Bonus Track_49-2 ライカのウキウキフィッシング!~ライカの場合~
ぶっちゃけた話、このことはもう予測されていた。
『ソアー』を盗聴の対象にしようとするものが出ることは。
だから僕たちはすでに網を張っていた。
『ソアー』に会いに来るもの、彼らがよこすものをひとつひとつ、注意深く観察・検証したのだ。
アタリは最後の最後にやってきた――アマミヤ氏が持ってきたメロディカードに、それは仕込まれていた。
カードそのものへの対処はイツカナにまかせ、僕たちは背後関係の解明に動きだした。
もちろんすぐに氏をとっつかまえたりなんかはしない。さりげなくはりついて、近くのホテルに引き上げる前後の動きを注視した。
彼は奥さんに通話で連絡し、食事をとり入浴。受信機を持っている様子もなく、彼はシロだろうと考えられた。
その一方で、カードの入っていた封筒から販売店を割り出し、現地協力員を急行させた。
すると、その店は臨時休業となっていた。
聞けばかれら一家は『懸賞で当たった旅行に行く』と言っていて留守。
けれど、その店舗兼住宅には、盗聴器が仕掛けられていた。
自分の身の回りを盗聴されている人物が、他人に盗聴器を売る。奇妙な構図だが、考えられないことではない。
ひとつ、本人はまったく何も知らず、ひたすら利用されているだけ。
ふたつ、ある勢力のスパイであるが、潜入先の勢力には気づかれ、泳がされている状態である。
みっつ、ある勢力のスパイとして働きながら、その成果を知らないふりして盗聴させることで、本当に忠誠を誓う別の勢力に情報を流している。
よっつ、ある勢力のスパイであることを敵対勢力にあえて知らせて、嘘の成果を盗聴させることで、かく乱工作を行っている。
もちろんカナぴょんの『超聴覚』からの情報によって、一つ目の線は消える。
となると、二つ目の線も弱くなってくる。電子機器を誤動作させるとか手の込んだ作戦で盗聴器をよこすようなスパイが、自分への盗聴に気づいてないとか、もはやギャグである。
しかし三つ目なのか、四つ目なのか――すなわち実は『緑の大地』のものであるのか、真に『立国党』のものであるのかを判別するにはもっと情報が必要だ。
そんなとき、容疑者が割れた。
イツカナたちと同じフロアに泊まっていた人物が、部屋で独り言ちていたのだ。
『おいおい、父親との感動の再会だろう。もっとそのことを話せってんだ。
ここは言うべきとこだろう。
『カケル』はすべてを捨てちゃったんだ。今更お父さんの元には戻れないよ、って……』
もちろんこれだけでそいつを確保するのは論外だ。僕はカナぴょんの作戦どおり、次の日にそいつを『釣り上げ』た。
『ソアー』のショルダーバッグにカードを入れておいてもらい、そいつの見ている前でそれを置き引きして見せたのだ。
もちろんほかの人を巻き込んでは困るので、オンラインで『虚飾』のチカラを借り、ほかの人には見えぬようにして。
そいつはしっかり反応。すさまじい勢いで僕を追っかけてきた。
メイドアンドロイドにボコられるのはごほうび……ではないので、袋小路に誘い込んだところでまぼろしの僕とチェンジ。ホンモノの僕が録画をしている前で盗聴器の確認をこなしてもらって、容疑を完全なものにしたのであった。
あとは彼女をカナぴょんに『超聴覚』で聴いてもらって情報取得。あとの料理の仕方を決めるだけである。
おれは意気揚々と引き上げる彼女について、ゆうゆうと会場に戻ったのであった。
せつめいってむずかしい。
せつめいにしないのもむずかしい……orz
次回、スパイちゃんの所属が判明!
どうぞ、お楽しみに!




