34-2 学科試験にむけて~黒猫男子のあやし方~
「なーカナタ、ほんのちょっとだけ……だめ?」
「だーめ!」
「そんなあ……俺もーゲンカイ……」
「それは夜の約束でしょ?」
「で~も~」
「甘えてもだめっ!
それともイツカはこんなとこで相棒に襲い掛かるつもり?
お前のことが好きっていってくれてる女子の部屋でだよ?」
「なんか言い方ひどっ?!」
よくわからないがショックを受けてるといった風情の相棒。
まあ、あまりいじめてもなんだし、ちょっとだけサービスしてやるか。
軽くやつの肩にうさ耳をかけてやる。
「ほらイツカ。まずはここまで解いてみよう?
バトルはダメだけど、軽くブラッシングしてあげるから。ね?」
「ううう……がんばる……」
すると後ろのほうから、くすくすとやわらかい笑い声が聞こえてきた。
この部屋を担当している学園メイド、ブルーベリーさんだ。
紺色の髪をポニーテールにしているが、優しい声と姿はライムに似ている。
すこしだけライムより背の低いブルーベリーさんは、トレイのうえからふたつ、湯気を上げるコーヒーカップを作業机の方においてくれる。
「おふたりは本当に仲がよろしいのですわね。
コーヒーをお持ちしましたわ、よろしければどうぞ」
「やったー! サンキューブルーベリーちゃーん!」
わーいとばかりに作業机に向かうイツカ。どれだけさぼりたいんだよ。
つい五分前も、あんな感じでミーミー言っていたってのに。
ともあれ、おれはブルーベリーさんに頭を下げた。
「すみません、おれたちの面倒までみていただいて……」
「メイドはご主人様方の差別など致しませんわ。それはたとえ、ハルカさま、ハルナさまのお言いつけがなかったとしても。
それに、あなた方はこの月萌の希望。セレネさんやねえさまたちの見初めた方々ですもの。
むしろ私としては、今のこの機会を頂けて、心から嬉しいのですわ」
そう言って、ひときわ大きく笑みを咲かせるブルーベリーさん。
実は彼女は、修養のために身分を伏せてシティメイドとして働く、やんごとなき女性だったりする。それも……
「それにしても、ブルーベリーちゃんがソレイユ家の人で、しかもライムちゃんたちの従妹だったなんてな~。どーりで似てるはずだよ!」
「ふふふ。昔なじみのミズキさまにはひとめでばれてしまいましたのよ。
最初はお互い、内緒にするのが大変でしたわ。
私もうっかり『くん』付けで呼びそうになってしまって」
いつも柔らかな雰囲気をたたえるふたりが、あせあせしている様子。想像すると、なんだか微笑ましい。
ほのぼの笑っていると、イツカは「まじかー!」と身を乗り出す。
そうやって少しのよもやま話を重ねると、ブルーベリーさんは空になったコーヒーカップをもって退出。イツカはすっきりした顔で机に向かってくれた。
「さって、気分転換もできたしやるか!
やっぱりかわいい女の子と話すと癒されるよなー!」
「イツカ……お前にもようやく、野郎としてのサガがっ……!!」
「なんかものすごく酷い!!」
土日を休養や野暮用に充て、月曜日。おれたちは学科試験のための勉強を開始した。
のだが、そこで問題が浮上した。
おれたちの寮室の勉強部屋は現状、『武具改良部会』の研究室として提供している。
メンツはシオン以外全員二ツ星。そのまっただなかで五ツ星の学科試験の勉強は、さすがにできない。
かといってアスカのほうは、アクセサリー・アイテム部会に提供で、これまたふさがってしまっている。
そんなわけで二人、五ツ星寮のラウンジで勉強していたところ、ルカとルナが申し出てくれたのだ。
『昼間はあたしたち授業とかでいないから、その間部屋を使えばいいわ!』と。
なんと、お部屋担当のブルーベリーさんたちにもお願いして、面倒を見てもらってくれるという徹底ぶり。
もちろんおれたちも一度は遠慮した。
女の子の部屋を、野郎が使わせていただくなんて! と。
しかし……
『もー、乙女心がわかってないなー。ふたりは遊びに来てほしいのよ!』
『言っとくが、俺たちの部屋は俺たちの『愛の巣』だからな? それでも来るか?』
残り一組の五ツ星バディ、マユリさんとルシードにバッサリ退路を断たれ、こうしてお邪魔しているのだ。
ちょっとだけハメられた感がしないでもないが、こうなったら腹を決めるだけ。
もちろん、やましい気持ちなんか1ミリもない。
午前は学科試験に向けて勉強、午後は実習。放課後はまた勉強し、夕方はブリーフィング。夜は体をほぐしたあと、腕を落とさぬためと実地試験を兼ねてバトルし、ばたんきゅー気味に就寝。
そんなカンヅメの日々が、月曜から水曜まで続き、木曜日。
満を持して学科試験と面接に臨んだおれたちは、無事に卒業の資格を得ることが決まったのだった。
ブックマークとINを頂いておりました! ありがとうございます!
次回、いよいよ月萌杯、対エクセリオンだけを見据えた特訓と開発が始まります!
どうぞ、お楽しみに!




