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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_6 まさかの再会、そしてまさかの

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6-2 再会、けれど

「ミライー!! よかった生きてたー!!」

「もー、死なないよイツカってば!

 黒服さんも言ってくれたでしょ、研修だって!」

「それでも心配だったんだから! ぜんぜん連絡できないし!!

 元気だった?! 怖い目に合わなかった?」

「うん、ちっとも!」

「よかった――!!」


 そのとき、えへんと咳払いが聞こえた。

 みれば、『青嵐公』先生が仏頂面でソファーに座っている。


「お前ら、呼び出しかけた担任を完全スルーとはいい度胸だな。」

「あ、いたんだセンセ。ごめん!」

「すみません、ついうれしくて……

 あ、もしかして、先生が見つけてくれたんですか、ミライのこと!」

「っ……」


 するとミライがうつむいた。

 みればミソラさんもそうしている。

 なにかまずいことを言っちゃったんだろうか。おれたちが顔を見合わせた瞬間、二人がいっせいに笑い出した。


「おっかしー! ノゾミがふたりに先生って呼ばれてる!!」

「あははは! お兄ちゃんが先生だー!!」

「だー!! 仕方ないだろ仕事なんだから!!」


 腹を抱えて笑い転げるミソラさんとミライ。

 顔を赤くしてムキになる『青嵐公』先生は、ちょっといつもとイメージが違う。

 おれたちは顔を見合わせた。


「……『ノゾミ』?」

「『お兄ちゃん』……?」

「ほらノゾミ、そろそろ表面換装マスクエフェクト解いてあげたら?」

「仕方ないな……お前ら、まばたきしないで見ろよ?」


『青嵐公』先生はそういうと、すっと眼鏡を外す。

 その瞬間、おれは確かに見た。

 目の形が変わった。

 きついほどの切れ長から、もう少しだけ丸みを帯びた、懐かしいかたちに。


「あ――!! ノゾミ兄ちゃん!」


 イツカが指をさして叫ぶ。

 これはこの国でも失礼な行為だが、この時ばかりは誰も注意しなかった。

 だって、おれも思わず『超聴覚ハイパーオーディション』を全開で発動してしまったのだから。


 ほんものだ、間違いない。

 ここにいるのは、ノゾミ・アリサカ。二つ名を『眼鏡の死神』『青嵐公』と呼ばれる、超有名αプレイヤー。そして、すぐそこにいるミライのお兄さんだ。


「悪かったな。

 まわりに知られるといろいろ厄介だったから、お前ら限定で目元だけごまかしてたんだ。

 この後も、表向きは他人ってことで頼むわ」


 頭かきかき、すこし照れながらそう言ってくるのは、たしかにノゾミお兄さんだ。


「他人じゃないだろ。担任だし!」

「お、うまいこと言いやがったなイツカ!」

「ってかコスプレじゃんやっぱ目元だけー! ちょっとモフらせろよー、それで俺モフられたんだしー!!」

「イツカずるーい、おれもお兄ちゃんモフるー!」

「あたしもー!」


 ノゾミお兄さんはイツカのあたまをわしゃわしゃ。

 そのままイツカがじゃれつけば、ミライが続き、ミソラさんも参戦。

 その様子を見たおれは……


「おれもモフりまーす!!」


 とりあえず便乗しておいたのだった。



「うっふふー♪ キュウビのしっぽはもっふもふー♪」

「もっふもふー♪」

「はー! 目標達成! モフったモフったー!! ヤッホーウ!!」


 ミソラさんとミライ、イツカはニッコニコで満足げだ。

 ほっぺたまでどこか、つやつやしているようにも見える。

 むりもない。伝説級のレアしっぽの感触は格別で、おれも思わず我を忘れかけたのだから。

 ほわほわしつつも、ちょっとだけ申し訳ない気持ちでおれは、ノゾミお兄さんにお礼を言った。


「えっと……ありがと、ノゾミお兄さん」

「お前まで便乗してくるかカナタ……まあ、いいが。

 外ではやるなよお前らっ!! いいなっ!!」

「はい」

「はーい」

「えー」

「え~」


 いい子なのはおれとミライだけだった。

 ミソラさんとイツカは不満げだ。

 ノゾミさんは眼鏡をかけなおし、『青嵐公』の顔で話し出した。


「ったく、そうでなくともつまらん騒ぎになっているというのに……

 イツカ、カナタ。お前らとんでもない誤解されてるぞ。

 きのうの昼、『掃除をやる、やらない』と学食で口論しただろう。

 夕方には『バトルしようよ』『一回だけな』と仲良くしていたが……

 あれを掃除やバトルのことだと思ってない腐った馬鹿どもが腐るほどいやがるらしい。

 まずはそれを解決しないといかん」

「え……えっ?」

「わからなければ掲示板これを見ろ」


 先生がブルーの携帯用端末ポータブルプレイヤーをおれたち二人のまえに突き出す。

 イツカはばっとおれの前に手を広げる。


「イツカ?」

「いや、だめだ。これは知らないでいい。お前は知っちゃいけない。俺まだ死にたくない!」

「えっ?! そんなひどいこと書いてあるの?!」

「ああ。頼むから見るな。お前が見たら多分この国壊滅する」

「ええっ……いやまあ、そこまで言うなら……」


 イツカの手はぷるぷると震えている。顔はまたしても真っ青で、頭の耳もぺたんこだ。

 気になる。すごく気になるけど、これを無理強いするほどおれも冷血じゃない。

 とりあえずそこはおさめたところで、先生ははあっとため息をついた。


「話を先に進めるぞ。

 お前たちが生活管理に問題を抱えていることは、すでにわかっていた。

 だから三ツ星になり、メイドサービスの申し込みを受け次第、定められた人材を紹介する予定だった。

 だがお前たちは申し込みをせず……そこで、今日の呼び出しとなった。

 まさかその直前に、こんなふざけた事態になるとは思っていなかったがな」

「う……スミマセン……」

「すみません……」


 すっかり元通りの『青嵐公』先生の顔でじろっと睨まれる。

 イツカもさすがにこたえた様子で、殊勝にこうべを垂れる。

 おれもその隣で、同じようにした。

 状況がつかみ切れているわけではなかったけれど、ともあれ厄介なことになっているのは事実のようだったから。

 つまりおれは、またしても先生に、収拾の労をかけさせてしまったのだ。

 イツカにもほんとうに、悪いことをしてしまった。

 これはそもそも、おれがキレなければよかったことなのに……


「……で、それで、ミソラ姉ちゃんを?」

「イツカ。どこの世界に校長先生を部屋付きメイドとしてあっせんする学校があるの?」

「え、だって『メイド』になれそうな人ここにはミソラ姉ちゃんしかいないじゃん」

「別室にいるとかそもそも口実だったとかそういう可能性は?!」


 またしても落ち込みかけたおれだったが、次の瞬間そんなのはヴァルハラの果てまで吹っ飛んでった。


「あははは! それ楽しそうだねー!

 イツカとカナタのお世話役かー、いーなぁ。

 お茶入れてー、ふりふりのメイド服着てー、『おかえりなさいませごしゅ』」

「おい! それ俺にもやってないことだろ!! ……っじゃない、お前がメイドだなんてやつらが気の毒だろう、リアルの家事能力ゼロなのに!!」


 ミソラさんはいつも通り、明るく笑いながら乗ってきた。

 先生、もといノゾミお兄さんが慌てると、さらにいい笑顔で悪乗りする。


「よーし、じゃあ今日帰ったらやろっか♪ 家事の練習も含めて♪」

「はわあ……!」

「おいやめろ馬鹿、ミライの教育に悪いだろ! ミライ、いまのはなし。今のはなしだからな!!」

「う、う、うん……」


 ミライは真っ赤になって耳パタパタ。確かにこれはミライには早いだろう。

 ミライがおれたちと同い年であるということは、故意に忘れておくことにする。


「お前らも!! 俺はミソラとメイドさんごっこがしたいなんて、ちっともこれっぽっちも思ってないからなっ!!」

「あ、ええ、はい」

「ふ~ん~……あっいやわかったわかりました!! つづきをどうぞせんせいっ!!」


 悪ガキイツカが耳ペタのうえで敬語になった。腰の後ろでしっぽもブワッとなっている。

 むりもない、先生は一瞬、昨日のガチモード以上の闘気を発したのだから。

 こほんと咳ばらいをし、先生は軌道修正を行った。


「お前らも知っている通り、ミライは『高天原入学前研修』として、高天原エリアでの奉仕活動を行っている。

 そこでだ。ミライをお前らの『私設メイド役』として推薦したい。

 ミライはお前らの世話をすることで、研修を遂行できる。

 お前らは生活管理の心配なくしてαを目指せる。どうだ」

「………………」


 おれたちは黙り込んでしまった。なぜって。


「それって……俺たちがα目指していろいろしてんのに、ミライはそれを間近で見ながら、掃除とかいろいろしてるって、そういう形になるわけか」

「……………………。」


 イツカがそう問えば、ミライはうつむいた。


「ねえ、ミライはそれで……いいの?」

「……………………おれさ、いまΩ(オメガ)なんだ」

「はっ?!」


 おれが重ねて問うと、ミライは笑顔でそういった。

 自分はいま、社会の最下層にいるのだと――

 口の悪い奴らには、『奴隷階級』などと言われる身分なのだと。


 そうして、打ち明けてくれた。

 あの日。ミライが消えたあの時に、ミライの身に何があったのかを。

何が……一体何が起きたの……?

よなかにいっぱいPVが?! まずはありがとうございます!

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