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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_5 実家に帰らせていただきますっ!

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5-5 『青嵐公』、ブチ切れる

「どうした、待つんだろう。

 そのままおとなしく『待って』いろ。俺が心配を始めるまでな?

 一回二回ミンチになった程度で動くなよ、ソリステラスの面汚しめが」


 女性が明らかに動揺したのがおれにも分かった。

 おもわず腰に手をやってフリーズするところに、笑顔の『青嵐公』がゆっくりと距離を詰めていく。

 二歩、三歩、後退して女性はやっと我に返ったようだ。


「言ってくれるじゃないか、月萌ツクモエの腑抜け狐。

 どうせならキュウビなんぞやめてフェネックにでもなったらどうだい。戦場を棄てた腰抜けが」

「戦士養成校が戦場でないとはな。

 貴様のエリート章はニセモノか。それとも、その頭のほうがお飾りなのか?」

「チッ、ああ言えばこう言う!!

 あたしはそういう、理屈っぽい男が大っ嫌いなんだよ!!

 抜け、勝負だ!!」

「ハッ。こっちこそ、年端もいかねえガキに手を出す色ボケ女なんぞお断りだッ!!

 ……問答無用で叩っ斬ってやる」


『青嵐公』が鯉口を切った。

 女性が腰に付けていた筒を手に取り、青のビームサーベルを展開する。


「ジュディ! しばらくそのウサギちゃんと遊んでおやり!

 いいかい、壊すんじゃないよ。ソレはこれからあたしが使うんだからね!」

「アイアイサー!」


 彼女は何やら不吉なことを言ってよこしてきた。

 同時に仕掛ける。『青嵐公』が吠え、居合いを放つ。

 そのまま、視認することも難しい剣撃の応酬が始まった。


「先生! おれなら大丈夫だから! 気にせずに戦って!!

 ジュディさん、すこしおれと話をしない? 決着がつくまでの間、君と話がしたいんだ」

「えー? いいよ。何話す?」


 おれは腹をくくった。

 これが正解かなんてわからない。けれど今は、動かなければならない場面なのだ。

 ジュディに危害を加えられないですむよう、先生の邪魔にならないように、おれは彼女と平和な会話をすることに決めた。

 ジュディは快くOKし、その場にちょこんと座ってくれた。


「おいよせカナタ!! うっかりでも機密を漏らせば……」

「大丈夫です。ただの男が、ひとりの女の子と話をするだけですから」

「アハハ! よそ見をしている暇があるのかい、この野暮ちんがっ!!」

「ああ暇で暇で仕方がないなッ!! もう少し楽しませやがれ、『往年』のトップストライカーが!!」


 先生はおれに警告するが、大丈夫、うまくやってみせる。

 とりあえず二人のことはわきに置き、おれはジュディに話しかけた。


「ありがと、ジュディさん。じゃあ、ねえ、あの二人って仲いいの?」

「おい!」

「おい!」

「うんうん! すっごく仲いいよー!

 もうね会うたびああやってアツアツでね! あたしいっつもワクワクしちゃうんだー!」

「アツアツじゃない!!」

「信じるなカナタ!! そんなことは絶対にないからな!!」

「たしかになんか楽しそうだもんねー」

「でしょー? あたしいつふたりがこっそり逢い引きしてくれるかちょー楽しみでー」

「ジュディいいい!!」

「後で覚えとけカナタあああ!!」


 うん、おれがすごいと思うのは、こんな風にブチキレながらも剣を振るうペースが落ちないってとこなんだ。

 それは後で先生に伝えるとして、おれはジュディとお花畑トークを続行する。


「でねでね?」

「あははは。ホントに?」

「ホントホント?」


 そうしながら、ふっと思った。

 今まで、知識としてだけしか知らなかった、外国の女の子。

 どうやらおれの国と彼女の国は、けして仲がいいわけではなさそうだが……

 それでも、そこにはこんな普通の少女がいる。そして、拍子抜けするほどあっさりと、普通に話をしてくれる。

 一体どうして、こうなったのだろう。

 鎖国を行い、情報統制に国交断絶までしているはずの両国の民が、必ずしも憎しみ合うよう仕向けられていない……

 

 そのとき、思ってもみなかったことが起きた。

 ふいにジュディが言葉を切って、学園の方を指さしたのだ。


「ねえ、なんか来るよ?」

「えっ?」


 耳をすませば、確かに。

 学園側の木立の向こう、こっちに向けてまっすぐに、なんかがぴょんぴょん跳んでくるのが『聴こえ』る!

 一瞬木の間ごしに、やけに見覚えあるフサフサが見えた気がしたが……

 はたして二秒後、それは来た。


「いたー! おーい! なにこれどういう状きょ――っとっわっ?!」


 そしてこの場の全員がフリーズした。

 着地をミスっておれたちのど真ん中に転がったのは、黒の軽武装の猫耳少年。

 そう、そいつはどっからどうみても、我が相棒・イツカ本人だった。




「おおお、黒にゃんこちゃんだー! さっそくゲーット!」

「えっちょっなっ?!」


 最初に動いたのはジュディだった。

 きゃっほーと飛び出し、どこからか取り出した巨大捕虫網をかけようとする。

 からくも飛び起きて逃れたイツカ。ジュディはわーいと追いかける。


「捕獲ほっかくー! えーい!」

「えっちょっとなになに?! なんで追っかけてくんの?!

 ちょっカナター、こいつお前の友達?! なんとかしてー!!」

「……いや、なにしてんのイツカ?」

「なにしてんのは俺のほ、っとわっ、タイムタイム!

 俺虫じゃないし! ちょっまっやめてー!」


 でっかい網を振りまわすジュディ、逃げまわるイツカ。

 さっきまで斬りあっていたふたりもポカーンだ。


「……なんだい、あれ」

「こっちが聞きたい……」


『青嵐公』先生が額を押さえる。

 そのとき、うしろから大きな手が伸びてきて、やわらかくおれの口をふさいだ。


「怖かったね。もう大丈夫だよ。

 もう少しだけおとなしくしておいで、ウサギちゃん」


 耳元で、低く優しい声がひびく。

 同時に、水の中に引き込まれるような感覚に襲われる。

 次の瞬間おれは、あの網の外にいた。

 口もとから手が外され、おれは振り返る。そしてまたフリーズした。

 いや、いや待とう。『彼女』がこんなところに普通にいるとは考えづらい。


 おれより頭一つ以上は大きい高身長。金色に日焼けした肌。

 金褐色の髪、こはくの瞳に彩られたおとなの美貌は、ワイルドかつ暖かい印象。

 水着にも似たバトルスーツは、白と濃紺のカラーリングのせいか、シャチっぽくみえる。

 それらの特徴を持った人はやはり、おれには一人しか思い当たらない。


「えっと、まさか……オルカ・フジノ?!」


 αプレイヤーの頂点『エクセリオン』のひとり。

 女子競泳の星にして、スポーツモデルでもある女性だ。

 はたして彼女は『本物だよ?』といたずらっぽくウインクしてきた。


「それだけじゃないよー?」


 息をのんだところに、ストロベリーキャンディのような声が降ってくる。

 見上げれば、上空7mほどのところ、ふわふわと舞っているピンク色。

 おれ、疲れてるんだろうか。それとも目がおかしくなったんだろうか。

 思わず目をこすったが、「それ」は、確かにそこに浮いていた。


 白とピンクのまるっこい日傘、パンプス、ミニドレス。そしてあわいピンクのねこみみしっぽ。

 一言でいうなら、『甘ロリ』系の美少女だ。

 めいっぱいのリボンとフリルで装った彼女は、ゆるくまかれた長い、これまたあわいピンクのツインテールを風に舞わせつつ、ニコニコと手を振っている。

 その姿もおれは見たことがあった――エクセリオンのひとりとして。


「えええっ?! アカネ・フリージア?!」

「だいせいかーい♪」

「くっ、なぜだ! なぜエクセリオンが二人も!!

 たかが無級の仔兎一匹のために!!」


 ビームサーベルの女性の声が耳を打つ。

 みれば彼女とジュディは、さっきまでとは少し離れた場所にいた。

 背中を預けあうようにして、前後を警戒している。

 おれの肩を優しく持ったまま、オルカ・フジノがため息をついた。


「……だから『六柱』候補から外されるのよ、お前は」

「えー? たのしそーだったからー!」


 一方アカネ・フリージアは、明るい笑顔でくるりんっと回る。

 ミニのバルーンスカートの下から、白いひらひらがちらり。イツカがあわてて目をふさぐ。

 いや、あれは『アンダースコート』だ。お前が思ってるようなものじゃない。

 そうは思ったが、おれもつられて恥ずかしくなってしまう。

 わかってやってたら卑怯すぎだ。ぜひとも異議を申し立てたい。

 しかし空飛ぶピンクのひきょうものは、うぶな男心に構うことなしに、のーてんききわまる調子でのたまった。


「そーいうわけでー、あたしたちとキャラかぶっちゃってるイケナイ二人にぷれぜーんと!

 ひっさーつ、『ロリポップ・シャワー』っ!」

「おいてめっ」


 ツッコミどころしかないセリフがおわれば、日傘のふちからバラバラと何かが降り落ち始めた。

『青嵐公』先生が、あわててイツカを抱えて避難。

 次の瞬間、その場はまばゆい火柱と変わった。


 アカネ・フリージアの必殺技『ロリポップ・シャワー』。

 強力なホーリーインフォースを各種ボムに重ね掛けして、相手にめちゃくちゃ降り注がせるというトンデモ技だ。

 その破壊力は外道と言っていいほどのもの。

 おれは息をのんだ。まさか、ジュディは。そしてあの女性は!

 思わず発動してしまった『超聴覚ハイパーオーディション』。

 とたん、耳に激痛が突き刺さり……


 目を開けると、医務室の白い天井をバックに、涙を浮かべておれを見下ろすイツカ、大きくため息をつく『青嵐公』先生の顔が見えた。

あわわわ……ブクマに評価を複数頂いてしまっているっ!

そしてPVが『ドがとれただけの底辺』には有り余るほど!!

おかげさまで昨日朝は日間VR32位をいただけました。

うれしすぎでプルプルする勢いです。

ありがとうございます!! これからもがんばります!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに二人は凄く仲よさそう。 ジュディのキャラも良いです。 こういう主人公を振り回すキャラは良いものですね。
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