38-7 龍虎相対! マウントブランシェのエクストラバトル!!
所用で遅れました!!(スライディング土下座)
『よくぞ来た、勇者たちよ。
ほんとうに、二人でよいのか?
われらミッドガルドの双璧を担う女神を相手に、それは無謀と言わざるをえぬぞ?』
「そうかもな。
でもそれができなきゃ、『月萌杯』でなんか勝てない。
一度や二度、もっと負けたってかまわない。全力で相手してくれよ!
土曜日、どんなことがあったって勝てるように。
みんなの未来をあきらめないために!!」
『よかろう。
ならば、今宵は勝つまで寝せぬからな。心して来いッ!!』
「シャスッ!!」
うん、どうみても楽しんでる、この二人。
かたや、青と銀水色の竜のヒレを各所にあしらって、いつもよりちょっと戦士っぽくドレスアップしたシャスタさま。かたや見慣れた黒フカ+背中に制御翼装備のイツカ。
シャスタさまがラスボスムーブをかませば、イツカもまるで主人公のように熱く応じる。ぶっちゃけノリノリのイケイケである。
『ごめんねカナタ。あんなこといってるけど、そこそこの時間には寝せるようにシャスタには言ってあるから。
もしも聞き分けなかったら、私が寝せるから安心して?』
「あはは……そうならないよう、がんばります」
一方のエアリーさんは今日も通常運転。金と白を基調としたドレスアップが、いっそコスプレにすら見える勢いだ。
でもおれたちは知っている。この人はできるのだ。武闘派バリバリのシャスタさまを無理やり寝かせるとか。それもいつもの笑顔のまんまで。
それでも、おれたちは彼女らに勝てるようになるために、ここに来た。
そう、たとえ何かの間違いで、エクセリオンと連戦する羽目になってしまったとしても、おれたち二人で勝てるように。
それがただの無謀でないと思える力は、この手にある。
イツカには、神剣イツカブレード。そして、そのチカラを100パーセント引き出す『ソードマスター』の特性。
おれには、神の域に手の届く錬成を可能にする『プラチナムーン』の特性。そして、その力で生まれ変わった、二丁の魔擲弾銃。
神器として得た名は、神銃『サツキ』『ウヅキ』。
フユキとともに可能性を探ったトンデモ機能を詰め込みまくった、夢の装備だ。
もちろん『手にしたものにプラチナムーン級の加護を与える』という特性もフェイクでついている。
ともあれ、竜虎ならぬ水龍の女神と黒猫騎士はもはや『ねーねーまだ? まだー?』状態だ。
おれはたまらず物申した。
「ちょっとイツカ、そんなおめめキラキラでこっち見ないで! やりづらいから!!」
「へ、なにが?」
黒猫野郎はきょとん。説明しろってのか、これを。
「なにって……もういいからこっち! 首!」
おれたちふたりの特性は、いまはイツカの特性『ブラックムーン』により封じられている。封印を解除するためには、イツカの首のチョーカーと、おれの指輪の飾りをはめ合わせなければならない。
アスカが部分的にリークさせたこの演出には、やはりというべきか、ものすごくいろんな解釈がネット上でされていた。
おかげでただの装備解除の『儀式』が、なんだかアヤシイものに思えてきそうだから勘弁してほしい。
やつめは気づいた様子もなく、目をつぶって首を出してきた。
おれはひとつ深呼吸すると、チョーカーのかざりに設けられた三日月型のくぼみに、おれの指輪の三日月飾りをはめこむ。
とたん、あふれるまばゆい光と力。
決めてあった通りにおれたちは、声を合わせて唱える。
「『われらが神器よ、秘められし力を解放せよ! 解呪!!』」
これはあくまで『おれたちが神器のパワーで『ソードマスター』『プラチナムーン』の力を一時的に発揮するようになってますよ』というフェイクのためだ。
大仰なお芝居ではあるが、『月萌杯』出場を取り上げられないためには仕方ない。
ふたりの女神もそれに合わせてくれている。
『ふむ。姉上に授かりし神器の力、ようやくモノになったようじゃな。
ならば来い。作り手を斃してこそ真の神器。われらの全力、受けてみるがいい!!』
「それでは用意、はじめっ!!」
エアリーさんがひとつうなずいてみせれば、立会人としてつきそってくれたミライが、すかさずはじめの声をかけてくれる。
かわいらしくも堂々としたその姿に、ミライの成長を感じてほのぼのしてしまったおれだが、前衛たちは次の瞬間、風になっていた。
女神たちは今回、龍化しない予定だ。パワーはあっても小回りの利かないドラゴン・フォームは、おれたちに対して相性が悪い。よって、スピードと鋭さを重視した人型で相手してくれている。
これまでならば『儀式』をしていたフェーズで、ポーションをめっちゃ飲ませていた。しかし今回は必要ない。
ここに来る前におれたちは、牧場でひつじミルクを飲んできた。つまりもはやフルチャージ済みなのだ。
「エアリーさん。いえ、エアリエイルさま。
おれたちも始めましょう。
今回は使われないんですか、豊穣の角を」
『ええ。ここまで来たら、あんまり意味ないから。
さてと、ひさびさのバディ戦だし、プリーストっぽいことやってみようかしら。
いくわよー、星域展開!』
やはり初手できた。
聖なる加護を広げ、範囲内の味方に各種強化をかけ続ける神聖魔法の、星属性バージョン。
戦争イベントで儀式魔法としてお目にかかる珍しい魔法といったレベルのレアものだ。
なぜなら、TP消費が半端ない。
しかしそれだけの効果はある。星の輝きのふるなかで、劣勢となったイツカが『グリードの腕甲』を使い始める。
それでも上がる上がる、赤いダメージポップアップ。
「イツカしっかりっ! 今っ!!」
おれの両手に『サツキ』『ウヅキ』が現れる。
同時に『強化・回復のグレネード(猫用)』が放たれる。
これらはなんのへんてつもない『抜打狙撃』。ただし、BP消費なしの瞬時発動。『サツキ』『ウヅキ』に付与された特性によるものだ。
この二丁の力はそれだけではない。
イツカの頭上に白の回復ポップアップが上がるのを待たず『サツキ』のみ『瞬即装填』。
女神エアリエイルにむけ、『抜打狙撃』。撃ち放つのは、超圧縮タイプのギガフレアボム!
もちろん、星女神の片手の一振りで逆回しのように打ち消されるが、『星域展開』に負荷をかけることには成功した。
一瞬の揺らぎを突く形で『卯王の薬園』をねじ込む。
強引に展開し、イツカのための小さな木立をしつらえた。さあ、ここから反撃だ。
おれは昨晩練り上げた作戦を、実行に移すことにした。
(三度見)よし、夢じゃない……
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