35-1<Root_Orange_1> そらのかなたでシュラババンバン!(3)
基本的にこの隊は、イコール奥殿のバトルを行うパーティーであるといってよかった。
前衛にイツカ、ミズキ、ハヤト。
遊撃がおれとルカ。
後衛プリーストがミライ、ルナ、アスカ。
今回も3Sのみんなには来てもらっているし、ライカもハヤトの剣として参戦だ。
黄金の双頭龍戦のメンツから、アオバとミツル、ケイジとユキテル、ニノとイズミがいなくなった構成、といえばいいのか。
最初の二人は第一パーティー、つぎの二人は第二パーティー、最後は今回お留守番だ。
本当を言えば、第一パーティーのレン、第二パーティーのクレハとチナツにも今回は休んでいてほしかった――というのもうさねこの専業クラフターたちは、おれたちのための武具・道具開発や、その関連での業務引継ぎで、特に忙しさが増していたから――けれど、『鍵』を提示しに来なければならないので、仕方がなかったのだ。
はやく強くなって、月萌杯を突破して。少しでも休ませてあげたい。
いや、今は、はやくイベントクリアすることで、か。
けれどまさか、このときにはおれたちの誰も、思いもしなかったのである。
この場に来たことで、かれらが非常に重要なイベントに遭遇することになるなんて。
とりあえず目の前の問題は、ハヤトだ。
魔物がくればしっかり戦ってはくれるのだが、どこかうわのそら。
アスカやおれたちが話しかけても、ライカがちょっぴりきつめにおちょくっても「……おう」とか「ああ」しか返ってこない。
それでも奥伝門前の間にはたどり着けたのだが、そこでアスカが言いだした。
「ハヤト。
悪いけど、この先のバトル。君は外れてくれないか」
「ああ。……はっ?!」
ぼうっと返事をしてしまってから、ハヤトは我に返る。
ちょっと待て、とアスカを見るが、アスカは容赦しない。
「はい、聞いた。
控えの間でみんなと待ってて。そこは安全地帯のはずだから」
「ちょ、いや、ちょっと待てアスカ! 俺がいないと前衛が」
「チアキとトラオが入ってくれることになっただろ。心配ないよ」
「いや、それは、……そうじゃないとは言わないが」
「『ハブられる程のことをしたか』って?
しちゃってからじゃ遅いんだ。
今回は失敗できないミッションだ。これだけの人数でミッドガルドにはそうそう来れない。予算的にも、スケジュール的にも。
それを考えれば、今の状態の君はラストバトルから外さざるを得ない」
冷静に、軍師として、リーダーとしての顔で説くアスカ。
ハヤトは少し鎮まったのか、先ほどよりは静かな声で、仕切り直しの質問を口にした。
「アスカ。お前は……」
「おれは行くよ。
心配ないって、みんな信頼できるメンツだろ?
いま君が解決すべきミッションはこれじゃない。
冷たいようだけどいまは少しでも、気持ちの整理をがんばってほしい」
アスカはやや芝居がかった様子で歩を進める。さりげなく、絶妙な距離を取る。
「おれならすぐに戻るよ、心配しないの」
そして微笑みだけを投げかけたとき、横合いから青い光がさしてきた。
みれば、おれたちがやってきた扉と同じ壁面、少し離れたところに、青く四角い光がともっていた。
おれたちの見る前で、光は蒼の扉となる。
口を開けた扉からわらわらと入ってきたのは、「えっ、でも」と心配げに後ろを振り返るチアキと、チアキをなだめすかして連れてくる第一パーティーのみんな――ただし、レン以外の。
気になったおれたちは、蒼の扉の向こうをのぞこうとしたけれど、扉はすぐに固く閉ざされてしまう。
「ねえチアキ、レンは?」
「レンは、シャスタさまに呼び止められて、さっきの広間に残ったの。
むちゃなこととか、失礼なことしないか心配……」
チアキはしゅんとシェルティーの耳を折っている。
ルカが驚きあきれた様子で問う。
「ええと、やられたりしないか、とかじゃなく……?」
「ううん、それはたぶん、だいじょぶ。
僕にはわかるの。シャスタさま、レンのことだいすきだもの。
レンも昨日テラフレアボムの最新型用意してた。いまならわかる。あれ、シャスタさまのためにつくってたんだ。
……僕、結局レンの役に立ててないや。
テラの試し打ちだって、頼まれてないし。
さっきも、いいからって部屋を出されちゃった。バディとして、役者不足なんだ……」
いつになくしょんぼりと、悲しいことばを連ねるチアキ。
そんなことないよ、このあとのバトルのためだから、という言葉も、チアキの憂いを晴らしてはくれない様子。
最後にシャシャさんが「ちょっと、二人だけで話させてほしい」と申し出て、二人は部屋の隅っこへ。
おれたちは盗み聞きをしてしまわないよう別の隅っこで、第二パーティーを待つことにした。
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次回もカナタ視点で続きを。一気に二人分解決編です。おたのしみに!




