33-4 話題転換・力技!
五ツ星寮の玄関に近づくと、フユキがすでに待っているのがみえた。
急いで駆け出すと、彼は『まあ急ぐな』と軽く手を上げてこたえてくれる。
クールだ。おれもこうありたい。
それでも、イツカの頭でぴょこぴょこ揺れる猫耳を見ると、段違いに雰囲気が柔らかくなるあたり、隠しきれない猫好きのサガを感じる。
もちろんそれはそれで、わるくないのだけれど。
「フユキー! ごめんなおまたせー」
「ごめんね、わざわざこっちまで迎えに来させちゃって」
「いや、俺が話したいことがあってのことだ。
2つ。歩きながら聞いてくれ」
無駄にムーディーな街灯ふうのあかりの下、すっかり見慣れた中央通りに出、正門を背に、学食のある校舎へ向かう。
その道中、フユキは長い脚でゆったりと俺たちの横を歩きながら、静かに話を始めた。
「まず……
ナツキはパワーを絞る練習をしてみるそうだ。
それなら、カナタへの負担も減るし、ブースト状態も長続きさせることができる。
付き合ってやってもらえるか」
「うん、もちろん!
おれたちの方は、ポーションをパワーアップさせようかって話してたとこ。それと並行すればいいかな」
「2つ目はそのことだ。
以前、エアリー牧場のミルクにかわる代替品を、と色々研究したことがあったろう。
その時の成果が使えるかもしれないと考えた。
もっと具体的には、ひつじミルクポーションだ。あれを、コトハの手でゼリーポーションなどとして作成してもらえば、今日のような事にはなりづらいかもというアイデアだ。
もちろんあれは軽々しく表に出せない。試合前に予め摂取しておく形になる。
もちろんイツカも飲んでおけば、よりパフォーマンスが上がるだろう。
コトハと、チアキたちの了承は取ってある。お前たちがいいなら、早速試作を始めるが」
いつもながら頼もしい。おれたちは二つ返事でよろしくである。
「俺も使えるのか! 助かるー!」
「ありがとう、よろしくお願いするよ!」
「了解。
学食に今みんないるはずだ。そこで二人からも頼むと言ってやってくれ。
二人からは何かないか?」
フユキはてきぱきとメールを送信すると、おれたちに問いかけてきた。
おれはさっそくだが、伝えておきたかったことを言ってしまうことにする。
「あ、おれからはまずお礼。フユキありがとう。メガどれも撃ちやすかった。
抜けもいいし、撃ってからもへんなブレが全然でない。これなら本番でも使えるよ!」
「そうか」
フユキは言葉少なながら、あきらかに嬉しそうな顔になる。
『爆殺卿』ことレンは学園最強の天才ボマーだが、専門は手投げタイプのもの。
銃弾や銃そのものについてなら、フユキに軍配が上がる。
「フレア以外はまだ試作と言っていいものだったから、若干心配だったが……
細かい使用感は後ほど、改めてくれ」
「了解。イツカは?」
「イツカブレードだけどさ、強度心配してたろ?
確かにもうちっと強度あると心強いけど、今回はこれでいいと思ってる。
カナタの神聖強化もあったし、卒試はこれで持たせられる。
あと剣さ、レイジの方が気になるってのは俺も同感。あいつたぶん、もっと重い剣でも大丈夫だよな。ちっさくなっちまった分、その辺思ったよか修正いるかもしんない」
「お前もそう思うか! そうだな、あいつの武器だから、ニノとも相談して……」
そんな風に話していると、いつの間にやら校舎内に。
習慣の便利なところで、きっちり靴も履き替えている。
いつものように洗面所で手を洗ってから、学食に突入した。
「フユキ! こっちだよ――!!」
すぐに、ぴょこぴょこ飛び跳ねるようにして手を振ってるチアキが見つかった。
イツカはおーいと言いつつ手を振って、さっそくどんどん寄っていく。おれたちも手を振りながら後を追う。
チアキのそばには、いつものみんなのほとんどがそろっていた。
姿が見えないのは、三銃士とアスカとハヤト、アキトとセナ。
そして、なぜかレン。
このメンツなら、いると思ったのだが。というかそもそも、さきほどもフユキと一緒に来ていて不思議じゃなかったのだが。
近づいてみれば、レンは牛乳パック片手に机に突っ伏していたことがわかった。
そう、いつもの、疑似酔っ払いモードである。
「えーと、どうしたのレン?」
「りねえ……まだまだ全然、たりねえ……
破壊力とか! 破壊力とか! 破壊力!!
計算上は二発がっつり当てりゃノゾミちゃんを倒せたはず! だけど倒れてねえ!
つまり、まだまだ足りてねえってことだ!!
そもそも二発なんかじゃヌルいんだ……一発、一発で吹っ飛ばすくらいじゃねえと……」
なるほど、だからフユキが一人で来たのか。
この状態のレンはいっちゃなんだが手間のかかる奴と化す。いうなれば、小さな飲んだくれのおっさん。最近ではチアキも心得たもので、急いでいるときはおんぶしてしまったりする。
それでもいつもニコニコ、うれしそうに世話をしているのだから見上げたものだ。
「ほらレン、そろそろご飯食べよう?
だいすきなそぼろごはん、おいしいよ。はい、あーん」
「あーむ……もぐもぐ……」
好物のそぼろご飯を、スプーンで口に運んでやれば、レンはひな鳥のように口を開けてもぐもぐ。
おいしそうに食べ終わるとふたたびあーんと口を開け……ハッと目を見開く。
「お、……
おいてめーらっ、いまのはなし!! いまのはノーカンだから!! お前らは何にも見てないから!! いいなっ!!」
「おーおー、見てない見てないっ。我らが『爆殺卿』サマが『あーん』してもらったとこなんてぜーんぜん見てないよなー!」
トラオは笑顔で軽口をたたくが、なんだかうらやましそうだ。すかさずそこに突っ込み起死回生をはかるレン。
「ほーほーほー、トラオくんは婚約者もいるのに『あーん』はしてもらってないんでしゅかー。ほほーう、それはそれはザンネンでしゅねー?」
「なっ……ち、違う、そ、そんなことはっ……
だっ、だいたいそういうのは人前でやるもんじゃねーし!! 男と女がそういうことをするのはそもそも結婚してからだから!! な、なあサリイ!!」
「……バカッ」
トラオは真っ赤。サリイさんも真っ赤になってトラオをはたく。
フユキとコトハさんもお互いうつむいて真っ赤になっている。
するとこともあろうに、馬鹿正直なリア猫野郎が言い出した。
「えっ、マジ?
やべー、俺まえにスイシャン行った時にセレネとルナに」
これをみなまで言わせたら、食堂が修羅の国と化す!
直感したおれは、すかさずやつめをうさみみロールにした。
「な・ん・に・も・してもらってないよねイツカー?」
「ミ゛ャ゛ー!!」
「そういうわけで、コトハさん、チアキ。
ミルクゼリーポーションの作成、よろしくお願いします。
おれたちももっと省エネで戦えるよう、いろいろ工夫してみるから」
そのまま笑顔で頭を下げて、強引に話を切り替えたのだった。
五ツ星寮は完全別棟なので、そこんとこだけはちょっち不便。
食堂も別個にあるんですけどね。
一応、悪天候時用に地下通路もあります。
次回、ノゾミ先生による講評。
うーん、スローペース! だががんばりやす!




