47-6 『ソアー』とのさんぽと思わぬツーショット!
「ほんとにいいの、二人とも。
……すっごい忙しいんだろ?」
『ソアー』は申し訳なさそうに言うけれど、申し訳ないことなんか一つもない。
「いーっていーって。
俺たちもちょっと歩いて気分転換したかったし。な、カナタ!」
「うん。
……それが友達のリハビリにつながるなら、来ない理由はないよ」
おれたちがそう伝えれば、彼はありがとうと笑ってくれた。
けれどすぐ、その顔は驚きに染まるのだ……
突如、思ってもみなかった光景を目の当たりにしてしまったことで。
* * * * *
せっかく来てくれた友人だ。おれたちは玄関まで迎えに行ったのだが、『中でお茶でも』との誘いは口にする前に引っ込めた。
仮の名を『ソアー』という彼は、明らかに居心地が悪そうだったのだ。
彼とイザヤとユウは、『割のいいバイト』に引っ掛けられて放校になったのち、ある人物に身柄を買い取られ、その屋敷で働かされていた。
半ば自我を奪われていたので記憶もおぼろだというが、それでも潜在意識では状況をとらえていたのだろう。大きな邸宅を見ると明らかに顔が曇る。
レモンさんの弟子ポジとなったことで、彼女が暮らす別宅に部屋をもらってはという話もあったのだが、それが理由で今は、研究所の寮に入居している。
そんな彼をここにお使いによこすのは、少々酷なことのようにも思われたが……
『友であるおれたちがいる場所である、と知ることで、大きな家への嫌悪感を薄めていってほしい』という気遣いであると聞けば、怒る気にはなれない。
ともあれ、せっかく来てくれたのに、すげなく帰す形になるのは忍びない。
おれたちは、『ソアー』が大丈夫な限りで一緒に歩いて、送っていくことにしたのだった。
もちろん『限界になったら手持ちの護符を使って帰っていいことになっている』と知ったうえでのことである。
「そういえば『ソアー』さ。名前決まったの?」
「それがちょっともめててさ。
ミツルとしては、元の名前を名乗らせてやりたいって気持ちが強いみたいなんだけど……そういうわけにもいかないじゃん。
『カケル』は戦死しちゃったんだ。MIAという形ではあるけれど。
月萌杯突破記念パーティーに、両親も来る予定らしいけど……俺はふたりには会えない。
一周忌ももう終わったころだ。もう、戻ることはできないんだ」
「そっか……」
「いいんだ。おれにはミツルやみんながいる。イザヤとユウとも、仲直りできたし。
前を向いて、歩いていくよ。それが、………………
ちょっ隠れろ!!」
いきなり『ソアー』が、おれたちを横丁に引っ張り込んだ。
「えっなに? なに??」
「しいっ! ……邪魔しちゃ悪いだろ」
そうして指さす先を歩いていくのは、緊張した様子のハジメさんと、つややかな黒髪をなびかせ歩く、どこか見覚えのある若い女性だった。
……どうみてもデートである。
声を上げかけてしいいっ! と言われた。
みればおれたちのうしろにもまた、見覚えある四人。
ハンチングを目深にかぶったりサングラスをかけたりして変装した、『ちいさな芽吹き党』の四人だった。
ラブコメの黄金パターン、尾行イベントです!
次回、さらに追う一同! 謎の女性の正体は?!
どうかお楽しみに♪




