Bonus Track_48-3 波立つ想い~『ユウミ』の場合~
「一つ、是非にお願いがあるんです。
皆さんとお会いするのは、ひとりずつ。このカフェテリアで、ということにしていただけませんか」
ハジメさんは、メイリンたちを前にこう切り出した。
「皆さんは記念パーティーまでの間に僕と顔合わせをしなければならない。そのことは理解しています。
けれど、もしも皆さん全員を連れ歩くようなことになると、国会にいらしているほかの方々を戸惑わせてしまうことになると思うんです。
なによりパーティーまでの間、皆さんの生活を著しく縛ってしまうことにもなる。
皆さんがもしそれでいいとおっしゃってくれても、それは僕がつらいです。
ですのでどうか。お願いします」
誠実にそう語ると、真摯に頭を下げた。
……断れるわけがない。
『ユウミ』は優しい女だから。
愛するハジメさんに対しては、誰より優しくなってしまうから。
もちろん、そんな打算計算なんかこれっぽっちもないことは、ここから見ていたってわかる。
おかげでほら、みんながほほを染める。
あそこにいる三人だけじゃない。隠れてみている『わたし』たちも。直接の関係のないギャラリーたちでさえ何人も。
いますぐ駆けだしていって言いたい。
ハジメさんはわたしのだって。だから、好きになっちゃダメだって。
――可愛い可愛いメイリンにも、このひとだけはあげられないって。
でも、わたしはまだ、それをできない。
だってわたしにはまだ、しなくちゃならないことがある。
それがたとえハジメさんの政治生命を絶つことになったとしても。
わたしは今はまだ、あのひとのためにすべてを捨てることはできない。
ひと夏の幻として消えるはずだったわたしを、今なお生かしてくれている、ィユハンのためにも。
板ばさみの切ない思いのモノローグです。
短いっ!
次回はカナタ視点の予定でございます。
毎日動画とるってマジ大変そうです。
そんな感じの苦労を描く予定です。
どうぞ、お楽しみに!




