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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_42 動き出す、新たな毎日!

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42-3 ワシは認めん!『四天王』からの挑戦状!

 こういうのってラノベの中だけじゃなかったんだ。

 わくわくと揺れるイツカのしっぽを見ながら、胸の中でひとりごちた。

 おれたちの前には、こぶしを構える古つわもの。

 そしてここは、月萌国会議場併設のバトルフィールド。


 そう。まさしく『お約束』というべき、あのイベントが起きてしまったのである。


 * * * * *


 おれたちのサプライズ訪問はある程度既定の流れだったのだろう。『天の間』での御前大会議は、つつがなく開催された。

『マザー』の開会の辞につづいて、おれたちの紹介とスピーチ。ついで各会派代表のスピーチ、そして軽い質疑応答と進み、時間通り、何事もなしに終わろうとしていた。


 それはそうだろう。『月萌杯』突破者を迎えての、初めての御前大会議。

 あの戦いの熱も冷めきらぬ今、おれたちをつるし上げになどしようとすれば、最悪暴動すら起きかねない。

『月萌杯』翌日の開催という強行スケジュールは、むしろそれを利用しての側面もあってのものだった。


 それでも、それでもだ。

 最後に立ち上がった、初老のマッチョダンディーはいい声で一言。


「ワシは納得しておらん」


 与党の母体というべき『月萌立国党』――その重鎮のひとり。

 名を、イワオ・ゴジョウ。

 その名の通りいかめしい顔と巨躯のその人は、周囲の静止をうるさいわと一喝し、こうのたまったのだ。


「お前たち、月萌杯を制したということはワシより強いということで相違ないな!

 ならばその力を今日ここで直に見せてみよ!

 さもなければ、ワシはお前たちを認めん!!」

「おう、やろうぜ!

 あ、俺とで? それともバディ戦?」

「ワシはいつでもバディ戦だからな。お前たちもバディで来い」


 ゴジョウ氏は太い笑みを浮かべた。

 手甲をはめた手をこぶしに握って見せながら。


 止める間もなかった。いや、これでいいのだ。

 イツカはおれを振り返り、おれはうなずいて『お願いします』と一礼した。


 * * * * *


 つやつやと焼けたむき出しの上半身からは、すでに湯気が上がっているようにさえ見えた。

 ゴジョウ氏は黒の単衣をもろ肌脱ぎ。おでこには鉢金ハチガネ、ボトムスは野良袴に地下足袋という、いっそ格闘ゲームのキャラのようなみてくれだ。

 もちろんけも装備もしっかりつけている。半分ほど地肌を見せる頭部に鎮座するのは、黒の柴犬の耳だ。

 ただし、こちらはピンと天に向け、誇らしく立っている。

 子犬らしくかわいく折れたミライのそれとは対照的に、ストレートな、いっそ獰猛なほどの強さをうかがわせた。


「行くぞ、『残雪』!」

『はいなッ!!』


 バシン、と手のひらにこぶしを打ち付けると、真っ白な手甲がふわりと光る。

『残雪』。彼がバディとよぶインテリジェントアームにして、天空神殿で賜った『神器』である。

 粋な女性の声で返事をし、『残雪』は力を解放した。

 雪のような白さをますます輝かせ、必殺の威力をまとう。

 ブン、とこぶしを構えれば、それだけで圧が押し寄せた。


 ゴジョウ氏は、見ため通りの格闘僧モンクだ。

 四天王のひとりっぽい風格さえ漂っているが、実際それはただの『イメージ』ではない。

 月萌国会の『風林火山』が一人。『火』のゴジョウと呼ばれる彼は、戦場に出れば無双、決闘でもほぼ負け知らずという、国会議員きってのつわものだ。

 それもそのはず。この人はノゾミ先生同様、エクセリオンの座を蹴った男なのだから。


 それでもおれたちはひるまない。あわてず騒がず、恒例の『あれ』をやった。

 イツカがおれの前に立ち、目を閉じる。

 その首で黒く輝く『ブラックムーンチョーカー』の飾りに、おれが左手を伸ばす。

 中指にはめた指輪の飾り、三日月形をしたそれを、チョーカーの三日月形の透かし彫りに、かちりとはめ込む。

 二つの三日月がひとつに合わさったとたん、生まれる白く、まばゆい光!


「『われらが神器よ、力を解放せよ! リリース!』」


 声を合わせて唱えれば、機能を一時停止したチョーカーと指輪は、それぞれのインベントリへ。

 白い光がきっぱりと引けば、制服は武装にチェンジ。封じられていた力が解放される。

 すなわち、イツカの『ソードマスター(限定)』。そして、おれの『プラチナムーン』。

 イツカがすらりと抜刀すれば、刀身のブルーラインがまちかねたようにキラキラきらめき、おれが銃を抜いてかかげた先には、大きな白銀の月がのぼる。


 まあこれ、ほんとはもう必要ないんだけれど……

 この一連の流れが動画を通じてあまりに評判になってしまったのと、『子供だけれどアイテム使って力をしっかり押さえてますよ、安全ですよ』というポーズのために、引き続きやることになったのである。


 はたして周囲からはどよめき、ため息、拍手も上がる。

 ゴジョウ氏もうむうむとうなずいている。


「うむ! その美しさやよし!

 次は力を見せてこい! 腕ずくでワシを認めさせてみよ!

 いざ尋常に、勝負ッ!!!」


 この反応、曲がりなりにもアイドルとしては、悪い気はしない。

 けれど、こう思っていたのもまた事実だ。


 こういうイベントってラノベの中だけじゃなかったんだ。

 さーやるぞやるぞとわくわく揺れるイツカのしっぽを見ながら、おれは胸の中でひとりごちたのだった。


ゴジョウさん? どこかで聞いた名前ですね(すっとぼけ)


次回、古強者との決闘。

森を展開することもできず、幻術も跳ね返すつわものに勝てるのか?

どうぞ、お楽しみに!

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