45-7 オリエンタルビューティーからのお誘い!
超党派首脳級会議に集まったメンバーは、全員が多忙な身の上だ。
会議が終わると、すぐに解散となる。
秘書の人を連れてさっそうと出ていくタカシロ氏。
やわらかな物腰で一礼し、サツキさんとともに退出していくセイメイさん。
セイメイさんと前後して一声かけていくのがファン氏なのだけれど……
「失礼、これからしばしお時間ありますか、お三方」
「えっ」
今日は違った。
オリエンタルビューティーの呼び名も高い、端正なたたずまいで慇懃に一礼すれば、背中でゆるくひとつにくくった黒髪がさらりとゆれた。
かすかに漂うオリエンタルな香り、チャイナふうのスタンドカラーもしっくりとして、なんともいえないおとなの色香を醸し出す。
ターゲットにされたおれとハジメさん、そしてイツカはぴたっと固まり、彼の言葉に聞きいってしまう。
「今朝がたよき茶葉を入手しましたので、香りの失せぬうちにどなたかと、と。
ああ、ご心配なく。我々庶民の背丈に見合った、ごくごく気楽なお茶会です。
甘いお菓子もありますよ、よろしければ」
「やった、いくいくー!」
そうしてお菓子さながらの甘い言葉をもらうと、イツカはあっさり落ちた。
黒猫しっぽをぴーんと立て、もろ手を挙げてファンさんに寄っていく。
こいつの野性のカンは鋭い。そこは信用していいと思うけど。
「ちょ、イツカ!
……すみませんファンさん。イツカのやつ、いつまでたっても子供で……」
そう、ガキんちょっぷりが半端なすぎて、おれなんかはぶっちゃけはずかしい。
ファン氏は「いいんですよ、じっさい子供なんだから、ね?」とニコニコしながら、緩やかに視線を流してハジメさんを見る。
フリーズのとけたハジメさんはというと、突然のお誘いにあわあわ。
会議中に見せる物怖じのなさはどこへやら、あこがれのアイドルを目の前にした、ごくごくふつうのお兄さんみたいになってしまう。
「あのっ……えっと……わっ私はっ、その……
私などがご一緒してしまってよろしいのでしょうかっ?」
「おや、今更なにを恥じらうことがありますか、ハジメどの?
最大与党の党首にさえ、すこしも気後れせずにかみついていく。
あの勇ましさは、いったいどこへ落としてしまったのでしょうね?」
ファンさんはくすくす笑いながら、ハジメさんの鼻の頭を指先でちょん。
ハジメさんは真っ赤になってなんにも言えなくなってしまう。
これは、野郎が野郎にやるべきものなんだろうか。でもちょっと、使えそうな気がしないでもない。相手は思い浮かばないけど。
とりあえずこころのメモ帳にメモっておく。
と、ファンさんがおれたちを見まわして言う。
「わたしはですね。
『外地』出身の若輩の身でありながら、この高天原という魔境に切り込んできた、我々四人は同志だと思っています。
いえ、本当を言えば、わたしはあなた方にあこがれを抱いているのです。
個人の草の根活動から議員となったハジメさん、成人すらしていないお二人。
そのパワーの源はどこにあるのか、ぜひ本日は教えてもらえませんか。
ほんの三十分ほどで結構ですので」
「教えてって、俺たち妹たちが可愛いってだけだけど?」
「ええ、それではかわいい妹さん方のお話をどうか」
「……わかりましたっ。私の、いや僕の想い、三十分でめいっぱい語らせていただきますっ!!」
いつも通りのイツカの隣で、ぐっとこぶしをにぎって熱血するハジメさん。
正直、それでもなんだか優しそうで、ちっとも怖いと感じない。
けれど、たとえ殴られたって絶対めげない、そんな強さも感じられた。
たとえていうなら、大きくなってちょっとたくましくなったシオンとハルオミを足して二で割ったら、というかんじだろうか。
「あっ、三十分だとお二人の話す時間がなくなりますよね! えとっ、じゃあ10分! いえ、五分でがんばりますのでっ!!」
……やっぱりミライもたして三で割った感じかもしれない。
おれはほんわかしながら、そんなハジメさんと、主催者のファン氏に予定を伝える。
「だいじょぶです。おれたちは午後二コマ目から授業なんで、それに間に合うまででよろしければ」
「そういえば、シルヴァン殿にダンスを習っていらっしゃるのでしたね。
よろしければ私も少し、手ほどきをできますよ。
お茶が入るまでの間にでも、すこしだけ踊りましょうか。
女性のパートでも男性のパートでも、お好きな方で」
「マジ?! よろしくオナシャス……じゃなかった、お願いしまっす!!」
かくしておれたちは、野党二政党の代表たちと、いっぷうかわった『勉強会』をすることになったのだった。
ど、どう見てもブックマークいただいておりますね……二件ほど……
嬉しいお年玉です。ありがとうございますっ!
次回は、一風変わった『勉強会』。
オリエンタルビューティー(♂)とちょこっとダンスを踊ったり、ほのぼの系先輩政治家(※一見、学生)が熱く夢を語ったりの予定です。どうぞ、おたのしみに♪




