38-6 『騎士団』による突発慰安会!
連れられて行った先は、『騎士団』の集会所。
整えられたテーブルには、創始者四人組をはじめとした、『騎士団』のメンバーたちが待っていた。
その数ざっと、十数人。
なかには『うさねこ』と兼業で所属しているアオバとミツル、ハルオミとハルキくんもいるし、ほかもみんな知らない間柄じゃない。
「どうぞこちらへおかけください!」
「お食事のメニューは何にしますか? 学食からとってきますので!!」
「よろしければこちらどうぞ、手作りのお菓子です!」
「あの、えっと、えええ?
あのっみなさんこれはいったい何が……」
そしてみんな笑顔で、下にも置かぬおもてなし。
なんだろう、一体全体これは何が。
「イツカさんから頼んでもらえたんですよ!
カナタさんがバトルとメンテでお疲れだから、みんなで癒してやってくれって!」
「いやーほんとこんな機会がもらえるなんて!」
「大恩あるおふたりに、俺たちまで頼ってもらえるなんて……!!」
説明するみんなの目はキラッキラ。アオバたちもニコニコ。
かつてシオンが、『無星の身の上から救ってくれてありがとう』と目を潤ませてお礼を言ってくれた時のことを思い出す。
「だ、大恩だなんてそんな……
ミズキたちのがもっともっとみんなを助けてくれてるじゃん。おれたちはそのお手伝いをしただけだよ」
するとミズキがちょっとお茶目に笑って言う。
「その俺の命運をつないでくれたのが、ふたりなんだよ。
『きみたちはおっきな迷いネコを餌付けしちゃったんだ。あきらめてなつかれてよ』、だっけ?
おれたちにとってあの一万TPのありがたみは、一生の宝物。それをくれたふたりも、おれたちの宝物なんだ。迷惑だったかな?」
「そんな、とんでもないよ!
こちらこそありがとう。おれたちのこと大切に思ってくれて、ほんと……うれしいよ」
ミズキとおれで、握手を交わせば上がる歓声。目元がじわっとしてきたので、あわててイツカに文句を言う。
「もっもう、びっくりしたじゃんかっ。
いきなり二人来たと思ったらみんな待ってて! こんな歓迎されちゃって!」
だが、やつはニカッとわらってこうのたまう。
「疲れ吹っ飛んだだろ?」
「いろいろぶっとんだよ!!」
「ふふっ。さ、ふたりともかけて。
疲れたら切り上げて、ミライとお風呂に行ってくれていいから。
今日は二人のための慰安会だよ。楽しんで」
「え、ちょ、俺もゲスト側っ?」
「当然!!」
ミズキが優しくほほえんで、ミライがえへっと照れて笑って。
イツカがあわてて、みんなが声を合わせて。
急ごしらえのささやかな、しかし楽しい会食が始まった。
ハイレベルなバトルの緊迫感もすっかりほぐれたおれたちは、あれやこれやとしゃべりつつ、お茶にお菓子に料理にと舌鼓を打った。
結局、宴は一時間以上に及び、ミズキの判断でいったん解散。
おれたちはミライとともに、大浴場に赴いたのだった。
『掃除なんて、お気を使わないでくださいよ!
むしろお背中流しに行きたいくらいなんですからねっ?』
『ブラッシングとか肩もみとか、ご用命なら呼んでくださいっ!!』
『お夜食もおつくりしますんでっ!!』
『子守歌も御所望ならっ!!』
なんて、優しい(※お背中は自分でとお断りした)言葉をもらって。
みんな仲間であるためか、人数が少ないためか、それともミズキたちが優しく見ていてくれたためか。RDWで歓待されたときのような気疲れはなかった。
イツカがにぱにぱのたまった。
「なあカナタ、これってハーレム?」
「絶対違うからっ!!」
するとミライが可愛く笑ってこう言った。
「えへへ。きもちはハーレムでもいいかもねっ。
それがだめなら、騎士団かなっ!」
「違いねえ!」
イツカがミライをわしゃわしゃ撫でて、ついでにおれまでわしわし撫でて。
そんなおれたちを、すれ違う人たちが優しく見てくれる。
ときには、「がんばって!」と声をかけてくれて。
入学が決まったときは、こんなことになるとは想像していなかった。
ミライやソナタだけじゃなく、たくさんのひとたちの運命を担って。
たくさんの人たちが、おれたちをあたたかく応援してくれて。
「『月萌杯』。絶対勝とうね。カッコよく」
「おうっ!」
今日のバトルはあくまで辛勝。それよりはできるなら、もっとカッコよく勝ちたい。
『国内最強』を相手に無謀かもしれないが、それでも気持ちはそれを目指したい。
今日はリフレッシュして、明日の午後からはマウントブランシェ。
隠しダンジョンの女神ふたりの隠しモードと、最強のひつじミルクで、ほんとに最後の追い込みだ。
おれはぐんっとのびをして、もう一度気合を入れなおした。
小さいころ、親からは常に「早くしなさい!」って言われてました。(遠い目)
ブックマークありがとうございます。百件まであと一件です……いやいや、無念無想!
次回こそマウントブランシェです。お楽しみに!!




