46-6 もう、我慢できなくて
用事ありまくりで遅れました……!
誤字等見つけ次第直します!
「カナタ……俺もう、もう限界……
頼む、一回! 一回でいいから!
今日は俺のブラッシングなしでいいから!
だから、お願いっ……!!」
ぺたんと猫耳を折ったイツカは、涙目でおれに懇願する。
いつか、この日が来るんじゃないかと思っていた。
いや、むしろ遅いくらいだ。ここまでよく、頑張ってくれたものだと思う。
わかっていたこと。無理のないことだ。
おれはイツカを優しく撫でて、ひとつしっかりうなずいた。
「いいよ、イツカ。
ブラッシングは、あしたしようね。
今日は久しぶりに、思いっきりやろう!」
そう、おれにも、異存はない。
だって、おれもそろそろ、限界だった。
ぱああっと嬉しそうな顔になるイツカをうながし、おれは歩き出した……
『ゼロブラ館(仮)』ラボの隅っこで待つ、ログインブースに向けて。
* * * * *
ダンスレッスンと、パーティー式次第まわりに目鼻がついてきたところで、いれかわりに追加となったものがあった。
ずばり、お作法のレッスンだ。
実はこれは、遅くとも四ツ星で受講すべき必修科目であり、今やってるのはあくまで復習の域を出ないものではあったけど……
控えめに言って、おれたちはすでに多忙な身の上。あらたなレッスン時間を捻出することはできない相談だ。
となると、どうなるか。
ソレイユ邸での食事は、軒並みテーブルマナーのテストと復習となってしまうのである。
『できない』わけじゃない。もしもそうなら、おれたちはここにいない。
けれど、それは『楽々とできる』というわけでもけっしてない。
いまや家族同然の人たちに、優しく分かりやすく、教えてもらえるのだとしても……
食事が終わるとやはり、肩が凝っているのを感じた。
そうして、イツカは爆発。
おれもありがたく、それにのっかったのだった。
とはいえ、いまのおれとイツカでは、間合いでほぼ勝負が決ってしまう。
どうしようかと話していると、アスカからの音声通話が。
『へいほーい♪ そこのモフモフちゃんたち、おにーさんたちと楽しいことしなーい? なんちって☆彡』
「神かっ!!!」
まさしく神がかったタイミングに、おれたちはふたりともぶっ飛んだ。
* * * * *
そんなわけでおれたちは、『白兎銀狼』――アスカとハヤトとのオンラインバトルに興じることになったのだった。
試合の形式は2on2。
ただし今回は気晴らし目的なので、あえて相方を交換してみた。
つまり、イツカの後ろにはアスカが。おれの前にはハヤトがいるというわけだ。
「いやー、きみたち相手だとおれも好きにやれて助けるよー。というわけでー」
「ちょっと待てええええ!!!」
しょっぱなやつが繰り出したのはそう、テラフレアボム。
さすがに『比翼』ではなかったが、すでに幾度ものバージョンアップを重ねたそれは、下手なフィールドだったらまるごとぶっとぶレベルの代物だ。
「しょーがないなあ、はい321」
「『スベテヲ食ラウ』うっっ!!」
「ぜろじいいいい!!」
ハヤトは全吸収の覚醒技を発動。
おれはハヤトに駆け寄ってその庇護下に。ついでにおれたち両方に超強化のポーションを使っておく。
いっぽうイツカは必死の『0-G』発動で難を逃れ……
「……あれっ?」
そのときなぜか、おれの視界が切り替わった。と思ったら、おれの目の前にはイツカの背中。
イツカ越しに見えるところによると、ここはフィールドのはじっこ。どうやら爆発のあとらしく、その辺いたるところがぶすぶすとくすぶり、その真ん中あたりに『全テヲ食ライ全テヲ守ル』を発動して輝くハヤトと、『完全爆破防御』の錬成陣で身を守ったアスカが立っている。
「………… ん?」
ハヤトも何かがおかしいのに気づいたようだ。ぽかんとして、後ろを振り返る。もちろんおれはいない。
あらためて首を戻しても、イツカもいない。
そのイツカもあれれっという調子で自分の後ろを振り返り、おれがいるのをみてぽかん。
もちろんおれもぽかんである。つまり……
アスカがこっちをむいてあははーと笑う。
「もーイツにゃーん。きょーのカナぴょんは敵でしょー?
まったく、お安くないなー」
そう、イツカのやつはいつものくせで、敵チームにいるおれを守ってしまったのだ。
イツカはアスカにむけてパンっと手を合わせる。おれもその背を押した。
「うあーやっちまった! わりっ!」
「はいはい、はやく戻ってあげる! 次にやったらゼロ距離射撃で沈めるよ?」
「ええええ!!」
おれたすけたのにー、という顔でおれを見るイツカ。
不覚にもちょっとぐらっときてしまった。くそう、なんだこの破壊力は。ねこみみか、ねこみみのせいなのか。
いけないいけない、とりあえず魔擲弾銃を抜いてかるくパンパン撃っておく。
「にゃあああー?!」
「おーよしよしよしかわいそうにねー。いいこいいこ。もふいこもふいこ」
「みゅー……」
もちろんやつはスタタタターっとアスカのもとへ逃走したのだが、すかさずアスカが懐柔をはじめ、イツカも気持ちよさそうに目を細める。
毎度のことだが、胸のお餅がぷくーっと焼ける。
それはハヤトも同様のようで。
「カナタ。全力でかっ飛ばすぞ」
「よしきたっ!」
ボソッと宣言するのにおれものっかり、その背中にミックスポーション弾を景気よく撃ち込んだ。




