表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_44 月萌杯突破記念パーティーにむけてのあれやこれ~高天原学園生たちの場合~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

471/1358

Bonus Track_44-7 『可愛い』じゃ納得できなくて~ミライの場合~(下)

 そのあと。

 お兄ちゃん、もとい、ノゾミ先生はおれとミズキを連れ出した。

 行く先は、面談室。

 ミズキとふたりで待つこと少し。先生は、暖かな飲み物の入った紙コップを運んできてくれた。

 ココアのをおれのまえに、ミルクティーのをミズキのまえに。

 そして、コーヒーのはいったのをおれたちのむかいに置くと、すとんと腰掛け話し出す。


「ミライ。今から厳しいことを言うぞ。

 ……お前はほんとうは、ちゃんとわかっているんだよな。

 その差は、努力で埋めきれるものじゃないと」

「っ……」

「先生、」


 ミズキがぱっとおれの肩を抱く。傷ついたこいぬをかばうみたいに。

 おれはそっとミズキの手に手を添えた。


「……ミライ」

「ミズキ。ほんとのことなんだ。

 イツカとカナタとソナタちゃんは、スターシード。

 そしておれは、普通のβ。

 うまれつき、全然違う。追いつけるような差じゃ、ないの。

 ちゃんと、わかってるよ。

 たとえ限界まで頑張っても、絶対絶対に、追いつけはしないって」

「ミライ……!」


 ミズキの手に、ぎゅっと力がこもる。

 そう、ミズキもちゃんと知っている。


 β――ふつうの人間と、スターシード――流れ星の子供たち。

 その間には、何をどうしても埋められない差がある。

 だから、それらは分けられる。

 βとスターシードは一緒の町で暮らすけど、スターシードは施設で暮らし、学校も職場もずっと別。

 仲良く暮らすことはできるし、結婚だってできなくないけど、どこかで絶対に交じり合わない。

 それが、イツカやカナタのいう『このセカイ』ならではのありようなのだ。


「わかってる。

 イツカやカナタを追いかけて追いかけて、そのことは思い知ってるよ。

 でもね。おれは『同じ場所』にはこれた。

 この高天原に。二人やみんなの力をかりてだけど。

 だからおれ、がんばりたいんだ。みんなの気持ちを形にするためにも。

 どんくさくってぶきようなおれみたいな子でも、がんばってがんばればここまではやれるんだって、そのことを証明したいって気持ちもあるの。

 そうして、このダンスで、変わりたいんだ。

『かわいい』じゃなくって、『かっこいい』おれに。

 ソナタちゃんが世界で一番かっこいいって思ってくれるような、おれになりたい!」


 そう言うとミズキは、そっと腕をほどいて、まっすぐにおれを見た。


「ミライ。

 俺ね。ミライはもうとっくに、かっこいいって思ってるよ。

 一人の女の子をずっとずっと大好きで。その子のために、こんなにがんばってる。

 そんなミライは、だれよりまぶしいよ。

 もしもミライが、俺のおにいちゃんとして命を助けてくれて。俺のことをだれよりだいすきって言ってくれたら。

 もしかして俺も、恋しちゃうかもしれない」

「ふええっ?!」


 ミズキの思ってもみなかった発言に、おれはすっとんきょうな声を上げてしまった。

 目の前には、『戦場の聖母』の異名をとる、きよらかできれいな微笑み。


「もちろん可愛いって気持ちもあるけど、……いっぱいいっぱいあるけど。

 よく考えたらそればっか伝えてたよね。

 ごめんね。俺もなんかミライのこと、弟みたく思っちゃってたみたい」

「ふえええ……!!」


 どうしよう、何だかドキドキしてきてしまった。

 もちろん、ソナタちゃんに抱いてるきもちとこれは違うもの。それはわかってるけれど……!


「なんだなんだ、俺には一体何人『弟』が増えればいいんだ?

 親父とお袋が喜んじまうぞ、まったく……」


 そのとき、ミズキとおれの頭におっきな手がのっかった。

 先生、じゃない、お兄ちゃんだ。

 いつのまにかおれたちの後ろにいたノゾミお兄ちゃんが、完全に『お兄ちゃん』の顔で、おれたちの頭をなでなでしてる。

 ミズキは茶目っ気のある表情でお兄ちゃんに言う。


「いいんですか、先生? おれも『弟』になってしまっても?」

「もとより生徒はみんな舎弟のつもりだからな。

 だが授業中に『お兄ちゃん』呼びは勘弁してくれよ、あれが起きると授業にならんからな」


 そう、おれはたまにやらかす。

 研修生としてここに出入りしている間は、ずっとどこでも『お兄ちゃん』と呼んでいたから、ついつい出てしまうことがあるのだ。

 そうなるとみんな盛り上がっちゃって、大騒ぎになってしまう。


「はい、気を付けます!」

「えへ、ごめんなさい!」


 ミズキが、おれが笑ってこたえると、お兄ちゃんが言った。


「やっと笑ったな、ミライ」


 そう、気づけばおれは、笑顔になってた。

 お兄ちゃんはひょいとしゃがむと、おれに目の高さを合わせて、教えてくれた。


「笑えなくなってきたら、誰かとあたたかいものでも食べろ。

 泣けてきたなら、誰かに甘えろ。

 もしも涙が止まらなくなったら、やめていいんだ。

 苦しい涙は心の血だ。傷つけば流れる。流しすぎれば、命にかかわる。

 そうして誰かが倒れてしまえば、そいつと心つなげた者たちも、心の血を流すことになる。

 がんばることはいい。だが、倒れるような無茶はするな。

 お前が無茶をしないことは、お前を愛する者たちすべての心を守ることなんだ。

 ……いいな」

「はいっ!」


 お兄ちゃんたちは、ここまで苦労に苦労を重ねてきた。

 この国を変えるために。その礎を築くために。

 きっと、何度も泣いたはず。泣きながらもやらなきゃならないときも、おれよりいっぱいあったはず。

 そのうえでのこのことばは、おれの胸にずしっ、と響いた。


 そうだ。おれはプリーストだ。

 みんなを守り、しあわせにするのが、おれの選んだ生き方だ。

 それをまっとうするためには、『おれは倒れてでも』なんて思ってちゃ、いけないのだ。


「ミライ。

 俺たち、みんなを守ろうね。

 力を合わせて、いっしょに」

「うん!」


 ミズキが差し出した握手の手に、おれは手を重ねる。

 お兄ちゃんはひとつうなずくと、おれたちふたりの手を、優しく包み込んでくれた。


数字を覚えるのが苦手すぎるので、とりあえず一の桁をがんばって覚えることにしました。

ヤッター! ブックマークをいただいていることを確信しました。

メモを取ればいいことを今思いつきました。

(むだにローグライクふうにしてみる)


連日のブックマークありがとうございます! もう夢でもいいですっ!


次回、初めての合同練習。

ミライとソナタ、ふたりがはじめていっしょにステップを踏みます。

どうか、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ