Bonus Track_32_6 ミニミニサイズの作戦会議!~レイジの場合~
画面の中のシロクマ女の動きは、力感にあふれた見事なものだった。
手加減して、あれか。
それでも、やれないレベルとは思えなかった。
『このレベルなら、イツにゃんとカナぴょんに俺とナツが憑依して、グリとバニがスキル付与装備になればいけそーじゃね?』
するとまっさきに反応してきたのはナツことナツキだ。
かじっていた『ざくざくシュガードーナツ』を急いで飲み込むと、謙虚な一言を吐く。
『そうできたらうれしいけど……オレ、カナタお兄ちゃんの役に立てるかな?
まだまだバトルなんて、へたくそだし……』
『まー、最悪ステータス上積み要員ってことで』
『そっか、それならがんばれるかもっ!』
みため10歳程度の純真猫耳ショタ。その外見通りに素直な奴は、ふさふさの耳しっぽをぱふぱふさせつつニッコリ笑う。柔らかそうなほっぺたにはドーナツのかけら。
うんうん、可愛い奴め。お前はホント癒しだよ。
ドーナツのかけらをとってやり、小さな頭を撫でてると、俺の『不愉快な仲間たち』が口を開いた。
まずは『強欲』の野郎。
いっかにもめんどくさそーにゴロ寝したまま、ダルそーな口調で言いやがる。
『っつかそいつはオマエもだろレイジよ……イツにゃんにオマエが入ったとして出番はねえよ』
ほんとこいつもう怠惰でいいだろ。どんくらい怠惰かっていうと、外見をデフォのままいじっていない。つまりライカとクリソツで紛らわしい。まあ、耳しっぽだけは茶色い狐のものに変えられているが。
それでも言っていることはいちいち正しいところがムカつく。
つづいてこまっしゃくれた声を上げるチビ。『虚栄』のやつめだ。
『アンタはイツカブレードにでも憑依したらどう? それでもライカレベルにゃなれないでしょーけど!』
あーちゃんにバニーなんてかわゆい愛称をつけられて気をよくしたのか、さりげに白のうさみみしっぽつけていやがる。ちょろすぎだろ。ご丁寧に本体部分はドリルツインテつきの黒ゴスロリだ。あざとすぎだろ。
だが憎まれ口のほうはむしろ絶好調。小憎たらしいことこの上ない。
『チッ……グリの野郎はおくとして、テメェわかって言ってんだろバニーちゃんよ? 俺が前衛アタッカータイプだって』
『ふふん。
なんかテキトーにじょーぶな石像でも作ってもらえば? そこに宿ってイツカの装備品として暴れたらいいじゃない。
あたしはカナタのブローチにでもなって、イリュージョン周りだけでラクさせてもらうわ~』
『雑だなオイ。』
ヲーッホッホ、と悪役令嬢風高笑いをかますヤツ。こんにゃろう。
だが言ってることは間違ってないので憎まれ口だけにとどめておく。
高天原にイリュージョン使いは多くない。あーちゃんが一応そうなんだが、ショー関係以外ではあまり使わないので、イツカナもそっちの補強は甘い。
きたるべき対みどりん対策に、こいつの力は不可欠なのだ。
『さんせーいちー。ま、好きにしろよ。
オレはやることやるだけだ』
そして強欲の力も。
RDWの大金庫室に擬態していたヤツの防御力、出納能力はガチで役に立つ。
ふてくされたポーズはとっているものの、マジにふてくされていればこいつが他人にチカラを使わせるわけもない。
ため息をつけば、けたたましいほどの歓声が降ってきた。
「きゃ――!! かっわいいー!!
これぜーんぶライカちゃん分体なのー? ちっちゃーい。かっわいーい!!」
振り仰げば、ツインテールの巨大チワワ女がおめめキラキラしてやがる。
と、そうじゃなかった。今の俺たちの身体が小さいのだ。
いかに神剣ライカとはいえ、扱える質量には限界が設けられている。そのためこうして俺たち全員に身体を貸すなら、一体一体は手のひらサイズのチビにならざるを得ないのである。
ともあれチワワ女は、一緒に来ていた羽根つき女ときゃいきゃいと喜び合う。
「ほんと可愛いわねー!」
「だよねー。きてみてよかったー。
ねーねーノゾミちゃんせんせー、この子たちお持ち帰りしたいのですがー!!」
我らがご主人様はもちろんキッパリ断った。
「ダメだ。ペットじゃないんだぞ」
「ええ~」
「そんなに欲しいならこの形で誰かに作ってもらえ。ニノ以外のな?」
「えええ……作りたいっスせんせぇ……」
オレンジの狐耳をペタンと垂らすニノ。さっきからあえてスルーしていたのだが、奴はスイーツ大好き女子がスイーツ盛り合わせセットを見るような目で俺たちをガン見していた。若干身の危険を感じないでもない。
そこへ愛らしい声が上がる。ナツだ。
かわいらしくニッコリわらって挙手している。
「あ、はいはい! いいこと考えた!
あのね、レイジお兄ちゃんがじょうぶな石像に入って戦う、ってアイデアあったでしょ?
それを、ちっちゃくってかわいいのにすればいいんじゃないかな?
プロトタイプは、ふつうのお人形として、サクラお姉ちゃんにあげるの。
そうすればみーんなしあわせ! でしょっ?」
「おおおお!」
上がる歓声。イツカが超うれしそうにのたまった。
「まじかー!! それじゃあ、ネコミミしっぽつけようぜ!」
「え、完全ねこちゃんフォームじゃなくっていいの? どうせならふるもっふの」
カナタがなにか含みありげに問う。
しかしイツカは、まるで少年漫画の主人公のごとく熱血した。
「ちっちゃい猫ちゃんを戦わせるなんて俺にはできねえっ!!
たとえそれが人形で、なかみがレイジだとしてもっ!!」
「……えーと、ごめん」
こいつらになにがあったのだろう。そんな思考はチワワ女――『サクラ』の声でぶった切られた。
「はいはいっ! あたしてきにはぜひともワンコようそがほしいのですがっ!!」
「犬で猫、か……間を取って狐じゃダメか?」我田引水を試みるニノ。
「そこはうさぎだよ。ね、イズミ?」カナタはニノの身内を抱き込む作戦に出た。
「いやいやいや~。ここはちょっとワンコ的要素があった方がミライも喜ぶんじゃないかな~」対してニノも同じ手段で反撃だ。
「うぐっ?!」有効打に絶句するカナタ。
「それじゃあすなおにワンコにしようよ!」しかしサクラも負けちゃない。
「うぐっ!!」ニノは見事すぎるクリーンヒットを食らってうめき声を上げる、が。
「ちょっとハンターとして意見、いいかな。
レイジ君は、彼の姿を借りて戦ってたんだよね。ヘビクイワシ装備のチカラを使って戦ってた。
つまり、今と同じ鳥装備が一番彼のポテンシャルを引き出せるんじゃない?」サクラと一緒に来ていたポニーテールの羽根女が鋭い一言。
「うぐぐ!!」サクラもぐっとつまったところで、ミライが挙手した。
気遣う様子でのたまうには……
「ねえみんな、まずは本人の意見を聞こうよ。
そもそも、人形に入って戦うの、レイジは賛成?」
「うぐぐっ!!」これには参戦者全員が詰まった。勝負あり、である。
へいへい、と手を振って、俺は一同を見回した。
「まずはミーたんにいっとこう。心配すんな。
俺は何でもするっていっただろ。だから、人形に入るのもお前たちが望むんなら賛成だ。
ぜんぜん嫌じゃないぜ、ホントだからな」
きっぱり言ってやれば、ミーたんの顔がほわっと明るくなる。
うんうん、やつも癒しだ。
そういうものとわかっていても、いいものはいい。
ホンワカとしつつもおれは言葉を継いだ。
「そもそも俺たちゃ『実体』のねえ存在だ。何にでも憑依できるしどうとでも擬態できる。
ナツがああなのはたぬ子ちゃんとの出会いのせーだろうが、俺たちの運命の出会いったらついこないだだ。まだまだ修正は効く。
たしかに俺は、あー、半年程度か? あいつの姿を借りていた。
だからなじんでると言っちゃなじんでるんだが、さすがにあの姿で出張るワケにもいかなかろーよ。
である以上キッパリ頭を切り替えていった方がいい。
そうだな、武器防具が使える方がいい。だから、基本線はヒトガタで。
けもぱーつにゃ別段こだわりねえからよ、もういっそ換装式でよくねーか?
俺たちは、お前らと違ってカラダを瞬時にパーツに合わせられる。さすがに覚醒は無理だがな」
そのとたん、ニノがガタッと立ち上がった。
「きせかえちびっこガーディアンドール……売れるっ!!」
ああああ、とクラフターたちがため息をつく中(あーちゃんだけは笑ってる)、我らが軍師ノゾミちゃんががっちり釘を刺した。
「まずは武具としてしっかり戦果を挙げること。ガチでミリオン飛ばすならそこからだぞ?」
「ハッ……そうですね! わかりましたっ!!
よーし、サイッコーのやつをつくるぞー! 外見も性能もー!! 燃えてきたあああ!!」
すると、商品化じゃんきーのあばれ狐は暴走を中止。しかしむしろキラッキラでやる気百倍。
さすがは俺のご主人様だ。ほれぼれと、その頼もしい横顔を見上げれば、背中の翼がはためいた。
ちょっと遅くなりました……!




