Bonus Track_50-2 恋する少年、ピンチヒッターになる!~ハルキの場合
ひさびさ、シャモア装備のハルキ君です。異国の皇女さまに惚れてます。
……と自分で解説する弱気作者です。
「いた……たた……うぐう……」
「ど、どうしたの?!」
「おなか……おなかいたい……!!」
それは、木曜日の放課後のこと。
ジムでトレーニングしていたら、目の前でしゃがみこむやつがいた。
ほっとけるわけなんかない。すぐに駆け寄った。
「だいじょぶ? 歩ける?」
「な……なん……とか……」
肩を抱いて支えるようにして、そいつを医務室へ。
先生による診察の結果は。
「ストレス性の胃腸炎ね。
しばらくはトレーニングも休んで、体をいたわりなさい」
「お……俺あした、試合なんです……
こんな直前にキャンセルとか、ペナルティがっ……いたたた……」
高天原の学園闘技場は、なんというか厳しい。
ドタキャンなどして試合に穴をあけると、ペナルティとしてTPが引かれるのだ。
かといって無理して出て、試合内容に物言いがついた場合も。
「バディに連絡して、だれか、代わりに出てくれる人を探してもらいなさい。
むりして拗らせては元も子もないわ」
「お、れ……単騎、だから、……バディ、いな……」
そんなの聞いたら、言わないわけにはいかない。
「俺が出ますっ!
ファイトマネーはあげるから、安心して休んで!」
「…………ありがとうっ……!!」
明日は、そうでなくともやりづらいシチュエーションだ。
ハヤトさんたち、我らがうさねこの第一期首脳。
LUKAとLUNA、元祖アイドルバトラーにして『にじいろガーランド』の創始者姉妹。
文句なしにトップランクのバディふたつが、同じ日に卒業記念エキシビションを戦うのだ。ほかのバディは全部食われてしまうだろう。
実際、TPに余裕のあるバディはそれを知った時点で次々出場辞退。
残っているのは、そんなん気にしない猛者か……
そんな状況でも少しでもファイトマネーを稼ぎたい者たち。
そりゃ、胃も痛くなるというものだ。
幸い、俺はちょっと図太い方だ。
そして、これも修行と思えば、むしろ俺にとっては幸運なことだ。
一か月と少し前、たった一度だけ話をした、あの女性――第三皇女エルメス。
遠い異国の地にいる彼女にもう一度でも会いたくて、俺は考えに考えた。
結果。強くなるしかない。それが結論だった。
あのひとは王族だ。当然、この国のことだってチェックしているはずだ。
なんか、ここのところどんどん強くなってるやつがいる! なんと! あのときの少年じゃないか!
そう思ってもらえたら、きっとなんか、チャンスだってあるはず。
さらに聞くところによれば、エルメス皇女は人柄やさしい人道主義者。戦争を止めるなら、国を超えて味方になってくれるはずだ。
どんどん鍛えてイツカさんとカナタさんにおいついて、いっしょに戦争を止めて。
ソリステラスと月萌の和平の証に、皇女エルメスとだれかが結婚……ということになったら。
イツカさんとカナタさんにはもうお相手がいるし、アスカさんとハヤトさんはもうラブラブだし、兄貴はナナさんと結婚してるはずだから、残るは俺だけ!
そうなるように一日でも早く強くならなくちゃだ! がんばるぞー!!」
「きーたん、きーたん」
と、ふいに肩をポンポンたたかれた。ふりかえるとそこにいたのはすっごくいい笑顔のアスカさん。
「おれと、だれが、ラブラブだって?」
「え?! あ、あすかさん?!
あっ、あのそのっ、『超聴覚』でもつかったんですかっ?!」
「途中からダダモレだったんデスよっ!!
もー、君みたいな純朴少年がそんなこと言ってたらみんなホントのことだと思うじゃん……」
どっとうずまく笑いの中、額を押さえてため息するアスカさん。その肩をやっぱ額を押さえたハヤトさんがポンポン。
うん、ラブラブにみえる。
「えっ、ちがうんですか?」
「いっいや違わないけどちがうのっ!」
「え……えっ?
あの、それってどういう……」
「あー、だからー……」
「頼むお前たち学食でその話題は勘弁してくれ……」
狼の耳をペタン、トホホ顔のハヤトさんが懇願してきた。
とりあえず俺たちはそろってこの場から撤退。
しかし学食から距離を取ったところで、アスカさんはちょっと悪い笑いを浮かべた。
「よしよし、ちょーどよかった。
おにーさんたちとちょーっとお茶しようか、きーくん?
だいじょーぶ、オミたんも一緒だから! ねっ?」
結局お茶かい!(※オヤジギャグ)
詳細は突破記念パーティーまでないしょです。
次回、やっとこさエキシビきます! お楽しみに!!




