34-5 隠しダンジョン修行計画!
「よっしゃー、ふたりともとってもかわいいよ~。
念のため明日着たところでまたチェックに来るから。それまではだいじにインベントリにしまっといてね。
それじゃっ!」
ところ変わって、アスカの部屋で。
アスカを筆頭としたデザイン・アイテム部会のメンツの前で、アカネさんはおれたちに新作のスーツを着せてくれた。
何か所か小さく修正を入れるとうんうん、と満足げにうなずき、装備解除してインベントリへいれてくれて。
そのまままっすぐ部屋を出ていった……そう、サラッと窓から。
以前もこれ、見ているのだがやっぱりシュールだ。
と、それよりまずは。
おれは窓の方を見たまま黒猫しっぽをピコピコしているイツカにくぎを刺しておく。
「スキル使ってなければ確かに校則違反じゃないけどさ。
良い子のみんなが真似しそうだからやめようね、イツカ?」
「ファッ?!」
驚くイツカ。どうやら不意をつけたらしい。ちょっと嬉しい。
アスカは笑って言う。
「まー靴をどうするかってモンダイがあるんだよねーこれ。インベントリにいれときゃいいっちゃいいんだけどさー。
……ねっハーちゃん?」
「お、お……おお……」
うわのそらのハヤト。アスカに大きめの声で話をふられ、慌てたようすであいづちを打つ。
「うーん。ハーちゃん、一度走っておいで。その間の結果は後で共有するから。
ライカ、どーしてもなら手合わせしたって」
『ういー。ほれいくにゃーハーちゃん』
「あ。ああ……」
アスカのお達しを受け、ライカに連れられて出ていくハヤトは、やはりうわのそら。
「どうしちまったんだ、ハヤトのやつ?」
ニノがいぶかしげに声を上げる。おれも同感だ。
いや、原因がどこにあるのかはなんとなくわかるのだが、それ以上無断で踏み込むのはよろしくないこと。おれもアスカに視線を向けた。
「んー。おれにわかるのは、オルカさんとはふるい知り合いだってことぐらいだよ。
本気で悩んでるときに、ハナシを聞いてもらう間柄のね」
アスカの笑みには、どこか張り詰めたようなものがある。
同時に、今は聞くな、といいたげな雰囲気も。
コトハさんとナナさんは女子のカンというのか、もはやわかっている感じだが、おれにはつかみきれないし、誤解で余計なことをするのもつまらない。
ニノはおれと同感のようでポーカーフェース。イツカはわかっているのかわかってないのかよくわからないが、かなり真面目な顔をしている。一応視線で釘を刺せば、うなずきが返ってきた。
「わかった、いまは詮索しないでおくよ。
その気になったら、いつでもはなし聞くから。
でさ、今日の議題って?」
ナナさんとコトハさんが仲良く言うには。
「あーそれそれ。
どーせなら『直前にミルクポーション』だけじゃなくって、その前の食事とかからこつこつひつじミルク飲んどくといいんじゃないかなーって考えたんだな!」
「できるんなら直前の何日かは、エアリー牧場でホームステイさせてもらいつつ、修行できたらとも思うんです。
チアキ君とトラオ君もそう考えていて、そのつもりならエアリーさんにお願いしてくれるって言ってました」
するとニノがぽんと手を打つ。
「なるほど、そいつはいいな!
エアリーさんもダンジョンを持っているはずだし、そこに行かせてもらえればちょうどいい」
「おー! どんなんだろうな?」
イツカが目を輝かせると、アスカがにやりと笑む。
「完全S級対応の隠しダンジョンだよ。
ぶっちゃけ、エクセリオンの試練に使われる奴だね」
「まじか、ちょうどいいじゃん!
でさ、入れるんだろおれたち?」
「イツにゃんは相変わらずいいカンしてるねー。
そ。エアリーさんの女神ダンジョンは、妹女神のダンジョンみっつをすべて踏破したパーティーだけが入場を許されるんだ。
メンバーは一部いれかわっていてもOKだから、今のおれたちならいけるよ。
ただ途中の仕掛け扉がポイントで、各女神の特別の寵愛のあかしを示さねば開かない。開いている時間は、あかし一つにつき一時間。
そしてこの扉を全部開けている間だけ、女神『エアリエイル』の待つ奥殿が顕現するってわけなんだけど……」
「そろってるよな」
「そろってるよね」
「そろってるんだな」
「はい!」
ニノ、おれ、ナナさんの声が重なって、コトハさんが可愛く笑う。
イツカがイケイケに立ち上がる。
「っしゃー! それじゃーメンツは決まったようなもんだな!
サリイさんは道中厳しいようなら待っててもらうとして、トラオとチアキとアキト、セナとチナツ。あと俺たちはどっちもノルンいった組だからそのへんはOKで!」
「ちょっと待て、セナとチナツは道中大丈夫なのか? あいつらガッツリあったかい地方の装備だぞ。サリイさんがダメとしたら、あいつら完全にダメダメだろ?」
ニノがつっこむと、コトハさんが微笑んで挙手する。
「あ、それでしたら、みなさん私の『もふもフィールド』に入っていただければ!」
「なにそれ入りたいっ!」
「イツカ食いつくの速すぎ!」
そんなこんなでわいわいと、ダンジョン行きの話が形になっていくのだった。
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これが――バナー効果……っ!!(とつじょ劇画調)
次回、隠しダンジョンに……いけるのか? お楽しみに!




