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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_44 月萌杯突破記念パーティーにむけてのあれやこれ~高天原学園生たちの場合~

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44-4 ほのぼのペアと、冷え冷え対決!

所要にて遅れました……!!m(__)m

「はじめてのみなさん、ダンスの『雰囲気』を覚えてくれましたか?

 ではこれを、私なしでもできるようになりましょう。

 まずはすべての基礎、『正しい立ち方』を覚えましょうね。

 といっても、師についてハンター技能を学んだ人は、もう身についているかもしれませんね。『頭から一本の糸で吊り下げられているように』……」


 まずは立ち方と姿勢を教わる。

 おれたちは期日も差し迫り、本番で踊ることが決まった相手もいる。

 そのため、おれはルカと。イツカはルナと。ミライはソナタといちばん身長の近いサクラさんにお願いして『ホールド』という姿勢をとってもらった。

 緩やかに伸ばした手を取り合い、肩甲骨のあたりを優しく抱いて、半身をそっと添わせるこの姿勢。

 ぶっちゃけ顔も近いし、こういう文化に育ってこなかったおれなどにはちょっと恥ずかしい。

 ルカは18、女子としてはそこそこ身長があるほう。おれは15、ほんのすこし、ちょっとだけだけど小柄なほう。だから、理想のバランスとされる『男女の身長差10cm』は稼げない。つまり、顔の近さはさらに増すのであって……


「もっ、もじもじしないの。これは、こういうもんなんだからっ。

 あ、あたしまで恥ずかしくなっちゃうでしょっ?!」


 照れくさかったのはおれだけじゃなかった。

 ルカも赤くなっている。

 照れて怒っているルカの顔は、笑顔に次いでかわいらしい。本人にその気はないと思うが、守ってあげなきゃならない気持ちになる。

 そんなこんなでホンワカしてると、サラッとルナとくんだイツカが、こっちみてニヤニヤしていた。余裕か、このモテ男め。

 一方でミライ。「いーい、サクラのことはお姉ちゃんと思うのよ! だからはずかしくないの。ね!」「はいっ、サクラお姉ちゃん!」なんて可愛いことをやっている。

 アスカはというと、これまた身長の近い女子と組んでひゃっはー☆ なんてやってるが、なかなかどうして貫禄のある組みっぷり。こいつはホントに初心者か。

 ミズキとケイジ、ユキテル、ルシードは経験者組のほうで軽くステップを踏みつつ、そんなおれたちを微笑ましく見ている。


 見ているといえば。やはり視線を感じた。

 ユズキさんからのそれは暖かいが、リュウジ氏からのほうは、からかうようなものを感じる。

 はたして、チャイムの鳴った後。

 見学者ブースで顔を合わせた彼の第一声は、からかい含みの代物だった。


「なるほど、これも作戦というわけですな。

 儀礼としてのダンスすら学びきれていない少年たちが、願いを貫くために戦った。となれば、健気さに心打たれるものも多いだろうと!

 いやはや、私も心を打たれた。素晴らしい頭脳、恐れ入ったよ」


 うん、全っ然そんなこと思ってないなこの人。

 後ろのユズキさんがおれたちに『落ち着いて』とアイコンタクトを送ってくる。おれはイツカの背中にそっと手を当てる。

 ミライをここに来させなくてよかった。こんなとげだらけの言葉を聞いたらミライはきっと傷つく。


「『アメリカンジョーク』ですか、リュウジ伯父さん。

 お忙しいというところからジョークでいらしたとは、さすがでいらっしゃいますね」


 そのとき、おれたちの後ろからやってきたものが二人。アスカとハヤトだ。

 すでに着替えを済ませたアスカ。そのとなりにはアスカを守るように隣に立つハヤト。

 アスカの顔に浮かんでいたのは、かつて『ワスプ寄せ事件』のときレインさんにむけたものと似た、しかしずっと冷たい笑み。


「そんな怖い顔をしないでおくれ、アスカ君。今日の私は君の姿を見に行かないかと誘われてきたんだよ。

 君がやっとすこしタカシロの一員としての『自覚』を」

「僕の姓はハギノですので。

 さらにはとっくに『売約済み』ですから。違いましたか」


 冷たい声、取り付く島もないといった様子で、リュウジ氏の猫撫で声をぶった切る。


「アスカ君。その件はお詫びしているじゃないか。

 そろそろ許してやってはくれないか。われわれも人間なのだ」

「おれも人間です。

 そしてその件をゆるしたとしても……

 次の授業がありますので、失礼します。

 お話し中失礼しました、ソレイユさん」


 そうして一方的に頭を下げ、ブースを出て行ってしまう。

 ハヤトもいつも通りの不愛想な沈黙のまま、頭を下げ、アスカについてゆく。


「売約って……!」


 気色ばむイツカだが、リュウジ氏はそれで調子を取り戻した様子。

 笑い交じりにこんなことを言う。


「ああ、イツカ君は聞いたことがなかったかな?

 婚約者がいる人物のことをそう表現することもあるんだよ。けして上品なことばではないけれどね」

「こっ……」


 はぐらかそうとしている。そのことは直感された。

 しかし、それはただの直感。この時点で、口に出すものでもない。

 そんなわけでおれが黙り、イツカがまんまとミスリードに引っかかって絶句したところでリュウジ氏は言葉を継いだ。


「まあ、そういうわけで君たちだ。

 開催形式の件はご提案をいただいた通り、こちらでも善処しましょう。

 今見せてもらった限りでは、一か月後に君たちのダンスが『デビュタント』にふさわしいものになるという可能性は見えない。

 まして妹ぎみ……ソナタ君だったね。10歳の彼女にそれ以上を期待するのは酷ではないかと、大人ならばそう思うレベルだ。

 そんな『お遊戯』の引き立て役に、『わが家』の子女たちの晴れ舞台を『利用』しようなどということは、親として認めがたい。

 たとえ我らがみな、臣下として絶対下位の立場にあるのだとしましても。

 それが冷静な世の人々の意見です。ご参考まで。」


 リュウジ氏は慇懃に一礼すると、さっさと見学者ブースを出て行った。


「く……くっそ――!!」


 ブースのドアが閉まって三秒後。イツカの悔し気な声がこだました。


まさかのブックマークをいただいておりました。ありがとうございます;;精進いたします!


次回、この状況を巻き返す策を考えるイツカたち。はたして結論は……?

どうぞ、お楽しみに!

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