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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_32 あらたな力、3Sとの共同作戦!

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32-4 突然の挑戦と小さな光明!

今回は大丈夫……だいじょうぶ……

「ふぃ~。つっかれたなー。楽しかったけどさ!」

「ほんとだね。お疲れイツカ」

「ん。カナタもお疲れ!」


 おれとイツカは、それぞれのベッドにほとんど同時にばたんきゅーした。

 ここは星降ほしふり園の一室。

 おれたちが残したものを一部屋にまとめ、訪問時の客間として取っておいてくれた部屋だ。


 全ての予定を終えたおれたちは、園の集会室でみんなとおしゃべりに興じた。

 言えないことももちろんあったけれど、そこはうまーく乗り切って。

 やがて九時、集まりはいったんお開きに。

 みんなで小さい子たちを寝かしつけ、『母さん』たちやカナン先生たち、スタディサテライトで共に学んでいたみんなと語りあえば、あっという間に十時半。

 まだまだ話していたかったけど明日がある、今度こそ全員解散となった。


 そうしておれたちはここにいる。

 ここに残していったパジャマに身を包み、『母さん』たちにセッティングしてもらったなつかしのベッドに転げて。

 もっともパジャマはちょっと小さく感じた。おれたちのおさがりでいいという子がいたならば、古びないうち譲ってしまうのがいいだろう。


 それはともあれ。

 イツカはまくらに顔の右半分をうずめて、ほんのすこし眠たげな顔と声で言う。


「あしたは星降中で俺たち、なんかやるんだろ? 一体なんだろな」

「さあ……まあたぶんラビットハントじゃないよ」


 そう、明日の予定はシークレット。

 レモンさんからは、「しっかり寝て体調を整えておいてね☆」と申し渡されている。

 イツカは若干おびえている。


「まさか『夏アド』完コピだったりして……今度は声まで裏声で……」

「それだったらボイトレにメニュー入ってたはずでしょ。だから裏声はないよ、多分」

「なにそれこわい言い切って!!」


 そんな言葉を交わしていると、ふうっとまぶたが落ちてきた。

 イツカのやつはとみれば、もう半分夢の中。

 しかたないので立ち上がり、おやすみと布団をかけてやる。

 するとやつめはふにふにのおねむ顔でこんなことを言ってきた。


「ね~カナタ~、みみは~?」

「はいはい、リアルにうさみみはないからね~」

「えぇ~。うさみみ~」


 この甘えん坊め。こないだうさみみをかけてやったのは失敗だったかもしれない。

 しかし、あれですっかり味を占めたらしきやつめは眠気でうるんだ上目遣いまで駆使して、さらに甘ったれてくる。

 これに負けたらいろいろいけない。おれは全力でツッコミを入れた。


「っていうかお前猫派だったよね??」

「だから~ねこちゃんにかこまれて~おまえのうさみみかぶって……ぐう」


 のたまいながらやつは寝落ちた。


「幼児かよっ!!」


 どっと息をついた。なんてこった。

 正直やつのこれからが心配だ。できるだけ近いうち、ルナとセレネさんと共有しといた方がいいだろう。

 そうと決まったらおれも寝よう。明日は、けっこう大変なことになりそうな予感がする。

 いまのイツカに猫耳はない。代わりに頭をそっと撫で、おれは電気を消したのだった。




 そして、翌朝。


「制限時間は三分間!

 もし一発でもあたしに有効打を当てられたら、きみたちにひとつごほうびをあげる!

 ただし、えっちなお願いはダメだからね☆」

「ふえっ?!」

「はいそれじゃーみんなカウントダウンー。3、2、1」

「ちょっえええっ」

「ゼロ――!」

「えええええええ!!」


 おれの予感は半分あたり、半分外れていたことが判明した。

 朝食をすませて星降中グラウンドへ連れられて行くと……

 そこには、たくさんの観客と、ライム特製の特設バトルステージ。

 そして、レモンさんからの挑戦が待っていた。


 ぶっちゃけこれは、ラビハン以上の無理ゲーである。

 正直言って、まだ『ノゾミ先生のプレテスト』さえ、突破できる自信はないのだ。

 というのに、その後に控える『月萌杯』の運営側、一言でいえば『本番の相手』候補のレモンさんに、歯が立つわけなんかない。


 だが裏を返せばこれは、おれたちへの最高の贈り物である。

 この一戦でわかるのは、いまのレモンさんのリアル。

 イコール、『月萌杯』攻略につながる生データが手に入る、ということなのだ!!

 おれたちはうなずきあうと、レモンさんに向かい合った。


「『0-G』!!」

「『卯王の薬園(ラビットキングダム)』!!」

 実力は、足りない。それでも、現時点最強の作戦は決まっていた。

 レイジ戦後半でやった、回避盾+森体制だ。

 これで即死を防ぎ、補助バフを積む。


「ふふーん。考えたね?

 あたしには苦手、きみたちには得意なフィールドってわけだ。

 いいよいいよー、がんばってごらん?」


 対してレモンさんは余裕の様子。まっしろくもふもふの『くまちゃんグローブ』をはめた両手をだらんとたらし、露出の高い衣装でその場に立っている。これなら。

 おれはイツカに背中に香りづけなしのフレーバード・ミックスポーションを五本まとめて投げると指示を飛ばした。


「イツカ、空中戦で!『足元はおれが』!」

「了解!『お前は隠れとけ』!」

「うん!」


 おれはすばやく『瞬即塹壕クイック・トレンチ』。足元の土を掘り、地中に身を沈めていった。

 植物たちの動きは、ここからでも操れる。イツカを支援し、レモンさんの足元を根っこや草の葉で絡めることも。もちろんたくさんの根を通じて、地上の様子を知ることもできる。

卯王の薬園(ラビットキングダム)』真価はここにあり、といったところだ。


 しかしもちろん、これでレモンさんに勝てないのはわかっている。

 大丈夫。おれにはまだとれる手がある。


 おれは植物の根にさりげなく土を掘ってもらい、レモンさんの足元へ。

 レモンさんは舞うような足取りで、植物たちをかわし、イツカの攻撃をいなしている。

 タイミングよし。おれはレモンさんの足がおれの真上を踏んだその時に、土ごと根っこを周囲に退かせ、すらりとした足にしがみつく。


「当たってお願いっ!!」

「あああああっ!!」


 同時にイツカが斬りかかる。

 一瞬でパワーチャージを終えての、光が走るかのような速攻!

 ぎゅうっとレモンさんにしがみついて叫ぶおれの目の前で、レモンさんは『くまちゃんグローブ』を突き出して……


 残り時間10秒。黒ぷにのにくきゅうが、ぽよんと刃を跳ね返した。

 それでも上がった、赤く小さなダメージポップアップ。


 その値、たったの50。それでもそれは、たしかに約束の有効打だった。

日向だって猫さんに囲まれたいよ――!(心の叫び)


次回、イツカとカナタが願う『ごほうび』とは? どうぞ、お楽しみに!

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