Bonus Track_4_5 戦い済んで、上の方では~アスカの場合~
「あーははは! あーははは! ひーおかしー。
つまりこういう趣向だったわけねー。やるじゃんノゾミちゃん」
「うふふ……どうなることかと思っちゃった。
ふたりが仲良しに戻れてよかった~」
三ツ星用シートのどまんなか、『しろくろウィングス』の二人が笑っている。
白と黒で構成された、闘技用の衣装を着て。
制服ではなく、露出が高いそれを着ているのは、カメラ映えのためか、それとも。
対照的にハヤトは、むっとした表情で立ち上がる。
思い出したのだろう――僕たちの初試合も、これと同じだった。
相棒同士による、たちのわるい『ラビットハント』だったことも。
にもかかわらず、うさぎが猟師をすっかりと手玉に取ったことも。
あれからしばらくハヤトは、いつも以上に仏頂面だった。
『青嵐公』『月閃』につづく正統派グラディエイターを目指していたやつにとっては、少なからずダメージだったのだから、無理もない。
結局その後も、僕との試合は毎度コミックショーになり、『剣狼ハヤト』が築き上げたコワモテイメージは、そのたびギャップ系の笑いに変換されてしまうわけなのだが……
ともあれ、いまの僕は二ツ星。このシートにいていいのは、あくまでハヤトの『エキュパージュ(おまけ)』としてだ。
僕はおとなしく、ハヤトの後を追いかけることとした。
三ツ星シート用の出入り口を入る前に、もう一度VIPシートを見上げてみる。
やけにあわただしい様子を見せていたのは、統括理事会のお偉いさんたち。
「キツネを呼べ! あのキツネをッ!!」と怒声を上げるおっさん、なだめるおっさん。バカ受けしてるおっさんに、びみょーな笑いを浮かべるおっさん。
この距離なら一発で仕留められるか。一瞬そうも思ったが、あれらは単なるくぐつだ。無駄弾を使うのはばからしい、と思いなおす。
驚くべきことか、当然というべきか、今日はエクセリオンがほとんど勢ぞろいしていた。
ピンクの甘ロリツインテにゃんこは、デザイナー仲間のアカネちゃん。
小洒落た緑のきつね男は、トップモデルのL-KA。
優雅さとワイルドさを兼ね備えたブルーのマーメイドドレスは、女子競泳の星オルカ・フジノ。
トウヤ・シロガネはというと、やはりそこにはいなかった。
視線を走らせればすぐ見つかった。一般観覧席の中にいるサンドブルの骨メット。
あれで変装だと、目立たないと思ってるんだからなあ……面白いから修正しないけど。
代々高天原に住まい、エクセリオンを輩出する名門、ソレイユ家の人々もいた。
女性陣はヴェールで顔を隠し、表情はうかがえない――宗家令嬢(姉)以外は。
彼女は、いましもバトルフィールドに入ってきたからだ。
一世風靡のアイドルエクセリオン、レモン・ソレイユとして。
レモン・ソレイユがノリノリトークを終え、ききおぼえのあるBGMが流れるはじめるころに、僕たちは闘技場を出た。
ハヤトはこっちを見ないまま、むっとした声で言う。
「お前、どこまでしたんだ」
「えー? 耳モフとヒーリングだよー。マジだって。
あっごめーん、イツにゃんのスポドリ強奪したからー」
「……
バカなことは考えるなよ、いいな」
我が相棒はでっかいため息をついてそういった。
そしてぽい、と消臭スプレーを投げてきた。
「いや、まじにそんなにゃんこくさい?」
今度はやつは答えなかった。
ただ、ふさふさとしたイヌ科のみみしっぽだけが、今日も不機嫌な角度でわさついていた。
明日はイツカナの短い試合後パートです♪
よろしくお付き合いくださいませ~
10/24 8:56くらい
投稿して、改めて見たら誰視点かわかりづらいので、サブタイに入れました。すみませんでしたorz




