4-7 クラフターのココロ、カナタのキモチ
その後すぐ、おれたちは記者会見を受けた。
いろいろな質問に交じって、錬成魔術を使わなかったことについてもツッコミを受けた。
だが、かわすのは簡単だった。
『だって、おれに『許された』武器は銃一丁、ですよね?
なのに錬成魔術使っちゃったら、興ざめかなって。
イツカの鎧を脱がせられなかったのは、そういう意味で反省点ですけど』
『まってあの下俺装備なかった! 脱がされたらマッパだから! 脱衣ショーになっちゃうからっ!!』
……けれど、会見にはそれなりの時間がかかり、結局その日おれたちは、ミライ探しには出られなかった。
しかも、おれたちは即時昇格という事で、速攻寮を移らされた。
学園メイドのみなさんがスパパパパッと作業をしてくれたとはいえ、その間もちろん部屋は使えず、やむなく学食に出向けばやじうまに囲まれ……
結局さわぎは『青嵐公』先生が(あのにらみで)鎮めてくれたからいいようなものの、部屋に戻ったおれたちはどっと疲れてへたり込んでしまったのだった。
幸い、明日は休日。あとは明日に回して、おれたちはもう寝てしまうことにした。
イツカを先に風呂に入らせ、後からおれが寝室に入った。
もうやつは寝ているだろう、そう思っていたら、なんと起きていた。
パジャマに着替えたやつは、自分のベッドに腰かけて、じいっとおれを待っていた。
「どうしたの、寝ててよかったのに」
「いや」
やつは小さく首を振って立ち上がる。
そしておれをまっすぐ見つめて、深く頭を下げてきた。
「ごめん。昼間のこと。
俺、ホント無神経だった。
いくらなんだって、投げなくってもよかったんだ。本当に、ごめん」
「そうだね。
でも、もういいよ。
イツカはわかってくれて、謝ってくれた。
……それに、あのありがとうはほんとだから」
「えっ?」
「だってあれってさ。
デビュー戦より愛用の剣より、おれを選んでくれたってことじゃん。
クラフターとしては、確かにカチンときたけど……
バディとしては、こんなうれしいことってなかったよ。
ありがとうイツカ。これからもよろしくね」
おれが差し出した右手に、イツカは右手を、ついで左手を重ねてきた。
「ああ。こっちこそありがとう。
これからもよろしくな!」
おれもそこに、左手を重ねた。
両手でぎゅっと、握り合うように握手をすれば、体の奥から、心の底から、力が湧きあがってくる感じがした。
そうだ。イツカがいれば、だいじょうぶ。
イツカがいればきっと、この先もなんとか、やっていける。
きらきらと輝くルビーの瞳を見ていると、なぜかそんな気がしてくるのだ。
身体も、心も疲れていた。
今後の課題も――たとえば『ミセモノバトル』との向き合い方など――まだまだあった。
けれど、気分は爽快だった。
「よし、あしたもがんばろう!
おやすみ、イツカ」
「おやすみ、カナタ!」
おやすみを言いあって、ふかふかの布団にもぐった。
ふわふわのまくらに頭をのせれば、あっというまに心地よい眠りがおれを包んだ。
2019.11.14
微修正しました。
……おれたちはもう寝てしまうことにしたのだった。
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……おれたちはもう寝てしまうことにした。




