50-7 開始! トンデモエキシビション・バトル!!
2021.03.10
前とのつながりがおかしかったため修正いたしました。
しかしアスカがボケれば→そしてアスカがボケればライカも
どうもなにかおかしい気がするので直させていただきました……
入場者ゲート→入場ゲート
終盤、地の文を追加いたしました。
一方ルカは目をむいて叫んだが、アスカは悪びれた様子もない。
第三部、通常パートの最後を飾ったのは『マーセナリー・ガーデン』。
ケイジとユキテル、マルヤムさんとオフィリアさん、三世代リーダーたちによる鮮やかなバトルだった。
変異種を含むグレートマンイーター三株を相手に一歩も引かず、流れるような連携攻撃で仕留めた手際は見事というほかはない。
これで『マーセナリー・ガーデン』も安泰だ。そんなカキコミがネット上には相次いだ。
その後は、30分程度の休憩が入った。
これが終われば、いよいよエキシビションバトルの幕開けである。
両バディの控室をめぐり、がんばれとエールを送る。
ルカとルナは「ありがとう」と笑ってくれて、アスカは「も~おれたちなんかよりるーるーたんずとしっぽりしてこなきゃー! え、もう行ってきたの? よーしよーし、ごほうびにあとでブラッシングしてあげよーねー。ねっハーちゃん、ライカ!」なんぞとめっちゃいい笑顔で言ってくれた。
そうしてしばしみんなでわいわいしたのち、席に戻ればすぐに開演のベルが鳴った。
スポットライトを集めた第一入場ゲートから現れたのは、『白兎銀狼』。
今日はライカも人型だ。ぶっちゃけアスカによく似た猫耳メイド服(♂)姿で、アスカとハヤトに並んで歩いてくる。
あるいは華やかに手を振り、あるいは沈黙で答えつつフィールドの真ん中にたどり着くと、アスカが一歩、前に出た。
なれた様子で視線を流し、羽ばたき式小型飛行カメラを呼び寄せると、神妙な顔を作る。
いつも以上のデコデコっぷりを誇る眼鏡や、ほっぺたのクローバーのフェイスペイントがあってなお、繊細な美貌。その破壊力は、一気にその場を静まり返らせる。
見てる限りでは文句なくイケメンだ。しかし、おれたちは知っている。
こういう顔をした時のアスカは、絶対確実にトンデモなことをぶちかましてくると。
「えー、まず。
今からおれは、皆さんにお詫びをしなければなりません。
おれは、皆さんに隠し事をしていました。
それは……」
意味ありげににやりと笑えば、アスカの頭上にアレが現れた。
けむる白銀の月。
プラチナムーン――クラフトの『天才』の証である。
「そう、おれは実は! ホンモノの大・天・才なのでーっす!
というわけで今日は、暴れちゃうぞー!!
ひゃっはー! 闘技場壊しちゃったらゴメンねー!」
白いうさみみをぽーんと跳ねさせ、広げた両手でぱーん! とばらまくのは、色とりどりのイリュージョン・ボム。
たちまち会場に散らばる、光でできた動物たち。
フィールド、客席お構いなし。好き放題に飛び回り、駆け回り、にぎやかなことこの上ない。
しかも芸の細かいことにこの動物たち、みんなどこか誰かに似ているのだ。
さっきおれのところにぴょんぴょん突撃してきたたれみみうさちゃんはやけにおれに似てるし、その後やってきた黒猫ちゃんは、綺麗なルビーの瞳をしていた。
ひと通り会場を沸かせた後、動物たちはアスカのもとへ。かざした手のひらの上に集まり、光のかたまりとなって消えていく。
代わってずしんずしんと入場してくるのは、今回の犠牲者、なのだが……。
「それでーは! カモン! 本日のゲスト――!! グレートアダマンタイトゴーレム! さ~ん~に~」
ここでアスカは、目を疑う行動に出た。
「全力でホリフォしまーっす!」
「はああああ――?!」
にっこにっこのいい笑顔で、敵であるはずのGAゴーレムに神聖強化をかけたのだ。
Sランクプリーストであるアスカのしわざで、その巨体はあっという間にさらに巨大化。
10mほどだった身の丈は20mをゆうに越してクラスアップ、大規模討伐イベントでもなければお目にかかれない激レアSランクモンスター『フォートレスアダマンゴーレム』となってしまった。
これがどれほどでかいかというと、ゴーレムの顔がおれたちの高さに来る。
これにはハヤトもびっくりだ。ちなみにライカはツボに入ったらしく、指差して笑ってる。
「お、おいアスカ――?!」
「ふっふー。おれ一度これやってみたかったんだよねー♪
モンスターちゃんだってたまにゃー全力で暴れたってよくね? つーかね、」
そしてアスカは不敵に笑う。
「ふつーのSランクモンスター一体でおれたちの強さを表現しろとか、ぶっちゃけ無理ゲーだから!
イツカナちゃんが規格外なら――!
るーるーたんずはちょー天使っ! おれは大天才っ!
ハーちゃんは世界一っ! でもってライカはトンデモだかんね――!」
『おれだけほめられてなさげだにゃ――!!』
ガーンという顔のライカだが、アスカはその肩をぽんぽんと叩く。
「何をいうかねライカくん。おれがトンデモなんて形容詞つかったのはあとにもさきにも……えーっと……多分ないから!」
『しまらねえ!!』
そしてアスカがボケればライカもHAHAHAと笑う。清楚な白のメイド服が泣く勢いのそっくりさん漫才だ。
けれど、おれたちクラフターにはわかる。彼はまだ一年稼働してないメタモルソードドールなのだ。つまりまさしくトンデモなのである。
「おおい……そろそろはじめないか……?」
そこへハヤトが情けない顔でつっこめば、アダマンゴーレムもうんうんうなずく。
脱力もののその光景、けれど、ハヤトの肩の力がすっかり抜けたことはよくわかった。
まじめで気負いがちなハヤト。責任感と精神力とが強いだけに、彼を脱力させることは並大抵なことではない。
しかし、それができたときのパフォーマンスはけた違いなのを、在学中そばで見てきたおれたちは知っている。
「おうっしゃー! ほんじゃーゲートオープン! るーるーたんず、どーぞー!」
第二入場ゲートがひらき、カッコよく手を振るルカと可愛らしくカーテシーを決めたルナはそして、ぴたっと凍り付いた。
最初に口を開いたのはルナ。のーんびりと見上げてこんなことを言う。
「わあ、おっきいね~!」
「おっきいね~じゃないわよ――!!
ちょっとあんたアスカなにやらかしたのこれ――っ!!」
一方ルカは目をむいて叫んだが、アスカは悪びれた様子もない。
「てへっ?
いやさーおれたちならこのくらいじゃないとエキシビんならないと思って。
ほら、おれたち星龍ちゃん倒してるじゃん? だからー」
「もー………………
わかったわよっ! やってやろうじゃない!!
こうなったらハヤトより活躍してやるんだから! 覚悟するのねっ!!」
それでも、そういうルカの顔は、楽しそうに笑っている。
かくして、トンデモなエキシビションバトルが幕を開けたのだった。
アスカはやってくれる子……!!( ゜Д゜)
次回! エキシビ決着からの、しろくろ学園ラストライブ! イツカナも歌うよ!
どうぞ、おたのしみに!!




