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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_43 さらば五ツ星寮、こんにちわソレイユ邸!

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43-3 新しい部屋と職人技と!

2020.11.28

中盤でカナタが敬語を使っていたものを修正しました。

 すこし前。ソレイユ家で雇ってもらうと決まった後のこと。

 おれたちはライムを通じて、部屋の希望を聞かれたのだ。

 すなわち、一人ずつ別個の居室が欲しいか、それともと。

 おれたちの結論はこうだった。

『今と同じく、いっしょがいい。

 なぜなら、ふとんに入る前にブラッシングを。

 寝入る前には、しばらく話をしたいから』

 その希望はかなえられた。それも笑っちゃうくらいに見事なかたちで。


 * * * * *


「と、話が長くなってしまったね。

 今日までの強行スケジュールで疲れているだろう。まずは部屋に案内するから、ゆっくり休んでくれたまえ。

 わからないことがあったら、ライムに聞いておくれ。

 ……ライム」

「かしこまりました、お父様。

 さ、参りましょう」


 はい、よろしくお願いしますと立ち上がって一礼し、ふと気が付いた。

 ライムはまるで当然のように、おれたちの世話を焼いてくれている。

 けれど、彼女はこの家のご令嬢。つまりはおれたちの雇い主の娘さんなのだ。

 これって、いいのだろうか。

 そんな混乱は顔に出ていたらしく、ライムはいたずらっぽく笑いかけてきた。


「おふたりはもうこの家の一員。つまりはわたくしの弟のようなものですわ。

 お姉さんが弟のお世話をするのは当たり前のこと。でしょ?」

「そっか、なるほど!

 がんばれよ、カナタ」

「ちょっおまっなにサラッと納得してるの?! それに……

 すっすみません、それでは失礼しますっ」


 おおらかなご夫妻にくすくすあははと笑われながら、おれはイツカを執務室から引っ張り出した。

 そうしてまずくぎを刺す。


「ねえイツカ。お前も一人前のαでしょ。

 いい加減ちゃんと敬語覚えよう? じゃないとおれが恥ずかしいよ」

「えっでも、おじさんとおばさん喜んでたぜ?」

「う、いや、それはそれとしてっ」


 するとライムが笑いながら仲裁してくれたのだが、その内容におれはうろたえてしまう。


「かまいませんのよ、カナタさん。

 それをおっしゃるなら、そもそもお二人は『マザー』の直属。

 厳密にはエクセリオンより上位の存在なのですから、本来ならばわたくしたちが、あなたがたに臣下の礼を取らねばならないところですのよ」

「えっ。でも、それは、……」

「ええ。きっとカナタさんは、そしてイツカさんも、ひどく戸惑ってしまったことでしょうね。

 だから両親は、父のように母のように接することを選んだのですわ。

 わたくしたちが雇用主として命を発さねばならないときは、従っていただく必要も出てきます。けれど、そのほかの時は、ご自分の選択で振る舞いをお決めになってくださいませ。

 少なくともこの家では、わたくしたちすべてに、その権利が与えられておりますわ」


 もちろん、責任も伴いますけれど、そういってライムは綺麗な人差し指を立てて見せた。


「これも、りっぱな『マザーの騎士』としての第一歩ですわよ、イツカさん。

 参りましょう。お二人のお部屋はこちらですわ」




 母屋を出て、別棟。

 警備詰所の向こう側、邸内ラボのほど近くにそれはあった。

 真新しい、二階建ての離れが一棟。小規模ながら庭もついている。

 民家としては大きい部類だが、御三家の使用人の寮としては、かわいらしい印象を受ける。

 ぶっちゃけるともっとこう、マンションみたいな感じを想像していたのだけれど……


「意外とこじんまりしてるんだね、ソレイユ家の寮って。

 もしかして表面換装マスクエフェクトかけてあるとか……?」


 早速遊ぶ算段を始めたと思しき子猫野郎を捕まえながら、おれはライムに質問をぶつけてみる。

 しかし、かえってきた答えにおれは再び狼狽させられた。


「あ、いいえ、そうではありませんの。

 この離れは一軒すべて、お二人のためのものですわ」

「えええっ?!」

「『プラチナムーン』と『ソードマスター』をお迎えするのですもの、このくらいのアトリエは当然必要ですわ。

 おふたりに教えを請いに来る者たちもおりますし、いずれは『うさねこ』の皆さまも卒業してまいります。

 そうしたときに、拠点としてお使いいただくための場所ですのよ。

 いわば先行投資、ですわね」

「なるほど……」


 たしかに、そういわれれば納得だ。

『ぶぐかい』『AA部会』の活動はあの、二人で使うには絶対大きすぎる勉強部屋スタチェンが支えてくれたといっていい。

 ルカとルナ、ルシードとマユリさんの部屋にも、結構生徒たちが出入りしていた。

 入学直後に見た時には『なんだこの部屋は……』と気圧されたものだったけれど、いざその立場になってみると、それが必要だったとわかる。


「では、なかをご案内しますわね」


 おれたちがうんうんとうなずくのを確認し、ライムは離れの扉に手をかけた。




 正面入り口を開けば、開放感たっぷりの玄関と玄関ホールが姿を現す。

 柔らかい壁紙の色とほどよい採光で、明るいが押しつけがましい印象は受けない。

 右手のパーティションの向こうは、奥にドアのある土間収納だ。これも広い。

 靴を脱ぎ上がると、すぐ横に白い、背の低い物入れがある。よく見れば受付カウンターにちょうどいいしつらえとなっている。後ろに回転する丸いすがふたつ置いてあるから間違いない。

 椅子の後ろに土間収納とつながった収納部屋もあり、おれたちのコートなどがその辺に収められていたが、まだまだ余裕のある様子。つまり、ここは来訪者用のクロークとしても使えるというわけだ。

 さらには、収納の隣のドアのなか。なんと二人が寝起きできるメイド控室だった。

 しょっぱなから本気が見える作りに、おれはちょっとうならされた。


 靴を脱いで上がれば、右にメイド控室とリビング。左に水回りがまとまっているのがみえた。

 左右の配置は逆だが、高天原の寮が思いだされる。

 なんでも設計・施工が同じ会社だということ。なるほどである。


 水回りの奥側にあるドアを出れば、そこはもう木目の美しいアトリエエリアだ。

 すぐ左にいまひとつ、小さな玄関。

 玄関をはさんで向かいの引き戸は、土間収納の倉庫のようだ。

 入ってみると結構な広さ。それぞれ庭がわと、右側にも出入口があり、ちょっとした作業に使えそうな机もひとつ。

 右のドアは、きっとあれだ。いったん我慢して廊下に戻る。


 右壁面には、階段と階段下を利用した物入れらしき扉があり、作業室からの騒音を遮るつくりになっていることがわかった。

 ということは、やっぱり……。


 物入れに相対する扉を開けば、待望の作業室がそこにあった。

 ピカピカの超大型錬成台に大きな作業机。天井の一部は二階まで吹き抜けとなっており、すぐそばに作業用のキャットウォークやブースがある。

 これなら、ちょっとした小型ロケットなんかも作れてしまいそうだ。

 別の壁際には防音仕切り付きの大きな書棚と書机スペース。複数の小型作業スペース、最新型のログインブース、ちょっとしたラウンジテーブルもある。


 たっぷりとしたこの広さ、十人くらいは余裕で作業できそうだ。

 さらには調べ物も、バトルフィールドでのテストも、軽食をともなうミーティングなんかも、全部全部ここでできる。思わず歓声を上げていた。


「ジムやプールなどは、共用のものをお使いいただくことになってしまいますけれど、バトルフィールドは専用をご用意しましたのよ。

 どうぞどんどん使ってくださいませね」

「おうっ!」


 かっこいいログインブースのそばをうろうろしつつ、イツカもおめめキラッキラだ。

 そのまんま、超嬉しそうにおれを振り返る。


「なー、さっそくだけどカナタ~」

「はいはい、それはまたあとで!

 まずは二階を見てからにしよう?」

「ええ、では参りましょう」


 くそう、それはひきょうだろ。

 ぐらっとくるがこらえて先へ。

 アトリエを出て廊下へ。階段を昇れば、短い廊下と扉が一つ。

 ガチャリと開ければ、あれっとなった。


「あれ……ここって?」


 そう、昨晩寝て今朝起きたのとそっくりな、ツインのベッドルームがそこにはあったのである。

 寝室は『今と同じく』二人一緒がいいですって言ったけど。確かに、そういったけど!

 顔を見合わせたおれたちは、プッと噴き出してしまった。


おうち訪問となると筆が弾みます……


次回、ソナタちゃんのお手紙でひといきです。

お楽しみに!

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