47-2 天然ピンクなうさぎとランチ!
今日のダンスは午後一コマめ。
そのため早めに学園に、学食に入ったおれたちだったが、そこで変なものを見た。
「骨がいる……」
そう、サンドブルの骨メットをかぶり、スラリとした身体に黒いチュニックをまとった男が一人、やけにいい姿勢で和定食を食べているのだ。
周囲も遠巻きにして近寄らない、その異様な風体の男にイツカはサラッと声をかけた。
「あれ、トウ――」
その瞬間、おれの視界が切り替わった。
隣にはイツカもいる。というか、イツカはがっちり頭を掴まれてもがもが。
「ちょ、トウヤさんっ!
いきなりなに……」
おれが止めにはいると、彼は心底驚いた様子で言った。
「なぜ俺だとわかった?!」
とりあえず、めちゃくちゃ目立つ骨メットはインベントリにしまい、伊達眼鏡にハンチングというおとなしい仮装にチェンジしたトウヤさんは、おれたちをつれてもとの席へと転移。
冷めかけた和定食を前にして、しょぼくれたようすで頭を下げてきた。
「いや……済まなかった。
アスカにきいたら、全く俺であるようには見えないということだから……てっきり目立たないものだとばかり思っていた。
まったく、誰も教えてくれないのだからな。薄情なものだ」
「アスカにきいちゃだめですよそういうの……」
おれたちはというと、『口止め料だ』といわれてとってきたパスタとハンバーグ定食を口に運んでいる。
ちなみにこの学食は卒業生も無料だ。和む。
「っていうかさ、動画見てわからなかったのかよ? 観客席で超目立ってるの」
「いや、まったく」
イツカの質問に、トウヤさんはふりふりとかぶりをふる。
なんだろうこの人。最強剣士のくせにめっちゃ可愛い。
口の中に物が入った状態でしゃべらないとか、焼き魚をほぐす手付きが見事だとか、背筋も常にきちんと伸びているとか、数々のイケメンポイントがすべて吹っ飛ぶ天然ぶりだ。
と思っていたら、イツカがサラッとやらかした。
いつもの明るい笑顔でのたまわる。
「まあさ、そういうトコが可愛いからじゃね?
ほら、可愛いものってずっと見てたくなっちまうしさ!」
「……………………。」
お吸い物を吹き出しかけてなんとかこらえ、ことんとお椀をおいてトウヤさんはひとこと。
「お前と話すときは飲み物を口にしないとたったいま決めた。」
「へ?」
そのほっぺたはちょっぴり赤い。おれはきょとんとしている主人公野郎にため息とともに解説してやる。
「イツカ。いまおまえさりげにトウヤさん口説いてたからね。完全無自覚みたいだから言っとくけど。」
「へっ???」
イツカはますますキョトン。
おれは不安にかられた。もしこいつに女子との付き合い方を教えたら、大変なタラシ野郎を生み出してしまうのではなかろうか。
いや、こいつがモテようがどーしようがおれは構わないのだ。けれどそうなると、セレネさんやルナが気の毒だ。
マルキアは……うん、ほぼ完全に面白半分だろうから対象外だけど。
そこんとこはユーさんに、よくよくお願いしておかねばなるまい。
「アカネ以外にそういうことを言われたのは初めてだ。
まったく、お前は面白い経験ばかりさせてくれるな。『0ーG+』といい、今の発言といい」
「そっか? トウヤだってバトってると楽しいぜ?」
笑いあうトウヤさんとイツカ。いや、それ同列に並べちゃうんですねふたりとも。おれにはついていけそうにない世界だ。
「えーとところで、今日はトウヤさんはどうしてここに?」
とりあえず話を変えることにした。するとトウヤさん、すっとホワイトの携帯用端末を取り出した。
「先程アスカからこんなものが送られてきてな」
画面のなかで再生されるのは、あのスタイリッシュうさぎPV。
「……挑戦だと思ったので闘りにきた」
「そんなかんたんに召喚されちゃうんですかトウヤさんっ?!」
「軍と警察で教鞭をとる以上、最新の戦技には常にいち早く触れないといけないからな。」
イチゴ色の瞳がキラリ。白いうさ耳がかすかにわさわさ。クールにキリッとして言ってるけれど、見るものが見ればワクワクしてるのがバレバレだ。
「一部で彼は俺に最も近いと言われていたし、個人的に気にはなっていた。
だがここまでいきなり化けられたなら会わないわけには行くまい。ことによってはこれを可能にした男ごとすぐにも」
「いたいけな未成年を拉致ろうと白昼堂々のたまいやがってるいけないうさぎ野郎はここか?」
すると後ろからにこやかあな声が聞こえてきた。
振り返るとそこには、アスカとハヤト、イズミとニノを連れたノゾミ先生が、ニッコニコして立っていた。
シリアスのはずなのに天然な方には萌えます(`・ω・´)
次回、授業開始までの突発ハイスピードバトル!
どうぞ、おたのしみに!




