表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_48 踏み出された、一歩

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

519/1358

Bonus Track_48-6 『スケさん』のおぼえがき・草稿~『スケさん』の場合~

 あの頃の僕は、人生を、世の中をナメていたといっていい。

 お金が無くなれば、『ティアブラ』テスターに応募すれば当面は食える。

 それに飽きたら、別のバイトを探して。

 そこをクビになったらまた、とフラフラしていた。

 親が金を出してくれた大学にもほとんど行かず、同じ安アパートの仲間と毎晩酒盛りをして、ダラダラと昼過ぎまで寝て、ファミレスに繰り出してティアブラ。そんな日々を繰り返していた。

 さらによくなかったのは、軽い気持ちで買った宝くじが当選してしまったこと。

 分不相応な贅沢を知ってしまった僕は、借金をして、夜逃げをして、気がつけばここにいた。


 主に剣士としてプレーしていた僕に割り当てられたのは、やはりハンター系の魔物の操作だった。

 いろいろな魔物アバターを操作するなかで、いちばんしっくりきたのがスケルトンフェンサーだった。

 いっそ、生まれる前はこいつだったんじゃないかと思うほどに。


 そんなある日、僕は運命の出会いをした。

 キラキラした目で本当に楽しそうに戦う、黒猫装備の少年。

『イツにゃん』こと、『空跳ぶ黒猫』イツカだった。

 一瞬、まっすぐ目が合った――そう感じたときに、僕はさっくり倒されていた。


『イツにゃん』はAランクプレイヤー。『僕』はCランクのスケルトンフェンサーだったから、それは至極当然の帰結。

 けれど、それが僕に火をつけた。

 戦って戦って、エクストラの業務にも率先して参加して力を磨いた。

 学園闘技場のモンスターとして出場できるよう、施設長にも何度も頭を下げた。

 全国中継される試合に出せる人間だとわかってもらえるために、身の回りもきちんとした。

 面倒だとしか思っていなかった当番もしっかりやった。

 生まれて初めて、本気で全力で頑張った。


 やがて僕の努力は認められ、『イツにゃん』アイドルバトラーデビュー戦の対戦相手として抜擢された。

 そうしてやってきた、憧れの人との夢のような時間は、最高の贈り物でシメられた。


『またやろうな、スケさん!』


『イツにゃん』は『僕』に名前をくれたのだ!

 試合を見ていた仲間たちは大歓声。僕は声をあげて泣いた。



 その日から、僕は『スケさん』になった。

 名前持ち《ネームド》となった『僕』は、ティアブラ公式サイトに掲載された。

 闘技場に出たり、ミッドガルドでもイベントボスを任せてもらえるようになり。

 ほどなく二次創作がネット上に現れ始めた。

 最初はイラストやオリジナル小説、ついで粘土細工やフェルトアートなどの立体物。


 そうして公式グッズの発売が決定したとき、僕は市民権を与えられることになった。

 すなわち、Ωからβへの復帰だ。

 大切なものができた僕は、もうフラフラと無責任に逃げたりはしない、と認められての措置だ。


 身分は『もとフリーター、いま『ティアブラ』開発本部特別協力員』ということになった。

 債務は『ティアブラ』開発本部が肩代わりしてくれたので、それを今後給料などから返していく形となる。

 そのため当分は施設暮らしだが、部屋は個室だし、届け出をすれば外出もできる。


『イツにゃん』『カナぴょん』と会えることになったのは、新しい部屋への引っ越しが済んだ直後のことだった。

 応接室のドアから漏れるのは何とも言えない空気だったけれど、『イツにゃん』は僕を見るなり言ってくれた。


「え……あれっ?! もしかしてスケさん?!」

「え、わかるんですか?!」

「そりゃそーだろ! うわあマジかよ、生スケさんー!!」


 僕の心のアイドルに、まるでアイドルを見るような目で握手をせがまれる。

 こんな幸せがあってもいいものだろうか。

 おずおず握った手は暖かくて、ルビーの瞳はまぶしくて、まるで身の内におひさまを宿しているかのようだった。


結局フワフワな世界へすぐ帰ってきます。

次回、視察の帰り道。イツカとカナタの結論は。

どうぞ、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ