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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_41 決勝・月萌杯~『ソアー』と国立研究所の陰謀~

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433/1358

41-2 開幕、決勝戦

2020.11.11

やらかしてました……m(__)m

『バニティ=フェア』→『バニティ・フェア』

色欲ラース色欲ラスト

『頼む。救ってやって、あいつを』そう告げる声は苦し気で。

 それでも綺麗な紅い目は、おれたちを信じて輝いていた。


 ミツルはアオバとともに、控え室まえでおれたちを待ち受けていた。

 その後ろには、とても入りきれない数の仲間たち。


『がんばって!』『決めてけよ!』『二人ならやれるから!!』

 

 そんなエールのひとつひとつを心に抱いて、おれたちは最後の打ち合わせへ。

 控室で待っていたのは、ここまで頼りとしてきた軍師たちと、小洒落た緑の狐だった。


 行われたのはほぼ確認事項のみ。

『ソアー』の挑戦から10分後、おれたちは彼とフィールドで向かい合っていた。

 待ちきれないといった様子でさっそく言葉のジャブ。おれは笑顔で受け流す。


「よう。覚悟は済んだか、カワイコちゃんたち?」

「きみの身請けを引き受けて馬車馬みたく働く覚悟?

 残念だけど、おれたちの目標はΩ制廃止。おれたちの所有物には、なりたくってもなれないからね?」

「笑わせてくれるぜ」


『ソアー』は、にやり。

 整った口もとの笑みをどう猛に深めて、黒のクロークを脱ぎ捨てた。

 顔の上半分を覆うシンプルな白のマスクと、白い軽武装。

 かすかに金色を帯びたしろがねの髪と、黒の縁取りをかすかに宿す、真っ白な翼が照明のもとにさらされる。

 天使もかくやの輝かしい姿に、会場はため息にあふれた。


 一気に好意的になった視線の中、『天使』が腰に佩いた剣を抜けば、これまたまばゆく光をはじく。

 ほんのかすかに青く発光する刀身は、透き通るようにもみえた。


「神器『アクエリアス』。名前の通り、水の剣だ。

 ひとつ忠告しといてやるが、うっかりつばぜり合いなんざしようとしたらスパーン! だからな。

 ま、この程度はウサプリ様にゃお見通しだろうがよ」


 口調は粗暴。だが、だからこそ際立つ声の透明感。

 それは、一年前のあの試合の動画より、ますます増していた。

 だからおれはまったく自然に、このことを口にしていた。


「ご忠告ありがとう。

 それじゃあおれも、ひとつお礼をしなくちゃね。

 おれたちの手の内はとっくに解析・対策済みだよね。それじゃ、この後のことにしよう。

 この戦いが終わったら、おれたちがいつもお世話になってる歌の先生紹介するよ。

 君の声はきれいだから、歌を歌うときっといいよ」


『ソアー』はしばし、ポカンとしていたようだった。

 たっぷり2秒間の沈黙ののち、あざける調子で返してきた。


「………… ハッ。

 そんなに聞きたきゃ聞かせてやるよ。オレ様の子守歌。

 もっともそれまで意識があればのハナシだがなァ!」


 ブン、と水の剣を差し向けてきた『天使』は、笑いを含んで高らかに言い放つ。


「とっとと来いや、モフモフども!

 オレがいいっつうまで降参とかは聞かねえからなッ!!」

「俺たちのほうはいつでもいいぜ?

 降参したくなったらいつでも言えよな?」


 対してイツカは的確に威圧を切り返す。

 いや、切り返してるって意識があるのかはわからない。大画面に映るやつは、いつものニカッとした笑顔。口調も声もカラッと明るい。

 けれど、やつもまた、スパッと抜刀。

 ブルーのラインの走る刀身を解き放った。

 おれもあわせて、左のホルスターから魔擲弾銃オーブ・ランチャー『サツキ』を抜いて頭上に掲げる。


「煽ってくれるなァオイ。

 せいぜい楽しませろよてめェら!!」

「お互いになっ!」


『ソアー』が牙をむき、イツカが不敵に笑い返す。

 ちょうどそのとき、ゴングが鳴った。



「『フラッシュフット』!」

「『短距離超猫走スプリン・チーター』!!」


 前衛二人、まずは互いに距離を詰めつつ脚力強化だ。

 イツカはいつもの『短距離超猫走スプリン・チーター』、『ソアー』は地下闘技場でレイジが使っていた『フラッシュフット』。

 そうして合わせたはずの刀身は、するり、音もなくすり抜ける。

 もちろんイツカもわかっている。斬られぬように身をかわしつつ、一連の動きで『ソアー』に一撃を試みる。

 対して『ソアー』もギリギリ身をかわし、イツカへの側面攻撃を狙った。


 おれも『超跳躍スカイ・ハイ・スキップ』で機動力アップ。後衛らしく距離を置きつつ、右手でイツカに超強化のポーションを投げる。

 左手ではけん制を兼ねて『サツキ』を連射。

瞬即装填フラッシュ・ロード』で装填したボムは、フラッシュ……ではなく、アイスである。


 まえの試合でおれは、『Snowy Blue』に閃光めつぶしを見舞った。

 レイジはこれを防ぐため、『アクエリアス』を変形。水鏡を形成して逆におれたちの目をくらまそうとしてくるはずだ。

 おれはさらにそこをつき、『アクエリアス』を形成する水を凍らせてしまおうと――刀身が自在に変形するというアドバンテージを、多少なりともそいでしまおうと試みたのだ。


 しかし『ソアー』もそこは考えていたよう。水鏡の形成は行わず、イツカがおれとの間に入るように立ち回るのみ。

 そうしつつ、3Sたちを憑依させ、スキルを発動させはじめた。


「ハッ、さすがにそいつにゃ引っかからねえよ。

 セット、虚飾バニティ嫉妬エンヴィ。発動『バニティ・フェア』『影からの凝視』」


 まずは『バニティ・フェア』で能力の強制エクステンドを。

 ついで『影からの凝視』で感覚強化・弱点看破・ラックダウンをしかけてきた。

 仮面越しに見えていた金の瞳が、鋭い蛍光緑ネオングリーンに染まる。

 まあ、軽くやられた程度ではさして怖くない。そのために対策を積み重ねているのだから。

 果たして『ソアー』は舌打ちした。


「チッ、なんだこいつは。ガンッガンに属性防御デバフ防御と固めてやがって。

 しかもあれもこれも神器尽くしとか、全身ブランド野郎かよ!」

「おう、全身カナタブランドだぜっ! うさねこぶぐかいプレゼンツ!!

 いーだろいーだろー!」

「ちょ……ま、まあいいか……」


 全身ブランドルックに対する評価はいろいろあるが、ソアーはそれを利用してディスって来、逆にイツカは満面の笑みで自慢してくれた。

 これは、うれしいけどちょっと恥ずかしい。だけどまあ、それよりはすこしうれしくて……ひとことで言えば照れ臭い。

 そんなわけでツッコミをキャンセルすれば、観客席からひゅーひゅーと冷やかしが飛んできた。くそ、またこのパターンか。とりあえずそこでいやーあっついあっついとか言ってる『武具開発チーム(ぶぐかい)』メンバーどもは、後でまとめておしおき決定である。


「…………とりあえず爆発しろてめえら」


 そのとたん『ソアー』の背で、ぶわりと膨れ上がるどす黒いオーラ。

 再びラックダウンが襲い掛かってきた。

 すでに瘴気と言っていいレベルの呪わしさが渦巻くそれに、今度こそ俺たちは能動的に対策を取らざるを得なかった。


「『幸運のかぎしっぽ(エル・テイル)』!」

「『アナウサギの後ろ足(ラビットフット)』!」


 ふり、とふられたイツカのしっぽで、千年樹の琥珀の『狩人のお守り(ハンターズ・チャーム)』が輝いた。

 同時に、胸元のモフリキッドアーマーの真っ黒な毛並みに、コインくらいの白いわっかが輝く。黒猫装備専用の幸運ラッキーエフェクト、エンジェルマークだ。

 一方おれのつま先には、四葉のクローバーのエフェクトが。

 こちらには地属性強化の追加効果があるので、森を操るおれには一石二鳥だ。


「なんだなんだおめかしかァモフモフ野郎ども! そーゆーのはいーんだよ!

 反撃しろよ抵抗しろよ、そうじゃなくっちゃおいしくねェだろッ!

 セット、色欲ラスト。発動『ヘイズ=ルーン』。

 知ってるよなァ、こいつの効果。

 ダメージを『与えた』ときだけじゃなく、『受けた』ときにもBPがゲットできるんだぜ。

 さらにー、嫉妬エンヴィのチカラでBP獲得にボーナスついてるし!

 これで大技かまし放題! 『ブラッドサッカー』使えばHPだって回復できる!

 ははっ、これでオレさまは無敵だァ!

 お前らの攻撃、ぜーんぶおいしく食らってやンよ!!

 セット、憤怒レイジ。いっくぜ――!!」


 ハイになった『ソアー』は、自らコンボ効果とその利点をまくしたてる。

 さらには勢いのままにレイジを憑依させ、攻撃力を爆上げ。イツカに連撃をしかけてきたのだった。


コンボまで何とか入れた!


次回、3Sのチカラを使った『永久機関コンボ』を破れるのか? お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『ソアー』の粗暴さに対してのカナタの返しが神!! 歌の先生のくだりにジーンとしました。 三人のキャラがたっててキラキラしてますね! イツカもただ戦い好きな感じではなく、中に持っているもの…
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