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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_41 決勝・月萌杯~『ソアー』と国立研究所の陰謀~

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41-6 マザーの裁定と勝者確定!

「ちょ、な……なんで? 体、が、かってに……?!」


 そしてとまどいはおびえに変わる。

『アクエリアス』は彼の手の中くるりと反転。彼の左腕に向けられたのだ。


「や、やめ、なにっ」


『ソアー』は抵抗を試みているようだが、右手はそれでも振りあげられる。

 どうしてこうなっているかはともかく、何が行われようとしているかは分かった。

 自傷行為によるBP獲得だ。


 ティアブラでは、とにかくダメージを与えればBPを獲得できる。

 それは地面の土などのオブジェクトや、自分自身の体であってもだ。

 さらには、受傷によってもBPを獲得できるようになるスキル『ヘイズ・ルーン』もまだ切れてない。

 つまりいま『ソアー』が自分の腕を刺せば、彼はHPダメージと引き換えに、一気に多くのBPを獲得。戦いに復帰できるのだ。


 しかし『ソアー』は嫌がり、おびえている。とっさにイツカが身を挺した。

 パン! 『アクエリアス』の切っ先をはじき、『ソアー』の腕からそらしたのだ。

 しかしはずみで、イツカは小さく傷を負う。

 真っ赤なポップアップが上がり、『ソアー』が悲痛な声を上げた。


「イツカ!!

 嫌だ……なんで? なんでイツカが刺されなきゃいけないんだよっ?!

 だってオレはもうこう……」


 残りの二文字を、『ソアー』は言えない。

 彼の唇は開いたまま止まってしまう。

 その間にも戦う力を取り戻した彼の身体は、『アクエリアス』を構えなおす。


「どうして、やめろ、やめろってば!

 おれはもうこ、……とにかくやめろ、おれは、もう……」


 叫びながら斬りかかる『ソアー』を、イツカは受け止めた。

『イツカブレード』にチカラをまとわせ、水の刃を押し返す。

 足元への鋭い蹴りをひょいとかわして、明るい顔で言った。


「やろうぜ、『ソアー』。どうせならさ。

 だいじょぶだ。俺は負けない。

 無敵コンボだろうが何だろうが、俺はここでは負けないんだ」

「『オレはこれに負けたら廃棄処分なんだ!』」


『ソアー』の口から叫びが飛び出す。

 しかし彼は、ちがう、違うと首を振る。

 剣を振るたび、脚をひるがえすたび口から出てくる言葉たちを、自分で必死に打ち消し続ける。

 対するおれたちも必死にならざるを得なかった。『ソアー』本人の意に反していても、その攻撃は生易しいものではなかったのだ。

 その威力はもちろん、斬撃にまとわされた苦痛には、今度こそ本当に涙がにじんだ。


 こんなにも痛い、理由はわかる。

 これは、『ソアー』の心の痛みなのだ。

 鎮痛リムーブ・ペインでは取り去れぬ苦しさが、胸をぎゅうっと締め付ける。

 これは、おれも、受け止めなくちゃならない痛み。

 歯を食いしばり、かみしめながらもおれはナツキを守り、イツカを支え続けた。


「ちがうんだ、いまのは『頼む、助けてください!』

 聞かないで!『死にたくない!』

 これは俺の意思じゃない『お願いですから!』……」


 最後の言葉が口にされたとき、『マザー』が立ち上がった。

 冷静な顔のまま、す、と小さな手を掲げれば、イツカと『ソアー』とおれ、フィールド上の全員の体が凍ったように静止した。


「そこまで。

 いま月萌国立工廠つき研究所より連絡が入った。

 エクセリオン『ソアー』に対し、外部からの不正アクセスが行われたことが確認された、と。

 よってこの試合は没収試合として中止。さきの第三試合を決勝として、その結果を『月萌杯』の結果とする。

 すなわち第三試合の勝者、『0-Gけもみみブラザーズ』のホシミ イツカ、ホシゾラ カナタ両名を、第三回月萌杯の突破者と認める。

 また仮名『ソアー』本人は、この試合でみせた力量を鑑み、正式にエクセリオン見習いとして取り立てることを明言する。

 ついては早めに本当の名を決めること。

 この先一生使うものゆえ、近しきものたちとよくよく話し合い、最高に良き名を選ぶべし。

 以上が月萌の『マザー』たる我の裁定である。異議のあるものはおるか」


 イツカがニッコリ笑って高々と親指を立てる。

 おれももちろん、それにならう。

『ソアー』がぺたんとへたりこむ。


 すると最初はぱらぱらと。ついで地鳴りか嵐かの勢いで、拍手と歓声がやってきた。

 祝福の花びらが降りはじめるなか、まず飛び込んできたのはミツルだった。

『縮地』もかくやのスピードで一直線。やっと自由を取り戻したもとバディを胸に抱く。

 白いステージ衣装が濡れるのも構わず、声をあげて泣く『ソアー』を抱きしめる。

 そんな二人の後ろから、ゆっくりアオバがやってくる。

 しっかりと抱き合う二人を、少し寂し気に見守り拍手を送る彼だったが、すぐにミツルに引っ張られ、二人まとめてぎゅうっとされる。


 そうしてアオバも笑顔になると、おれたちも後ろからむぎゅっとされた。

 ミライだった。ミズキによしよしと頭を撫でられながらも、泣いちゃって泣いちゃって何言ってるのかわからなくなっちゃっている。

 つづいて横からばふっと来たのはハイテンションのアスカとルナ。

 二人に引っ張り込まれてハヤトとルカ。

 それじゃあ謹んでわたくしも♪ とライムが来れば、あとはもうもみくちゃだった。

ようやく決着。

次回は種明かしとサプライズ? です!

どうぞ、お楽しみに!!

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