46-5 ソアーの災難、ミツルのなぞ
「えっと……レモンさんと『ソアー』に、ミツルとアオバがいるってことは?」
ノゾミ先生がそれでも、ミツルのそれも校則違反だからやらないように、ということをちゃんと言い置いて立ち去る。
ミツルは素直に「はい。」と返事して、その一件はお開きに。おれたちはそれぞれの行きさきにむけて解散した。
と、言いたいところだが、『ソアー』はおれたちについてくる。
「あれっ、どうしたの『ソアー』? これから三人でレッスンてわけじゃ……」
『ソアー』とアオバは、ミツルと三重唱できるようにレモンさんが歌を教えることになっている。
あの場でそのメンツがそろっていたということは、そうなのじゃないかと思っていたのだけれど。
『ソアー』はふるふると首を振る。
「ううん、レモンさんは俺を送ってくれただけ。
……俺これからソシアルダンス……」
やけに悲壮感のある顔で。
「え、なんで?」
「エクセリオンになるんならダンスもできなきゃなんだって!
聞いてないよー! 俺フォークダンスもへたくそなのに~……」
なんと。天使のようなイケメンは、しょぼーんとうつむいた。
そう言われてみれば、『ソアー』はおれたち同様、肩にスポーツバッグをかけてスーツ姿だ。
ということは……
「え゛。
ま、まさかお前もこれから突破記念パーティーにっ……?!」
イツカがなんと気の毒なという顔をする。
そうだとしたら、おれたち以上の突貫スケジュールとなる。
『ソアー』は泣きそうに目を潤ませた。
「さすがにそれはないっぽいけど、次のなんか式典までにはできればって……」
「なんだ、だったらだいじょぶじゃね?
おまえ、足技すげーもん。むしろワルツのステップのほうがいけるかも」
「そ、そうかな?」
けれど、イツカがニカッと笑って背中をたたいてやると、ちょっと笑顔になる。
おれもとっときの提案をしてみる。
「うん、きっと。
そうだ、シルヴァン先生に一度リードして踊ってもらいなよ。
きっと、なんとなくのかんじがつかめるから」
「そっか。そうだね。
ありがとう、二人とも!」
『ソアー』は明るくニッコリ笑った。
その笑顔、ハッキリ言って、可愛い。
元の顔がいいのでなおのこと、破壊力がすごいのだ。
これなら、ミツルが惚れこんじゃうのもうなずける。
しかし、そうなると疑問が残る。
イツカも同じだったようで、とりあえず質問。
「あれ? 歌のレッスンじゃないってーと、ミツルは何しに来てたんだ?」
「えーと……わかんない……
たまにああやって俺がこまってると、なんかミツルがきて助けてくれて……」
おれは思わずあたりを見回した。
さすがにいないか。うんうん、いくらなんだってそれはない。
ほっとしながら『ソアー』の言葉の続きを聞いた。
「俺、ミツルに世話になりっぱなしなんだよね。ここ戻ってきてから特に。
ていうかミツル、なんか強くなった気がする。
実力もそうだけど、人間的に」
「それはいえてる」
おれたちはそろってうなずいた。
「最初に会ったときミツル、アオバの後ろに隠れてたもんな!」
「えっマジに?
俺んときはドアのかげだった……」
「マジ?!」
「でもいちごサンドあげたら笑ってくれて!」
「おれたちのときもそうだったよ!」
「はじめていちごサンド分けてくれた時はうれしかったなー」
「わかるー!」
そんなふうにわいわいしながらおれたちは、更衣室へと向かうのだった。
ぶ、ブックマークが……きょうもふえてるですって……?!
はわわわわわわ。なにがおきた!
ともあれ、ありがとうございます!
次回は新たな『謎の誰か』と『誰か』の会話の予定です。
どうぞ、お楽しみに!




