46-1 入門編はスイセンの香りとともに
色々調べたら思ったより時間が……誤字等見つけ次第直します!
広すぎず狭すぎない、六角形の木造ティールーム。そのなかは、大きなガラス扉のみならず、天窓からも明るい空の光が差し込んで、ほどよく明るくあたたかい。
絶好のお茶日和、といえるだろう。
部屋の真ん中に鎮座するのは、深いあめ色の円卓。
それを囲むように、渋めの緑色のクッションを張った一人掛けソファーが四つ。
囲むようにと言っても、ガラス扉を背にした席はない。
つまり、どの席からでもパノラマのように庭園が見られるのだ。
『庶民の身の丈に会ったお茶会』としては、贅沢すぎるほどのセッティングである。
そんななか、ユーさんはまっすぐ左端の席へ。
席のナナメ後ろにある、奥の戸口――黒檀色のパーティションの向こうに少しだけ見える――から一番近い。何かあったら、ホストとして対応するためだろう。
ユーさんの隣の席には、客人の中で一番の年長者であるハジメさんが。
さらに隣に、イツカとおれが着席。
すでに卓上に用意されていたお茶とお菓子をすすめられ、いただきますと口を付けた。
お菓子は一口サイズのももまんじゅう、月餅、ごまだんごの三点盛り。可愛い見た目だが、けっこうおなかにたまるチョイスである。
お茶は金の水色の美しい、甘やかな香りのもの。紅茶とも緑茶とも違う、いままでお目にかかったことがないものだ。
口に含めば、なぜかとろりと溶けるようなのみごこち。鼻から抜けていく香りは、まるでスイセンの花の香りのようだ。
「ユーさん。このお茶は……」
「お目が高い。それは『岩茶』ですよ。
霊峰の岩に根を張り、古来からの山のめぐみを蓄えたお茶です。
『ちょっとめずらしいよさげなウーロン茶』とでも思っていただければ近いかと。
いずれ最高峰を献上することになるはずですが、本日はこちらで入門編を」
と言ってるとなりで、イツカがいただきまーすとお菓子に手を伸ばした。小さくてもボリュームたっぷりのごまだんごだ。
ぱくんと一口でほおばって、ごまの香りを漂わせつつ、幸せな顔をする。
あ、こいつ絶対うめーって叫ぶ! 直感したおれは、すかさずやつをうさみみロールにした。
「ふもっ?!」
「イツカ、まず口の中のものをのみこんでからしゃべってねっ?」
ユーさんはおおらかに笑ってくれる。
「あははは、いいですよ。気楽な集まりじゃないですか。
もう何度も顔を合わせ、遠慮のない口もききあってるんですから。
むしろ甘えているのは我々の方ですよ。
本来ならば我らはあなた方に、臣下の礼を取らねばならないのですからね。
――あなた方が求めるならば、われとわが身のすべてはお二人のもの。
けれどあなた方はそれをお求めにならない。こうして目上として立て、敬ってくれる。ありがたいことですよ」
ハジメさんもまじめな顔でうなずいてこう言ってくれる。
「自分で言うのもなんですけれど、超弱小政党である僕たちのところにまでご挨拶に来てくれて。正直驚きました。
党名も、間違わないでくれたし……それどころかいつも、親しく接してくれて……」
語り進むうちに、ふんわりとほどけていく表情。
やわらかなその顔を見ていると、こちらもつられて笑顔になってしまう。
なるほど、これを見たならだれもがファンになってしまうことだろう。
イツカもユーさんもニコニコ。おれもますます、ハジメさんのことが好きになっていた。
自然にこう問いかけていた。
「ハジメさん。ハジメさんの探している方、見つかりそうですか?」
岩茶飲みたい……むかーし飲んだのが懐かしいです^^
作中で飲まれているものは『武夷正岩茶 老叢水仙』をイメージしてます。バランスの良い正統派の岩茶ということです^^
次回、ハジメさんのオリジンに迫る?
どうぞ、まったりとおつきあいくださいませ!




