50-1 夜のお茶会de明るいアイドル計画!
ゲームの中のルナは、ひらひらワンピースふうの白ローブをまとい、白いハトの翼で宙を舞うプリーストだ。
普段はみつあみにしている茶色の髪も肩に流して、夢々しいフンワリ感満点。癒しと守りのチカラの強さもあって『天使みたい』と評判の元祖アイドルバトラーである。
しかし、そんな彼女は第二覚醒の発動でさらにパワーアップしたもよう。
背中の翼は二対に増え、ワンピース風ローブもふわふわ感アップで、まるっきり天使。
頭にわっかなんか付けたら、もう完璧だ。
イツカはその姿を見て口をぽかん。そのまんまぼてっと地面に落ちた。
いや、落ちる寸前におれがツタの網で回収したんだけど、ほっといたら確実に頭から落ちてた。
直前まですんごい勢いでバトってた黒猫騎士はどこいった。あまりの落差にルカもあきれる。
「あ、あんたねえ……」
「ごめんね、ほんとこいつ女の子に耐性なくって。
これからはその辺も鍛えてやってかないとね!」
よろしくね、と笑いかけたら、こんどはルカが落ちかけた。何故。
「うふふ。じゃあるかはカナタくんが鍛えてあげてね!」
「っ?!」
思わぬ強力な反撃に、おれはイツカを落っことしかけたのだった。
シメはあんなんなってしまったが、全員確認したいところは確認できたのでオーライだ。
イツカとおれは、おれが伸ばす枝葉を使っての樹上連携バトル。
ルカはとにかく強い相手とのガチの打ち合い。
ルナは第二覚醒の仕上がり具合。
いずれも上々、満足いく結果である。
おれたちは執事姿のライカにふるまってもらったお茶を片手に、少しこれからのことを話すことにした。
なぜなら、かなり重要な問題がおれたちの前には横たわっている。
というのは。
「ふたりも来週からソレイユ・プロダクション所属だよね。その、……」
「……。」
切り出したはいいが、言葉の続かないおれ。もじもじうつむいて、カップで口元を隠してしまうルカ。
イツカのやつめはニヤニヤしている。こいつめ、お前の問題でもあるんだぞ。
うさみみパンチでツッコミを入れたところで、ルナがにこにこフォローしてくれた。
「わたしたちもね、おひっこしは突破記念パーティーのあとにする予定なの。
わたしたちもそうだけど、みんな、パーティーまではいそがしいから」
「あ、うん、そうだよね、うん」
くそう、我ながらなんだこのキョドリっぷりは。いっておくがおれにやましい気持ちはない。そう、けっしてそんなきもちじゃないのだ。むしろ……
「おひっこしさきだけど、レモンさんちにこない? っていってもらってるの。
わたしたちも、そうしたいなって。
先輩として、いろいろ見習わせてもらいたいし。
それにね、いきなり『同居』しちゃうのはアイドルプロモーション的にも問題があるから、」
「ぶっ?!」
イツカは一転お茶を吹いた。ざまあ半分、安心半分でおれはハンカチを取り出す。
「はいはい、落ち着こうねイツカ?
おまえがそういうことをちゃんと理解できるってわかっておれは心底ほっとしたよ」
「かなりひどいっ?!」
ガーンという顔、毎度のことながら面白い。ふきふきしつつなだめてやる。
そうしてルナに続きをお願いした。
「いいじゃん、大人だねえらいねーってほめてんだからさ。
ごめんねルナ。続きをお願いします」
「うん。
『イツカ君とカナタ君のふたりが18になるまでは、清く正しいさわやか交際をお願いします』って。
そのころになればΩ制廃止も月萌に根付いてると思うし、そうしたら誰も、文句はいわないって。……
だから、お休みの日にはみんなでデートしようね!
セレネちゃんも、ライムさんもいっしょで!」
「……おうっ!」
ほわほわ笑顔で繰り出された、まったくピュアでストレートな発言に、ライカもふくめおれたちは全員ぽかんとしてしまった。
けれど、次に湧き上がってきたのはあったかな笑い。
おれたちはティーカップをかちんと打ち合わせ、これからも仲良く楽しく付き合っていくことを約束しあうのだった。
「ともあれ、まずは今週末よ。
あたしたちはエキシビ。二人はあたしたちへの歌と、ミライくんたちとの合同練習。
バッチリ決めて、来週への弾みをつけていきましょうっ!」
ルカも最後には調子を取り戻し、いつもの元気ではっぱをかけてくれるのだった。
もう二月ラストですか……はやっ!
次回、新しい名前のおはなし。
はたして決まるか、決まらないのか。
どうぞ、おたのしみに!




