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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_39 さいごの休日、そして

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39-7 月萌国の秘密(2)

 ひととおりライカとじゃれあうと満足したのか、レイン理事は無意味にイケメン全開で長い足を組んだ。


「それで、君たちの聞きたいことは何だい?

 私でよければ、わかる限りで答えるよ」

「あ、はい、それじゃあ……」


 そのまま柔らかな表情で、静かに耳を傾けてくれるさまは、文句なくイケメンだ。

 どうしてああなった、と思わざるを得ない。

 おれの問いかけを聞き終えて、彼が返した答えはこんなものだった。


「なるほどね。

 まず我々は、このリアルに生きる人間の能力に対して、何かをしてあげることはできない。

 もしもそれが可能なら、『レイン・クルーガー・タカシロ』がゲームの中での戦いすらできない、シャボンメンタル野郎であるはずがないだろう?

 我々が干渉できるのは、『ミッドガルド』に対してだけ。

『ティアブラシステム』の一部を使った試験用箱庭ゲームにおいて、特別な仕様のアバターを支給することや、成否判定に下駄をはかせることぐらいしかできやしない。

 我々の生きるリアルや、それを反映して織られる能力値を変えることまでは、したくてもできないんだよ。

 そういう意味で、『白妃プリンセス』は『作られている』ともいえるし、そうでないともいえる」


 一度息をついたレイン理事は、自らを急き立てるように素早く言葉を継いだ。

 

「ただ。私が君たちの誠実な友であるために、これは言わねばならない。

『ハートチャイルド』は、その病だけは作られたものだ。

 我々は『グランドマザー』と呼んでいるが、その存在が『マザー』のシステムに組み込んだとおぼしき、プログラムによるもの。

『マザー』自身にも、どうすることもできないものだ」


 彼の気遣いは、半分無駄で、半分奏功していた。

 彼もそれを感づいたのだろう。気遣う目でおれを見た。

 おれは、きれいな青い瞳に笑い返した。


「『マザー』にどうにもできないこと。それを、人であるあなたたちがどうこうすることはできない。

 明かされていなかったのは、機密だからでしょう?

 そんなの責められません。

 おれも、妹や親しい人たちに、もう何度もおなじ『うそ』をつきましたから」


 イツカの手が、しっかりおれの気持ちを支えてくれていることを、心強く感じながら。

 思ったことを告げ、感謝を伝え、頭を下げた。


「あなたはシャボンメンタル野郎なんかじゃないですよ。そんなやつが、誰かの誠実な友であるためにと、勇気を出すことなんかできませんから。

 今度は、グランドマザー。会うべき人を教えていただいて、ありがとうございます、レインさん」


 するとレイン理事、いや、レインさんは内側から輝くような笑みを見せてくれた。


「私も『ずっ友』のつもりだからね。

 君たちには、救ってもらったから。

 私も――名をなくし、3Sたちの依り代となったあの少年も。

 できるならもう一歩モガモガモガ」


 ……と思ったらまたライカに、後ろからがしっと口をふさがれた。


『はいは~い、イツカナちゃんへのセクハラは禁止ね~。

 ったく、おれがこんっだけ出血大サービスしてんのにま~だたりないかな~。ライカさんちょっぴりジェラシーかんじちゃうなーっ?』


 ライカはさらに、レインさんの首にもう一方の腕をまわしてがっちりと締めをかけている。

 ギブギブとその腕をたたくレインさんは心底幸せそうだが、だんだん顔が青くなっている。おれとイツカは必死で止めに入ったのだった。



 レインさんを無事に解放すると、おれたちはライカとともに『白兎銀狼』の控室へ。待ち受けていたアスカとハヤトにお礼を言って、ライカを返した。

 もっともハヤトは、ライカがヒャッハーと抱き着こうとすると『やめろ待てレインくさいっ』と言いつつライカに消臭スプレーをぶっかけていたけれど。イヌ科装備もいろいろ大変だ。

 アスカがにゃはは~と笑って言う。


「ハーちゃんもへんだよねー。イツにゃんが汗だくでとなり来ても平気なのにさー。

 ま最初のうちはあんな感じだったけど」

「えっマジ? ハヤト俺のこと汗臭かったっ?」


 イツカにえっという顔で見られると、ハヤトは慌てた様子で言葉を重ねた。


「あ、いや、それは、……親しくない奴のにおいってどうしても、警戒しちまうし、その……

 いっ、いいまはちゃんといい匂いだと思ってるからな! ほんとだからなっ!!」

「えっマジ? いい匂いなの俺ー? やったー!」


 そのままなぞのラブラブモードに突入したわんことにゃんこをしばし放置し、おれはアスカに話を振った。


「ありがとう、レインさんと話す機会くれて。

 それとその、……ミライのことも。

 アスカは、知ってたの? 自分が、……」


 アスカは、ほろ苦く笑った。


「知ってたってか、カンタンな推理だよ。

 ホントのマジに『赤龍ドラゴン』がヤバければ、そっちを適度に制御しときゃいいじゃん? 確率でもなんでもいじってさ。

 つまりは『白妃おれたち』のほうなんだよ、本当の危険物ってやつは。

『愛する者の枷である』という負い目(あしかせ)によって、この月萌に縛られてるのはね。

 ミライは賢い子だ。おそらくうすうす、気づいているよ」

ひとつ秘密があかせて一つ肩の荷が下りた気がします。


次回、ソナタちゃんの手紙です。

どうぞ、お楽しみに!

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