38-2 七色の恐怖? アカネさんの新技炸裂!!
超絶遅くなりました!
誤字等、見つかり次第修整しますm(_ _)m
2020.10.15
ちょこちょこ修正いたしました……orz
試合まえの取り決めで、おれとアカネさんは30秒間、なにもしないことになっている。
地中に植物の根を這わせたり、口に出さずに事前詠唱をしたり、そういうのは一切なしで、だ。
ひねくれもののおれだけど、嘘のつけないトウヤさんや、邪気なくお世話をしてくれるアカネさんを欺く気にはなれない。素直に両手を垂らして待機した。
もちろん、指にリングはない。イツカの首からも、チョーカーは姿を消している。
この部屋なら、余人が紛れ込むことはない。イツカもおれも、全てを出し切ることができる――というかむしろ、出しきらなければ同じ土俵にすら立てない。
トウヤさんは『ソードマスター』を持っているし、アカネさんもまた、プリーストとしての最高ランク『アーチビショップ』なのだ。
対するおれたちは、『ソードマスター』『プラチナムーン』を得てまだすこし。
普通に考えて、これは勝てない。全力で負けて学ぶ、今日はそのための場だ。
もっともイツカは明らかに勝つ気しかなさげ。トウヤさんより頭半分は低い身長差をものともせずに、さかんに斬りかかる。
技量はもちろんトウヤさんが上だが、その勢いは明らかに上。
「いい勢いだ」
トウヤさんの声は小さく、しかしおれでもわかるレベルで弾んでいる。
「あざっす!」
イツカも笑顔で返す。
よほどのことがない限り、イツカは明るい笑顔で楽しげに戦う。
それは、『ソナタを救う』という使命を得てからも変わらない。
好きなのだ、バトルが。
バトルを通じて、楽しむことが。
右に、左に、また右に。二人は幾度も跳ね、踊るように位置を入れ替える。流れるように剣を合わせてはまた離れる。
ノゾミ先生との仕合よりはずっと荒削り。けれど、バディの贔屓目もあるのだろうが、軽やかで、とても楽しい感じ。
危うく見とれかけたおれをつなぎとめたのは、耳の中に響いた叱咤――『コラッ! しっかりなさいカナタ。三十秒はもうじきよ!!』というバニティの『声』と、胸の中で焼けるおもちの感触。
「ねーねーカナぴょ〜ん、ヤキモチやいてる?」
と、アカネさんが笑いかけてきた。
「え、いやその……えっと、それなりには……」
「だよねだよね! あたしもだよ〜!」
予想外の問いにしどろもどろ返せば、いい笑顔が帰ってくる。
「それじゃーさ、あたしたちもそろそろはじめよっか? そんでヤキモチ焼かせちゃお!」
「そうですね、おれたちも後衛どうし、楽しみましょう!」
さあ、約束の三十秒はもう過ぎた。ここからはガチの2on2だ。
「いっきまーす!『レインボー・スプラーッシュ』!!」
「『卯王の薬園』!!」
アカネさん、楽しげに日傘をかかげ、虹色に輝く噴水を天井めがけ吹き上げる。
『レインボースプラッシュ』。各種補助効果をランダムな色の水に割り当てぶちまける、トンデモやばい覚醒技だ。
おれはとっさに森を展開、謎の色水を遮りながら、イツカのためのステージを作り上げようとした。
「か〜ら〜の〜、ていっ!『ロリポップ・シャワー』!!」
しかしアカネさんは軽やかに地を蹴ると、自分が作った噴水を一気に追い越して天井付近に陣取り、あの超絶破壊力の必殺技をぶちかましてきた。
地上に降り注ぐのは、予測もつかない効果を帯びた、一発一発が確実にメガ以上の効果を帯びたボムの雨。
「ちょっわっぎゃあああ?!」
イツカが悲鳴をあげ、おれたちはてんでに避難した。
『瞬即塹壕』で地下へ。
それでも、腹に響く轟音。
これがアカネさんの新技。やばい、ヤバすぎる。
トウヤさんさえ一目散に避難するような技に一体、どう対抗すればいいんだ。おれは必死に頭をひねった。




