46-4 つよさっていろいろだ。
そうだ。ライムにもさきの電子チラシを渡しておこう。
無害なものであることは、在学中にアスカが入れてくれた特製のスキャンソフトが確認済みだ。
一通り話し終わると、学園についていた。ちょうどいいので今渡してしまおう。
「ライム、ファンさんからチラシもらったんだ。ももまんおいしかったし、ライムにもご紹介するね」
「ありがとうございます、いただきますわ。……あら?」
近距離通信をキャッチし、携帯用端末の画面を見たライムは、何かに気づいたようだ。
「まあ、ユーさんの個人用アドレスをいただきましたのね、カナタさん」
「え?」
「ほら、わたくしのチラシと、カナタさんのチラシ。一番下の部分をよくごらんになって?」
「あっ」
たしかに違っている。
一代目コピーと、それ以降の内容をたがえるしくみは、そんなに珍しいものじゃない。けれど、なかなか凝った方法で連絡先をくれるものである。
だが、ライムがさらっとそれを看破したということは?
「わたくしたちもこうして連絡先をいただきましたのよ。
そういうことでしたら、お話が早いですわ。
わたくしがご紹介しようとしていた『女性とのスマートなお付き合いの仕方を教えてくださる方』。それはユーさんのことですの。
あの方は姉の大ファンでいらっしゃるけれど、妹のわたくしが一緒にいても不快のないよう、さりげなく気を使ってくださいますの。
大人のお付き合いの仕方ができる、素敵な紳士ですわ。
そうですわね、男性同士、男性とのお付き合いのしかたも教えていただくといいですわ」
運転手さんが前を向いたまま、ぶっと小さく吹いたのがおれのうさ耳に聴こえた。
うん、ライムには他意はない。他意はないんだ。
これはあくまで、友人や仕事相手として。そう、『よい仲』としてのお付き合いの仕方では絶対絶対ないのだ。
「わかった! ありがとライムちゃん!」
イツカのやつは無邪気にお礼を言っている。こいつくらいピュアだと逆に心配になる。こいつはもしかしたら、そんな事は気にしないだけかもしれない気がしてきた。いや、別にいいんだけど。
「ええっと、ありがとうライム。それじゃ今度ご紹介、お願いします……」
「かしこまりましたわ♪」
ライムはとっても上機嫌でおれたちを送り出してくれた。
……いや、細かいことを気にするのはやめよう。いまはダンスレッスンだ。
わざわざほかの人たちに時間を合わせてもらって通っているのだから、ちゃんと集中して身に付けなければ。
おれたちは体育着を入れたスポーツバッグを肩に、急ぎ足で体育館へ向かった。
「そーだ、『0-G』使えば体育館まで瞬間移動できねーかな?」
「それ校則違反だからねイツカ?」
そう、そうしたらきっとすぐにノゾミ先生がすっ飛んできてこめかみグリグリやられるのだ。こないだのレモンさんのように。
レモンさんはしょっちゅう校内で『縮地』つかっては、ノゾミ先生にばれてお仕置きされている。レモンさんがアイドル育成顧問に就任してから、週に一度はそんな光景を見るようになったせいで、すっかりここの名物だ。
体育館に足を踏み入れると、やっぱいた。
レモンさんとノゾミ先生が前方でぎゃーぎゃーやっていて、となりで『ソアー』がおろおろしている。
「よー『ソアー』、また会ったな!」
「イツカあー! それにカナタも!
この二人なんとかしてっ!! 俺には止められない!!」
『ソアー』はうわーんと助けを求めてくる。天使のような繊細な美貌も、いまはすっかりトホホ顔。
なんだか可愛くてよしよしと頭を撫でてしまうと、後ろから視線を感じた。ミツルだ。はわわといった顔のアオバをひきつれてむうっとしている。
「ありがとカナタ。」
どうやらおれは邪心なしと認められたらしい。ミツルは短くお礼を言ってくると『ソアー』を回収。目の前で騒いでいる顧問と教師にむけ、情け容赦なくおしおきの神聖魔法を詠唱し始める。
「サイレントケー」
「ちょちょちょちょっとまてミツル!!」
「わあああ!! みつるんストップ!!
なかなおりした!! なかなおりしたからっ!! ねっ?!」
「……うん」
あわてて二人が言い争いをやめると、納得した様子でレモンさんに『ソアー』を返す。
エクセリオン物理最強の女性と、エクセリオンの座を蹴った男と、エクセリオン二人ぶんより強いはずの少年が、たったひとりの二ツ星プリーストに制圧される驚異の光景に、まわりのみんなも驚いている。
なるほど、おれたちが学園を出てすこし。勢力図はすっかり書き換わっていたようだ。
「……ミツルつええ」
「……だね」
おれたちもしばしぼーぜんとするのであった。
ブックマークありがとうございます! 頑張りに沁みますっ……;;
童話祭参加作品も大詰め。どちらも頑張ります!
次回、なぜあの二人がここにいたのかが明らかに。どうぞ、お楽しみに!




