49-2 お風呂とワンコのひみつ会議!
強磁器→磁気発生機
磁気発生器あたりに一部勘違いがあったので直しました。お恥ずかしい……。
「ちょ、ちょっしいっ! 大きな声出さないでっ! 特にライカ!!」
いまのは『ソアー』は悪くない。
あえて言うならおれが、ライカのフリーダムっぷりを読み誤っていたのが原因だ。
しかし、罪もない新米エクセリオンをびっくり仰天させた神剣野郎は、まっ平らなメイド服の胸をそっくりかえらせてたのしそーに笑った。
『はっはっはー安心めされ~、外向けには不自然にならない程度に水音ノイズ流してるからー。
んでんで、この超絶ハイスペックなぜっせーのびしょーねん神剣であるライカさんになにしてほしいって?』
「とりあえずもとのメダルに戻ってください。」
『ガーン?!』
最初にそんなやり取りはあったが、とりあえず。
浴槽のふちに乗っかるくらいのチョコしばに変身しなおしたライカを加え、おれたち三人はざばざばとお風呂しつつの話し合いを始めたのだった。
『ハナシはきかせてもらったワン。ソアちゃんにおとーさんがメロディつきカードをくれて、けれどそれには超小型盗聴器が仕込まれていて……って。
カナぴょん、おとーさんに悪気がないのはカクテイなのワン?』
ちなみにライカはまたしても、とってつけたようなワンの違和感が半端ない。
「うん。
おれが聴き取ったかぎりだと……
おじさんと商工会議所で知り合って、よく話をするようになった人が。
カケルの話になったとき『行方を知れるなら知りたいですよね』って、世間話を装って言質を取った。
その後、『ソアー』がカケルかもしれない、会いに行ってみる、というときに、何食わぬ顔して盗聴器つきのカードがおじさんの手に渡るようにしたんだ」
「そんな……どうやって……」
『ソアー』は戸惑いを隠せない。
「まずね。
彼の店で、おじさんがカードを選ぶ。
彼は会計の時にカードを開いてメロディーを流してみるんだけれど、手元にしこんだ磁気発生機を瞬間的にオンにすることで磁気スイッチにチャタリングを起こさせて――」
「カナタストップ。俺たちそれわかんない」
と、イツカがスパッとツッコミを入れてきた。あぶないあぶない。
「ごめんごめん。
えっとねつまり、トリックを使って誤動作を起こさせて、カードの電池がヘタってるかのように装ったんだ。
そうして『盗聴器を仕込んだ、同じデザインのカード』とすり替えたんだよ」
「何の……なんのために……?!」
『ソアー』は疑う様子もない。頭を洗っていた手はすっかり止まってしまっている。
みかねたイツカが立ち上がり、代わりにわしわしと洗い始めた。
「ふぇ? イ、イツカ??」
「いーからいーから。あんまそのまんまだと冷えちまうしさ」
「ど……どうも……」
とまどい半分、はずかしさ半分といった『ソアー』だったが、やはり気持ちがいいのだろう、ちょっとずつ表情がほどけていく。
イツカは頭を洗ってやるのがうまい。星降園で毎日ちびっこたちを洗ってやっていた経験は伊達ではないのだ。
微笑ましく思いながら、おれは続きを切り出した。
「ええっと、『ソアー』。つづきいいかな?」
「あ、あっはい! えっとえっと、店のおじさんがお父さんにあのカードをよこした目的だよね?!」
「はい、オッケーです。
そう、雑貨屋のおじさん――もしくはおじさんに指示を出した人の目的は、『ソアー』の身辺を探ること。
ただ、わからないのが、彼は月萌立国党とつながってるんだ」
「立国党って、ぶっちゃけ赤竜管理派だよね。俺を『作った』……
わざわざ俺のことなんか探らせる意味、ないはず……」
「申し訳ないけど、いまのおれのチカラではそれ以上わからなかった。
もしかしてただの善意かもしれないし、そこからはその人に接触してみないと」
「え、でも、あしたはコンサートで森作るし、レモンさんといっしょに歌うかもだし……明日はもう帰るんだよな? どうやって……」
「そのあたりは、レモンさんに相談してみよう。
これだけだと、警察が動くような段階じゃないし、だれか頼れる探偵さんにそのあたり洗ってもらう方が現実的だと思う」
ぶっちゃけ『超聴覚』だけでは、証拠として弱いのもある。
スキルに頼らない立証ができなきゃ、ほかの人たちが納得しない。のちに禍根を残すことになってしまうのだ。
「でも、おれたちでできることもある。
そこで、ライカなんだよ」
『……ワン?』
掌に乗るほどの大きさの、すみれ色の目をしたチョコしばは、とってつけたような一声とあざといほどに可愛い仕草でおれを見上げた。
次回、レモンさんの森コン……は、だいぶさらっとになる予感! もしかしたら犯人視点かも?
どうぞ、お楽しみに!




