Bonus Track_45-2 エプロンをつけた不在証明~アスカの場合~
「やっぱりあったんだね。奴らの『干渉』」
『……うん。
ミライが大失敗で転ばされた。ただ踊っていただけなのに。
あれは絶対奴らの差し金だよ。ミライもノゾミお兄さんも否定してないし、まちがいない』
軽いじゃれ合いのあと本題を切り出せば、一気にシリアスが降ってきた。
何も知らなければ、ゲームならではのアクシデントと思って笑っていたのだろう。
けれど今は知っている。それは不正によるものと。
すなわち、ミライを不当に貶めるために『赤竜管理派』が行った干渉であると。
わるいことに、ミライたちが本番を踊る国立迎賓館。そこは、『ティアブラシステム』を用いた演出を用いかつ、どの階級のものでも踏み入ることができるよう、ミッドガルドと重ねられている。
つまりは、成功も失敗も、奴らの思うがままであるということだ。
『やつらからほかに動きは?』
「今のところはまだないみたいだね。
ミーたんに脅迫メールでもよこしやがったらトウヤとエルエルあたりにそっこーチクってやろうと思ったのにさ?」
イツカとカナタは『しがらみ』を持たぬまま、マザーに次ぐ権威を手に入れた。おかげでいまは僕たちが『官軍』。ここからは、僕たちのターンだ。
もう、うやむやのもみ消しなど許さずにすむ。『ずっ友』の力でもなんでも借りて、全力で料理してやるまでだ。
『そっか、ありがと。
ほんとにごめんね。大事な時期に、おれたちにかかりきりにさせちゃって』
「何言ってんの。おれたちにとってはこれが一番大事なことだよ。
高天原への入学も卒業も、ひどい言い方をすればおれたちには『手段』だった。
それを楽しくしてくれたのは、きみたちだよ。
ありがとう。すぐにおれたちも、そっちへ行くよ。
きみたち、離れいっこもらったんでしょ、ラボつきの。そこで働く人も必要だろうし、いっそ君たちの直属としておれたちをやとってよ。
そしたら、いつでも相談に乗ってあげられる。いつでも話せるようになるよ。通話なんて、いつ盗聴されるかわかんない手段を介さずにね」
『え……』
「たしかにきみたちの権威はマザーに次ぐものではあるけどさ。油断は禁物だよ。
たとえばその離れに、いつ何時侵入者があるかもしれないんだしさ。
それじゃおやすみ、ふたりとも」
通話を切って僕はハヤトにウインクをとばした。
「ほんじゃしばらくおれの体お願いね、ハーちゃん。
あ、いたずらしてもいいから。ちょっとくらいならえっちなこととかも」
「ばかやろうだれがするかそんなことっ!! いいからさっさと『行って』こい!!」
「ちぇ~」
真っ赤になってあわてまくる様子は、いつ見ても可愛い。
おれにとっては三度三度のごはんにひとしいギャップ萌えを満喫してから、左手中指のシルバーリングにふれて目を閉じる。
そうしてひとつ大きく息を吸うと、意識を遠く伝わせた。
目を開けると、そこはやけに見覚えのあるツインの寝室。そしてそこには見覚えあるパジャマをまとったイツカとカナタの姿。
ちなみにふたりともフリーズして口をパクパクさせている。
仮の体の僕の顔に、会心の笑みが浮かぶのを感じた。
『はーい大声禁止ー。
だからいったっしょ、侵入者があるかもしれない、すぐにそっちいくってさ!
ライカ分体を派遣して、意識のっけさせてもらってんの。ライムちゃんには許可もらい済みねん☆』
そう、僕はあらかじめこの『ゼロブラ館(仮)』にライカ分体を派遣しておき、そいつとつながったシルバーリングを介して意識を転送。こうして二人の前に『現れ』たというわけだ。
するとなぜかカナタがやさしく肩に毛布をかけてきた。
イツカが驚き冷めやらぬ顔で言うには。
「……いや、なんでエプロン装備?」
よし、今度解体しよう。
僕はおいたのすぎる神剣へのおしおきを決意したのであった。
「それでアスカ、何が判明したの?」
毛布まきまきのおれをあくまで紳士的にベッドに座らせると、カナタは床のクッションに座る。
そして、柔らかな中にも鋭さを宿した笑みで問いかけてきた。
さすがはカナタ、話が早い。僕も単刀直入に答える。
『黒幕の所在さ』
「……?!」
ブックマークありがとうございます! 嬉しいですっ!!
これがなろうの神からのクリスマスプレゼントか……!!(※早い)
次回、もしかしたら突発クリスマス企画になるかもしれません。
投稿時間がズレる恐れが若干ありますので、お暇なときにのぞいてやってくださいませ!




