47-4 まちがいだらけの『縮地』トレーニング!
それからおれたちはあわただしく動いた。
まずはログアウト。ログインブースに駆けつけた。
ブース内のニノとイズミは、いい笑顔を見せていたけれど、自力で立ちあがることができなかった。
そのため、ノゾミ先生とトウヤさんがそれぞれ抱えて『縮地』を使用。医務室へと運んで行った。
心配なのは山々だったが、ダンスレッスンをさぼるわけにはいかない。
おれとイツカは後ろ髪を引かれつつも、体育館へ走る。
雑念を振り払い、踊ること小一時間。
授業終了後、ミライたちといっしょにうさねこ掲示板をのぞいてみれば、二人とも無事復活、午後二コマめの授業には出席するそうだ。
お見舞いコメントを連名で書きこんだら、ミライはミズキとプリースト実習へ。おれとイツカは、ソレイユ邸への移動の時間を使い、車内でレモンさんたちとオンライン打ち合わせを行った。
内容は、週末の『あそべる森のコンサート』。特段の変更点はなく、終了後はおれたちも、移動の車内からのログインとはなるが、ミライとソナタの合同レッスンに参加できる見通しである。
だがそのときにレモンさんから、こんなことを言われた。
『そういえば疑問だったんだけど、二人は『縮地』覚えてないの?
イツカは『0-G』やれるんだし、いけるんじゃない?』
とうのイツカはうーんと首をかしげる。
「うーん……多分なんだけど、なんか……なんかが違う気がするんだよなー。
でもせっかくだし、後で練習してみる!」
『りょかーい。じゃこのあとちょっと見たげるね♪』
液晶画面越し、バーイと手を振って通話は切れた。
バックミラー越し、ライムが優しく笑うのが見えた。
「ふふっ。おふたりともすっかり仲良くなってくれて、まるできょうだいみたい。
わたくしも、弟ができたような気持ちになってしまいますわ」
「え、マジ? 俺レモンちゃんとライムちゃんの弟っ? いいの?」
「ええ、もちろん。
わたくし、子供のころからずーっと、小さなかわいい弟が欲しかったのですわ。
だから星降町に赴任してイツカさんやカナタさん、ミライさんたちと仲良くなれたときにはうれしくて♪」
「そっかー! だからカナタとも仲良くなったんだな♪」
「まあっ」
『にししー』といい笑顔での冷やかしが飛んできた。まったく油断できない猫野郎だ。
空間の乏しい車内なので、とりあえずうさみみパンチを飛ばしてつっこんでおく。
やつはねこねこしく驚く。面白かったのでくすぐり倒してやることにした。
「にゃふっ?! このスペースでできんのかよそれっ!」
「ふふふ、イツカ? おれが何年うさぎ装備やってると思ってるの? そりゃー!」
「にゃはははは! ギブギブ、くすぐったい!! くすぐったいから!!
ぜろじー!! ……ってあれっ発動しねえ?! ぜろじー! ぜろじいいい!!」
こいつはどうやら、まだ気づいていないようだ。
『0-G』の本質は、おれに危機が迫ったときに、それを回避することだ。
つまり、おれから逃げるためには使えないのである。
……であるからして、『0-G』が使えるからといって、『縮地』もできる、とは言いづらい。
だが逆に言えば、『0-G』の発動条件からおれを外すことができれば、イツカは自在に時空を渡ることが可能になる。
だからそう、これはイツカのトレーニングなのである。けっしてけっして、イツカをいじって遊んでいるわけではない。
「さーがんばれイツカー♪ これも『縮地』の練習だよー♪」
「なんかがちがう! 絶対違うってあははははははー!!」
結果。イツカはソレイユ邸到着までに『縮地』をマスターできず。
続きはレモンさんと顔を合わせてから、となったのだが……
「おかえりふたりともー。さーやるよー!」
車止めで待ち構えていたレモンさんは、とってもいい笑顔で両手をわきわきさせていた。
「…………にげろおおお!!」
顔をみあわせたおれたちは、とりあえずレモンさんのいない方のドアから、全速力で逃げ出したのであった。
こんなんで『縮地』おぼえられたらなあ(遠い目)
次回、いろんな人に『縮地』マスター方法を聞いてみるのまき。
しょーもなくなる予感しかしません! お楽しみに!!




