44-7 アトリエ前の奇跡、そして……
2020.12.23
やっぱり一週間間違えてましたごめんなさいいいい!
(修正部分はあとがき部にございます)
ミライの命に別状はなかった。
しかし土曜は午後一番に、ソナタとの初合同練習。
それを考えて、その日の自主練はそこでおわりに。金曜日の夜と、土曜の朝に復習をして、合同練習に臨むこととなった。
けれどこの二回の復習は当初の予定と違い、ミライと一緒にはやれないこととなってしまった。ノゾミ先生に言われたのだ――おれたちの踊る姿を見るとどうしても、ミライが焦ってしまうようだ、と。
本音を言えばさみしいが、そこは仕方ない。
はじまった仕事と勉強、レッスンと練習の合間に動画をチェックして、ミライ分を補った。
控えめに言って癒される。
失敗したってそこが可愛い。ぜんぶまるごとぎゅっとしたくなる。
それは、ソナタの習い始めのころにも通じる愛くるしさだ。
そのまんまでもいいんだよ、と言ってあげたくなるけれど、画面の中の二人はそんなものには納得する様子なく、どんどんくらいつき、上達を遂げていく。
けれど、その速度には、あきらかな開きがあることは否めなかった。
おれたちの間には、生まれの差がある。
なかよく輪になって、ボール遊びをしているころには気づかなかった。
でも、鬼ごっこを始めるようになると、そいつはおれたちを戸惑わせた。
流れ星の子は、差別はされない。
町の人たちは、いつも暖かく分け隔てなく接してくれた。
それでも外遊びの輪は、やがて分かれてしまう。
おれたちをつなぐのは、βもスターシードも関係のない箱庭世界になっていった。
ティアブラで使うアバターには、リアルの体力やスキルもある程度反映される。
けれど、αでも目指さない限りその差は現実ほどには大きくならない。
おれたちはみな、努力に応じた強さを手に入れ、ともに楽しむことができるのだ――原則的には。
ミライはすでにミッドガルドを出た。もう赤竜管理派による妨害はない。望んで鍛錬すれば、ミズキのように聖騎士になることだってできるだろう。
それでも、リアルの体の持つ差異は、埋めようもなく立ちふさがる。
おれたちはもしかして、ものすごく残酷なことをしているのかもしれない。
そう考えると、急に海からの風が冷たく思えて、おれは身震いしてしまう。
「だいじょぶだって!」
すると、ばふっとやってきた暖かさ。
肩越しに顔を出すのはイツカだ。おれの肩を抱いて、いつものように笑ってる。
きらきらのルビーの瞳を輝かせ、明るい、いっそ能天気なほどの声で言う。
「ノゾミ兄ちゃん言ってたろ。
『ミライとソナタちゃんなら大丈夫だ』って。
信じてみようぜ!」
そのとき、ミライとノゾミお兄さんが転移してきた。
ノゾミお兄さんは目立たないようクローク姿だが、ミライはさっぱり白シャツ姿。
緊張した面持ちではあるけれど、数日前のような悲壮感はもうない。
「あー! ふたりともどうしたの? おれもまぜてー!」
くったくなく笑うと、ぱふっと飛びついてくる。
「ほら、お兄ちゃんもおいでよ!」
そのときおれたちのよこで、アトリエのドアががちゃっと開く。
ひょこと現れるのは『ホシフリ☆ハートシスターズ』の四人だった、が……
「あっ! お邪魔しましたっ!」 ヒトミちゃんはちゃきっと敬礼。
「ソナタ、ちょ~っとリボン直さなくっちゃね~!」シュナちゃんはいい笑顔でソナタの肩を抱く。
「というわけですので、どうぞごゆっくり……」コユキちゃんまでにこにこぺっこり。
「まってまって! 大丈夫だから、これ通常運転だから!!」
「えええええ?!」
なぜかおれたちを見てアトリエのなかに戻っていこうとしたので、いそいで引き留める。
と、四人はキラッキラした目で飛び出してきた。
そう、なぜかソナタまでがキラッキラだ。解せない。
ともあれ合同練習は始まった。
軽くウォーミングアップ。相手なしでステップを踏んでおさらいしたら、いよいよ曲を流して踊ってみる。
アトリエ前のちょっとした広場。そのまんなかに、白シャツと黒いズボンのミライ、ピンクの練習用ドレスのソナタがが立つ。
双方照れ臭そうな様子だったけれど、ソナタが距離を詰めてミライが受け入れ、すっとホールドが組まれた時、おれは息をのんだ。
何の迷いも、違和感もなかった。
ふしぎなほどのユニゾンは、踊り始めてからも続いた。
ふたりとも初級者なのだ。それはまちがいない。
人のことは言えないが、まだまだフリに洗練の余地がある。
けれど、それでもその動き。完全にぴったりなのだ。
兄の欲目を差し引いても、これで感動しない人がいるはずもない。
ノゾミお兄さんの手が、優しくおれの肩をたたく。
「だから言っただろう。『二人なら』大丈ぶ――」
そのとき、つるり。ミライが足を滑らせた。
2020.12.23
しかし翌日は金曜日。ミライには昇格試合がある。
そして土曜は午後一番に、ソナタとの初合同練習。
それらを考えあわせ、
↓
しかし土曜は午後一番に、ソナタとの初合同練習。
それを考えて、




