Bonus Track_49-3 カノジョガ・ミタ・ミライ~とある令嬢の場合~
マウントブランシェの頂き近くにある小さな緑地。
その一角にある、野外ステージ。
白を基調としたそこにあの二人が上がってきたのは、昼を回った頃。ほぼ、アバターメールでやり取りしていた通りの時間だ。
シンプルな白のワイシャツと黒いズボンの豆しば装備――ミライと、真っ赤なドレスのロップイヤー装備――ソナタ。
いかにも仲睦まじい様子で踊りだすものだから、二人ともに転ばせてやった。
ミライは足をもつれさせ、ソナタも足を滑らせる。
さすがにこたえたのか、ふたりは踊るのをやめた。
音楽を止め、ともに無言で引きあげていく。
二人がログアウトするまでを確認して、私はモニターの前を離れた。
順調、順調だ。
予定通り、来週の干渉はなしでいい。
ソナタの送迎を軽く襲撃したら、リハーサルで最後の干渉。
本番直前に、ミライにはアレが渡される手はずになっている。
我らの正体を明かし、ソナタを守りたいならと囁けば、あの子犬は折れるだろう。
そうすればすべて、カタがつく。
子犬は心折れ、真相を知らされた『聖者』も怒りに狂う。
そうなれば『聖者』の財団も失速。名札を張り替えられただけの人形たちが、また生産されてゆくことになるだろう。
Ω制度廃止は女神の名をもって発せられた公約だ、実現はされる。
が、支柱である二人を失ったそれは、すぐに形骸化する。
少しの間辛抱し、元の通りの箱庭が戻ってきたら、そこまでの未達を取り戻せばいい。
生意気な黒猫どもを月萌から放りだすまで、あと二週間。
自然とほころんできた口元に、私はいつものミルクティを運んだ。
短いうえに腹立つターンですが大丈夫です!
夕刻~夜、もう一部分投稿の予定です^^
どうぞ、お楽しみに!




