Extra Stage_クリスマスツリー・パニック!(上)
十二時間遅れの……しかも半分だけのクリスマス企画となってしまいました、すみません!
明日残り半分を投稿いたします!
「っしゃ――!!
きょねんはダメだったけどことしはやるぞ――!!」
「おれたちもことしはDランクだもんね!!
よーし、がんばろー!!」
「おー!!」
おれの前でイツカがさけぶ。
やつのとなりで、ミライも気合をいれている。
そのとなりでおれも、景気よくこぶしを突き上げる。
おれはいつになく、ちょっぴりハイになっていた。
だから、言い忘れてしまったのだ。
何より大事な、一言を。
それは、小学校二年の冬のこと。
ようやく戦績の安定してきたイツカは、ちょっとした見回りや小型の討伐をこなす、かけだし剣士として。
ミライは教会でお手伝いをする、みならいプリーストとして。
おれは、町の錬金術教室に通いつつ作成依頼を請け負う、初級のクラフターとして。
ひとりでできることは自分で。一人で難しいときには頼りあい、友達同士ゆるゆると遊びながら、実績を積んでいたところだった。
このころのおれたちは、いわゆる『ライトユーザー』でしかなかった。
学校の友達と遊ぶこともあるミライ。
ハートホスピタルに入院している妹たちの世話をしたいおれ。
そして、あるきっかけから『リアルも大事に』とログインをすこしひかえるようになったイツカ。
そんなおれたちだったけど、毎年クリスマスシーズンに開催されるDランク向けボーナスイベント『クリスマスツリーをハントせよ!』は魅力的だった。
期間限定フィールド『生けるもみのきの森』で、トレントの変種であるリビングファーツリーを倒すと、多めの経験値と景品引き換えチケット、魅力的なランダムドロップをゲットできるのだ。
おれが狙っているのは、景品引き換えチケットでもらえる雪の結晶をかたどったブローチ。
ミライは、かわいいオーナメントをゲットして、教会のツリーを飾りたいとはりきっている。
イツカは『どうせなら大当たりゲットしようぜ!』と言っている。
三人三様、ウキウキしながらおれたちは、『生けるもみのきの森』に足を踏み入れた。
するとすぐ、のそのそと歩くもみの木を一体発見した。
イツカが歓声を上げる。
「あっ! いた、リビング……なんだっけ?」
「ええっと、リビング……」
かわいく小首をかしげるミライ。おれは思わずよしよしと頭を撫でてしまう。
「リビングファーツリーでしょ?」
「あ、うんうんそれ!」
するとイツカも小首をかしげてこっちを見る。
「ふぁーつりー……ってそんなにフワフワしてるか、あれ?」
「さあ?」
とぼけたことを言いながら、ちょっと撫でてほしそうな目でこっちを見るやつも、手を伸ばしてよしよししておく。
「まいっか! いくぞー!」
しかしやつはすぐに気を取り直して突撃。
「神聖強化ー!!」
ミライは手にした杖をその背に向けて、神聖魔法を発動。あえかな虹色の光がイツカを包む。
おれは大きく振りかぶり、今回のために仕入れた特殊なボムを投げた。
おれの手から飛んでいく水色の玉は、時速120kmでイツカを追い抜き、リビングファーツリーの胴体で炸裂。
炎を上げない爆発で、先制ダメージを与えた。
「てやああっ!」
そこへイツカが剣の一撃を加える。
『突撃にゃんこ』の攻撃は当たればデカい。歩くもみの木は光の玉となって消える。
あとには赤とグリーンで彩られたプレゼントボックスが浮遊していた。
「はああ、やったあ!」
無傷での勝利に、ミライがほっと小さくガッツポーズ。
「カナタ、いまのボムどうなってんだ?! バクハツしたのにバクハツしないからびびった!!」
イツカはというと、おどろいたようすでおれを振り返る。
「これはね、『エアロボム』っていうんだ。
火薬じゃなくて風のチカラをこめた粉が入っててね、それがはじけてダメージを与えるんだ。だから……ってこらー!!」
しかしやつは、みなまで聞かず再び突撃。
ずばんとばかりに、次の獲物を斬り倒していたのだった。




