34-6 剣の改造となでなでと!
チアキたちと共にコールをかけてみると、エアリーさんは二つ返事でOKしてくれた。
『嬉しいわ! もちろん大歓迎。
ひさしぶりに女神のお仕事もできるのね。それも相手があなたたち。
いまから楽しみよ。予定が本決まりになったら連絡ちょうだい。
ホットケーキにミルクアイス、クリームパフにチーズケーキ。
レオナちゃんたちとめいっぱい腕を振るうからね!』
そういうことなら、おれたちも礼を尽くさねばならない。
防具・アクセサリーは今、みんなのおかげで最先端の状態。あまり手を入れるところはない。
おれの銃も、これ以上いじるところがない。
残るはそう、イツカブレードだ。
イツカブレードは、卒業試験(実技)のときに、またしても折れてしまった。
いっそちょうどいいからと、学科試験勉強中にシオンとフユキに強化・修復してもらっていたのだが、これをさらにもう一度見直した。
この際、強度を考えて、刀身に嵌め込まれたシグナル鉱石――イツカのパワーを受けて、青から赤に色を変えるやつだ――を外すかという話にもなったが、イツカとデザイン部会からストップがかかった。
色が変わんないとさびしい。
イツカといえば、ぴょーんときて赤くなった剣でドーン。そのイメージは崩さない方がいい、ということで。
イツカブレードのトレードマーク・ブルーラインが消えるのは、たしかにおれもさびしい。
そうだと思い立つ。せっかくイツカのパワーに反応するなら。
ためしに提案してみると、満場一致で採用。さっそく着手した。
まずは設計図とデータをもとに、シオンに構造計算の裏付けを出してもらう。
その間、フユキとおれは新たなパーツをそれぞれ錬成・加工。
ちょうどパーツが出来上がったころに、シオンが走らせていた計算も終わった。
「だいじょうぶだよ、これでいこう!」
可愛い笑顔と心強い言葉に癒されたら、いよいよ本体だ。
シオンとフユキに手ほどきしてもらいつつ、おれは作業を開始した。
まずはイツカブレードを分解。作業台の上で鞘から抜き、柄頭と隠しピンをはずし、柄と刀身を分離。
そうして刀身を柄がわにそっと傾ければ、樋――刀身中央に刻まれた溝から、透き通る青の直方体が滑り出してくる。
厚み7mmほどのマッチ箱ほどのブロックが、両面分あわせて30個。
これが、赤変する青い部分の正体。シグナル鉱石だ。
まずはこれらをすべて、錬成陣を使っての加工で、半分の厚みに切断。
剣の表面側の半分は、のちに予備ぶんを作るための素材としてキープし、奥側のものだけ刀身の溝に嵌めなおす。
その上に、先ほど錬成・加工したパーツの一つ、透明なシグナル鉱石のブロックをはめ込んでいった。
こっちのシグナル鉱石は、これまでより強い――ハイパー以上の技を使う程度のパワーがチャージされたときに、はじめて光るようになっている。
二種類のシグナル鉱石で刀身の溝をもとのようにぴっちり埋めたら、刀身と柄をはめ合わせ、元の隠しピンと、あらかじめ作っておいた新型の柄頭でしっかり止める。
この柄頭は新パーツその2。『修復』の魔石をはめて使うようになっている。魔石のチカラは、イツカのパワーチャージと、剣の構造がある程度以上の圧力を受けると発動するようにした。
これで、魔石を無駄遣いせず、剣の破損も防げるというわけだ。
仕上げとして、刀身表面からわずかに飛び出たシグナル鉱石を、刀身表面にあわせて丁寧に削り、磨く。
データ上、前とほぼ同じ形になったら、イツカにテストしてもらった。
鞘への抜き差し、振った感じ。シミュレーターを使用しての模擬戦テストもすんなりパス。
やつはすっかりニコニコだ。
「ふあー。うれしいなマジー! なんていうかこの安心感!
やっぱ折れると気持ち的にこう、来るものあるしさ。
……まあ、俺のせいなんだけど。
トウヤなんかと比べりゃ、マジで雑だよな、使い方。
その点は、……うん、ごめん。悪いと思ってる」
けれどふいに、頭を下げてきた。
おれは不意をうたれ驚いてしまう。だって。
「お前はそんな雑じゃないよ?
あっちは刀、こっちは剣でそもそもが違うんだし、……
ていうか、おれの腕が、未熟だったんだよ。
むしろもっとはやくこうして、仲間に助けを求めてれば、きっと三回目はなかった。
ごめんねイツカ。ごめん」
申し訳なさがこみあげて、おれはイツカに頭を下げていた。
と、ぽんっと大きな手が、頭に乗っかる。
えっと思って顔を上げると、フユキだ。
「実技試験で折れたことは不可抗力だ。と俺は思う。
『青嵐』が別次元すぎるんだ。
たとえ俺たちが手を入れていたところで、あの結果は変わっていなかったはずだ」
シオンも背伸びしてイツカを撫でながら言う。
「そうだよ。
思い出して。オレ、ちゃんとシミュレーションしたでしょ?
カナタの設計も、イツカの使い方も、現状のほぼベストだったよ。
イツカのためにだけつくった剣。カナタだけを信じてふるう剣。子供のころからずーっと磨いてきたコンビネーション、オレ、正直うらやましい。
オレもソーやんの剣、作って、メンテしてるけど……この領域にはまだまだいけないもの」
可愛らしく黒うさ耳をたらして、ちょっぴりさびしんぼモードのシオン。
そんなシオンを、今度はイツカが撫で返す。
「お前たちはお前たちでいいコンビだぜ。
むかしの俺たちよかずーっとうまくやってるし!」
「ってかはじめのころのイツカ、ほぼほぼモンスターに突撃しかしてなかったもんね……むしろこいつがモンスターかくらいの勢いで」
「ひどっ!」
イツカがペタンと猫耳を折れば、シオンは謝りながらも大笑い。
「ぷふっ、あはは!
ごめんね、でもなんかすっごい目に浮かぶー!」
「『空跳ぶ子猫』なら許せるな!」
フユキももはや猫好き全開でニコニコ。
身の内に潜むナツキとうまくやれてなかった頃のフユキは、こんなふうに気持ちを素直に表すことはなかった。
そのころよりずっと幸せそうな表情に心なごみながら、おれは真情を吐露する。
「たしかに可愛いは可愛いけど、世話焼けるよほんっとに。
おれもう何度ブチ切れたことか」
「アー、ソノセツハドウモ、スミマセン……。」
するとイツカがふたたびガクッとうなだれて詫びを入れてきた。よしよし、わかればいいのだ。
今度はおれがイツカを撫でてやる。
「繰り返さないならいいよ。終わったことだしね」
「……サンキュな」
と、シオンがフユキに歩み寄り、ちょっとかがんで、と言って背伸び。
そうしておもむろに、フユキの頭ををなでなでし始めた。
「なんだ、どうしたシオン?」
「みんななでなでされたから、今度はフユキのばん! ねっ?」
「……ありがとう、シオン」
無邪気なシオンの笑みに、フユキの頬がやわらかくゆるむ。
するとイツカもシオンに続き。
「そーいやフユキって撫でられるより撫でる方だもんなー、背でかいし。よーし俺もー」
「お、おいイツカ……なんだ、照れるな、これ……ってちょ、おいカナタもか?
ったく……。」
もちろんおれも、それにならった。
なぜかナデモフマシマシになってしまった。反省はしてい(ry
次回、さあ『もふもフィールド』……ごほん、マウントブランシェへ。
お楽しみに!




