49-4 もふもふの飛翔~マウントブランシェ野外ステージへ!
まったく、周到に周到を重ねた作戦だった。
ぶっちゃけ、軍師たちのさしがねで網が張られていなかったら。そしてライカや3Sたち、ライムを通じて協力関係にあった人たちの力がなかったら、『サイレントシルバー』の――彼女の主の計略は、成功してしまっていただろう。
カードに仕込まれた盗聴器だけを見つけても、真実にはたどり着けない。
何も知らないアマミヤさんやマシバさんを洗っているうちに『サイレントシルバー』は行方をくらまし、この事件は『月萌立国党』――『赤竜管理派』の自作自演と決めつけられていたことだろう。
覚えのない罪を着せられた彼らとの間には決定的な亀裂が入り、どんな結果となっていたかわからない。
万一彼らが開き直って『ソアー』に関するすべての公表を決めてしまえば、一番痛手を負うのはほかでもないおれたちなのだ。
しかし『緑の大地』党を糾弾するのも、今は難しい。
『スキルに頼らず、合法に集められた証拠』といえば、ライカが録画してくれた、袋小路での動画ぐらい。
この程度ではトカゲのしっぽ切りを見せられるだけだ――すなわち『サイレントシルバー』とそのあるじ役をスケープゴートにされて、幕引き。
そしてまた、同じことが繰り返されるのだ。
『盗聴器についてはカードから外した後、しばらくテキトーにそれっぽい音声を流した後で、事故を装って始末するしかない。
こういうことはまたあるとは思うけど、ある程度は仕方のないことだね。
事態をマシにする方法はないでもないけど……ききたい?』
液晶画面の向こう側、ミソラ先生はいたずらっぽく笑った。
その翌日。昼前におれたちは、その街を後にした。
レモンさん・『ソアー』組は思うところがあったのだろう。転移などで帰る予定を変更し、おれとイツカ、ライムと同じ車に乗っている。
『ソアー』の手には、無害化されたメロディーカード。
やってくれたのはタカヤさんだ――『サイレントシルバー』と同じトリックで電子機器の誤作動を装い、電池替えを装って盗聴器を抜き取った。
ふんふんと鼻歌交じりで五分足らず、あっという間の鮮やかなひとしごとだった。
そんな凄腕クラフターは、ゴキゲンに車を飛ばしつつこう言ってきた。
「ちょっくら不謹慎じゃあるけどさ、『本業』の方でも頼ってもらえるのはうれしいわ。
まっ、このクルマもいろいろカスタムしてあるんだけどさ~。
ってなわけでイツカにゃんカナタぴょん、遠慮なく使ってちょーだい!
そこについてるボタンをぽちっと押すと、とってもいいものが出てくるぞー!」
言われてみれば、運転席にほど近い壁際に、これ見よがしにボタンがふたつ。
イツカと二人、ぽちっと押してみて驚いた。
なんと、おれたちのすわっていたあたりがみるみる変形。ひじ掛け付きのリクライニングチェアとなったのだ。
同時に頭上には、天井を割って半透明のキャノピーが下りてきた。
取っ手をつかんでぐっと引き下げれば、そう。
「簡易ログインブース!」
高天原の寮の勉強部屋にあったような、簡易ログインブースが爆誕だ。
シートベルトもしっかりついていて、心強さ満点である。
「もしかしてこれ、おれたちのために……」
「いえ~すっ。まえにここからヴァルハラフィールドでのパーティー行ったとき、カーブで体倒れちゃってたからね~。
べつにひざまくらがうらやましかったっとかそんなわけじゃないんだからねっ!」
最後は冗談めかしていたけれど、おれたちはもう大感激だ。
「すげー!! すっげー!! サンキュータカヤさん!!」
「ありがとうございます! うわー、これなら安心してソナタとミライの合同練習行ってやれます!!」
「うむうむっ!
さあ、これで行くのだ勇者たちよ、姫と王子を守りに!」
「はいっ!」
そんなわけでおれたちはさっそくミッドガルドにイン。
ソナタたちのアトリエ前で『ホシフリ☆ハートシスターズ』の四人、ミライとミズキと合流し、まずはマウントブランシェふもとの街、ムートンに転移。
そこでエアリーさんと合流。もふもふの白竜に変身したエアリーさんに乗せてもらって、一気にひつじ牧場まで飛んだ。
「うわー! たかーい! すっごーい!!」
ソナタたちは大はしゃぎ。あたたかなもふもふからこぼれ落ちんばかりに身を乗り出して、Aランク超の雪山の絶景を楽しんでいる。
やがて見えてくる、緑の草地。ちょこんと鎮座する可愛いひつじ牧場。
その一角には、初めて見る建造物があった。
白を基調とした四角い床。周囲に白の柱は立っているが、屋根は設けられておらず、青天井だ。
「もしかして、あれが?」
「ええ。
今日踊ってもらう、野外ダンスステージ。みんなでがんばって作ったの!
今日はソナタちゃんとミライの貸し切りだからね。好きなだけ踊っていってちょうだい!」
「はい! おせわになります!」
「ありがとうエアリーさん!!」
白竜が上機嫌に声を弾ませる。ソナタとミライがなかよくならんで返事をする。
それを見ているだけでもうなんか、目頭が熱い。
一瞬眼下のステージに、足をもつれさせ転ぶミライの姿が見えた気がしたが、おれたちにはわかっている――そんなものはただの幻だ。
本物のミライはこれからここに降り立って、今日こそ立派に踊りぬくのである。
サブタイは『本のむこうの異世界で、もふもふ白竜にのっちゃう』あの映画の曲をイメージしました(暴露)
※いろいろとうろ覚えです。
次回、ある人物が見たミライ!
どうぞ、お楽しみに!




