50-6 第二部後半・第三部前半:特化型バディのアント狩りと新兵器おひろめとシオンの覚醒!
ネット上で話題を集めていた『イザヨイRe:Mix』のふたりも、見事な戦いぶりを見せて三ツ星昇格を決めた。
相手はアイアンアント10匹。
二ツ星のダブルハンターバディにはきついはずの相手だが、イザヤがメインとなって切り込み、背後をユウが守る形で秒殺した。
その秘密は、ふたりのけも装備にあった。
イザヤの装備はサバクツノトカゲ。ユウの装備はアードウルフ。
詳しく言うなら前者は砂漠にすむトカゲ、後者はちょっとイヌっぽいがネコ科の動物。
一見関連がないようだが、実は両方とも、もっぱらアリを食べて生きる動物。そのけも装備は、アント系に対して特攻をもつ。
それをフルに活かし、アント退治にターゲットを絞ってのし上がってきた特化型バディが『イザヨイ』なのである。
イザヤの手にしたバトル・ピックが、弱点である細い首をピンポイントで狙いうち。
回り込んで来ようとするものに対しては、ユウが大鎌をふるい、まとめて脚を斬り払う。
鉄壁のコンビネーションで、流れるようにクリティカルを連発する。
アントの動きを知り尽くし、本来の得意武器をふるう二人は、以前イツカがひとりでアイアンアント五匹を瞬殺した時以上のいきおいで勝負を決したのであった。
満場の拍手の中、快哉を上げ、大きくガッツポーズを決めた二人を見て、おれはふと思った。
一年ほど前、ふたりは向こう側にいたはずだ。すなわち、アントを操る側に。
いまのふたりはその間の記憶を消されているらしいけど、あのアントを操っていた人たちは、もしかしたらいっしょに『仕事』をした人たちなのかもしれない。
それを思うと、複雑な気持ちにならずにはいられなかった。
けれども、それを顔に出すのはよろしくない。
いまは、栄光の一歩を踏み出したふたりのことに気持ちを集中させ、拍手を送る。
イツカのやつめはというとそんなめんどくさい思考にとらわれたようすもなく、笑顔で拍手を送っている。
「うらやましいよね、お前ってさ」
「おうっ!」
思わずつぶやけば返ってきたのはピーカンの笑顔。
わかっているのかいないのか。ともあれおれの肩からはガクッと力が抜けて、はははと笑いが漏れてしまうのだった。
そんなこんなで第二部が終わると、しばしの休憩をはさんで第三部。
これまたお祝いをかねたオープニングライブは、『うさもふ三銃士』によるもの。
シオンがおれの『発芽変身』をリメイクしたのがきっかけでできた『ぴょんぴょんダンス』で会場は盛り上がる。客席のほとんどが立ち上がって踊っている状態だ――もちろんおれたちもVIPボックスで『ぴょんぴょん』踊る。
ひとたび踊れば誰もが可愛く、楽しくなってしまう不思議なダンスと、それに合わせてミツルが作ったキュートでポップなアイドルソングは、またしても謎の棒グラフをどんと伸ばした。
ステージ衣装をバトル装備にチェンジして、そのまま始まったバディバトルは、実に挑戦的なものだった。
相手は大型のフレイムレッサードラゴン。イツカとおれが、五ツ星昇格記念のショーバトルで戦った相手だ。
つまりシオンは今日、決めるつもりなのだ。
余計な前振りは必要ないとばかり、突進してくる赤い巨体。
うさぎ装備ならずとも逃げの一手のその攻撃に、しかしソーヤは不敵に笑う。
「クラフター相手に突進は悪手だぜ? そいやっ!」
抜く手も見せず投げ放ったのは、大振りな一本のダーツ。
まっすぐに飛んでゆくそれは、輝く糸をふわり、自分の後ろにパラシュートのように広げ、空中に錬成陣を展開。パワー注入スポット部分に配された『エナジーオーブ』が順にぷちぷちはじければ、チカラを得た陣が発動した。
キーンと微かに高音が響いたかと思えば、白く輝くプラズマの奔流が、前方にあるすべてを薙ぎ払う!
上位合成錬成魔術『メギドフレア』。『ふしふた』こと、『旅の聖者とふしぎなふたり』の第一回を彩った大技だ。
あのときはソーヤとミズキが時間を稼ぐ中、シオンが地面に必死で陣を描き、最後に三人のパワーを注入してようやく発動したものだったが……。
それがいま、ソーヤの腕のたった一振りで発動。
驚異の光景に、その存在を知らされていたはずのおれですら度肝を抜かれた。
上がった赤いポップアップは、あの時よりは控えめなBP12000。そして相手はフレイムレッサードラゴン。アンデッドウルフたちのようにはいかない――つまり、手負いとなりつつも充分戦える状態。
怒りに燃える竜は、お返しとばかり大きく息を吸い込み、紅蓮の炎を吐きかける!
「このレベルならっ!『アトリエ・ラパン』!」
ソーヤはというとあわてず騒がず覚醒技発動。突き出した両手を起点に、半透明のかまくら型バリアが展開、二人をすっぽり包みこむ。
わたしっぽのようなもふもふの外観を持つそれは、炎のブレスを受け止めてなおびくともしない。
「こいつは四女神のラッシュをしのぎ切ったバリアだぜ?
フレイムブレスの一発二発、よゆーで受け止めたるぜってなもんよ!!」
余裕で笑うソーヤ。その背後では、すでにシオンが錬成陣を……描いていない。
しずかに目を閉じ、小さく微笑みを浮かべて。
「……おねがい、ソーやん」
「おう!」
可愛くお願いの言葉をつぶやくと、ソーヤの腕の中に入り込む。
『アトリエ・ラパン』の壁面に、小さな両手をぺたりと当てる。
大きく息を吸い込んで、一声。
「いくよっ! オレの第一覚醒!
――『パステル・パレット』!!」
その声とともに、ふたたび『メギド・フレア』が発動。
破壊のひかりは今度こそ、フレイムレッサードラゴンを消し飛ばした――まだ吐き終わっていなかったブレスもろとも。
白と赤とが対消滅する瞬間見えたのは、『アトリエ・ラパン』の壁面にどうやってか描かれていた、『メギド・フレア』の錬成陣だった。
なぜかつめつめとなった今回です。
次回、はじまるエキシビションバトル!
どうぞ、お楽しみに!




