちが。『騎士団』からの出場者は全員が加わってくれた。
おかげで達成額は予想の10倍に。観客席の盛り上がりはそれ以上になった。
ミソラ先生が『学長スペシャル』で『鎮静』をかけなければ、気絶する者も出たに違いない。
それでもアスカとライカはいまだにハイテンションなのだが。
ライカはともかく、アスカは鼻血を出さないか心配になってきた――そのときアスカが俺に言った。
「そうだハーちゃん!
鼻にちゃんとちり紙つめてきた? リアルにもどったら出血大サービスなんてしゃれにならないかんね!」
「おい。」
つっこみつつも思った。
アスカはきっと今晩、熱を出すだろう。
あんな無茶苦茶やってるくせに、そんなところは変わらない。
ステージが整えられれば、とっときのスーツを着たイツカとカナタが現れた。
ルナとルカに花束を渡し、アカペラでしっとりと歌ったのは、『夏色アドベンチャー』。
ルカとの出会いがきっかけでイツカが、はじめてステージで歌った曲だ。
一番は、あのとき歌詞をど忘れしたイツカが、即興で歌ったものに。
二番は、レモンさんが作ってくれたという、オリジナルの歌詞になっていた。
図らずも目元が熱くなってきた。
あのあと俺はイツカに『俺に負けたらアイドルバトラーをやめろ』と勝負を挑んだ。
けれど、今になってみれば、あそこでイツカが勝ってくれてよかったと思う。
このところステージを離れていたというのに、それでもやつらの歌声は、朴念仁の俺さえこんなに揺り動かす。
俺がイツカの可能性を潰していれば、今のこのときはなかったのだ。
後で詫びなければ。特に、何度も文句を言ってしまったカナタには。
きっと気にしないでと言われるのだろうけれど、それでも。
そんなことを考えていれば、アスカがぎゅうっとヘッドロックをかけてきた。
ステージの邪魔をしないですむ程度の、ギリギリ苦しくないもの。けれど薄い胸板の内側では、ぷっくりと餅が焼けていることがうかがわれた。
ギブギブと細い腕をたたきつつ、俺は決意を新たにした。
今日言おう。
ホーリーポーションのチカラなど借りずに。
俺は本当はどうしようもないやきもちやきなのだけれど、それでもいいだろうか、と。
割烹でrがlになっていた……? はて、何のことでしょう(すっとぼけ)
はい、今回いろいろと苦労しました。ええ。
ともあれこれで、卒業記念エキシビはおしまいです。
次回、新章突入。最後の合同練習、からの、久々のパーティー参加です!
どうぞ、お楽しみに♪




