Bonus Track_47-2 だって、わたしは幻想だから~『ユウミ』の場合~
『残念ですが、私が……
いえ、ほかの誰もがハジメさんに力を貸して差し上げることは、許されていないのです。
ただ、ひとつだけ申し上げられるとすれば。
目に見えるもの、聞こえるものを信じるな、と。
つねに、愚直なるもののみが真実を有するのです。
……そろそろお送りいたしましょう。大切なハレの日を前に、お風邪などどうぞ召されませぬように』
ファン ィユハンはそう告げて、友を送り出した。
彼は怒りもせずに、ありがとうと笑った。
彼は――あのひとは。
勝負を受けてしまった。
勝ちの目など万に一つもないそれを。
これから、『わたし』と同じ顔、同じ姿、同じ声の乙女たちが、あのひとのそばにあらわれる。
ひとり、ふたりと、日毎に人数を増やし、あのひとが答えを発するべきその日には、21人がそろって答えを待つことになる。
けれど、それこそが罠。
なぜって、わたしは――
真に存在してはいない者。
ただの、幻想に過ぎないものなのだから。
あのひとはわたしたちの設けた隘路に踏み込んでしまった。
もう、もう、戻れない。
手を振ることさえ許されぬまま、わたしは愛しい背中を見送った。
ハジメさん。
信じています。
たとえば陥穽に墜ちたとしても、せめてあなたが、あなたのままで居続けてくださることを。
たとえばわたしに、愛想をつかしてしまわれるとしても。
このこころだけはつねに、あなたのもとに。
この手に誰を迎えることになったとしても。
あわあわあわ。なんとブックマークいただきました! ありがとうございます!
今回もめっちゃ短かった……モノローグ回の宿命か。
次回、新章突入。
あるいは昇格、あるいはリニューアルおひろめ。
あるいはコンサートに、あるいは合同練習に。
それぞれの週末に向けてがんばる子供たち。
どうぞ、お楽しみに!




