Bonus Track_32_2 アオバ君は護衛がしたい~俺、修行中の新米騎士なんだけど、護衛対象の歌姫(幼馴染)たちがやんちゃすぎてぜんぜん仕事になりませんっ!(泣)
「『ムーンライト・ブレス』!」
「『ムーンライト・ブレス』!」
「いっくわよみんなー!」
「おー!!」
片や、白くしなやかなモフリキッドアーマーに、オコジョの耳しっぽ。
片や、ふわふわの白モモンガマントに、モモンガの耳しっぽ。
これはどーみたって戦う生き物じゃないだろう。そんな『しろフワけもみみしっぽ装備』の美少女たちは、しかしいっぱしの戦士だった。
オコジョ少女は、自己強化発動と同時に抜刀。
大型1、中型3、小型10体で構成された巨大虫型モンスター『スパイダーマンティス』の一群に、一寸の迷いもなく突入していく。
先だけ黒いしっぽで姿勢を制御し、右に左に、アクロバティックに飛び回れば、あっという間に小型3体が光に還る。
一方のモモンガ少女は、おなじく自己強化を終えるなり、自らの足元にむけて身の丈ほどある弓をひく。
青い魔力の矢が地面に跳ねて、風がぶわりと吹き上げる。
白のモモンガマントがふくらんで、少女は一気に舞い上がる。
そうして一見ゆっくり、その実かなりのスピードで旋回しつつ、頭上から一方的に、狙った敵を射抜いていく。
小型、小型、中型、小型。
もちろん二の矢は要らず、一撃だ。
「おおい! だから待てってば二人とも――!
危ないから下がって!! たのむから!!」
それでも慌てた声を上げるのは、こげ茶の猫耳しっぽの少年戦士。
肩に騎士章を付けているところから、王国の騎士の身分にあるとわかる。
まるっこいフォルムのにゃんこブーツとグローブがよく似合う、愛らしい容姿。さらにはオコジョ少女と並ぶ程度の小柄な体躯ながら、実力は確かなよう。
手にしたハルバードを素早くふるえば、背後からオコジョ少女を狙おうとした中型が、アウトレンジで斬り倒される。
どうやらこのねこみみ戦士がハラハラしている相手は、敵モンスターの群れではなく、それをバタバタなぎたおす少女たちの方らしい。ちょっと半泣きで声を張る。
「明後日にはステージなんだぞ!! ケガなんかしたらどーすんだっての――!!」
「平気よ!」
「だって……」
と、少女たちが見上げた先には、太陽と見まごう金色の大きな光弾。
張りと透明感のある美声が、鋭く警告を発する。
「チャージ完了――よけて、三人とも!
『ルーレアの雷霆』ッ!!」
ずがん。すさまじい音とともにたたきつけられたソレは、着弾点から数メートル圏内にある全てを薙ぎ払った。
小型中型はあえなく全滅。ひとり残った大型も、かなりの衝撃を受けたらしくふらふらとしている。
これはチャンス。猫耳の少年戦士はすかさず大型に向き直る。
「ミク、モモカ! 一気に畳みかけるぞ!」
「了解!」
「わかった!」
ミクと呼ばれたオコジョの少女剣士は、まっすぐに大型に向けて飛び込む。
「それじゃあ、いっくわよー!
『オコジョの剣舞』っ!!」
全身に雪白の光をまとい、始めたのは連撃、連撃、連撃。
跳ね飛んでは斬りつけ、地を転がっては斬りつける。
まるで彼女が数名に増えたかのような猛攻に、大型は対処が追い付かず、次々と痛手を負わされていく。
『オコジョの剣舞』。イタチの仲間のもつ『戦舞』スキルを、剣舞と変えた必殺技だ。
「ミク――、はなれて――!!
『ハンマー・アロー・ボンバー』!!」
一通り暴れた頃に上空から声。不吉な黒い影があたりを覆う。
振り仰げばそこに、悪夢が鎮座していた。
モモンガ少女モモカが魔法の大弓を使い、生成した魔法の矢――であるはずの『それ』は、あまりに異様な姿をしていた。
無理矢理に似たものを探すなら、民家よりでかい太ったマグロ。
弓から離れた『それ』は、本来持っていた巨大な質量で、眼下の標的を圧殺せんと迫る。
これにあわせて、猫耳戦士も必殺を放つ。
ぐっと大地に両足を踏ん張れば、左足首のアンクレットがホットオレンジの光を放ち、大地の活力が小さな身体に集い始める。
やがて活力が全身に漲れば、少年はそれをハルバードの穂先にギュッと集める。
自分の力もありったけのせて、大上段から断ち切るように放つ、まばゆい一撃!
「『ルーレアの一閃』っ!!」
上空から、地上からの必殺攻撃は、狙いあやまたず炸裂。
緑の巨体を光に還す。
戦士たちが得物を掲げて小さく瞑目すれば、ふわり。白い翼が舞い降りる。
小さく祈りを捧げつつ現れたのは、あかがね色の杖を携え、白いローブをまとったすらりとした人物だ。
風に脱げたフードの下から、切りそろえられた銀髪と、紅の瞳を抱いた清冽な美貌がのぞく。
大きな背中の翼は風切り羽根が黒く、タンチョウヅルのものであるとわかる。
「みんな大丈夫か? けがはないか?」
戦う天使と見まごうばかりの凛々しい少年は、透きとおる美声で仲間たちを案じる。
オコジョ少女ミクは剣を収めると、元気可愛い笑顔でニッコリ。
だいじょうぶ! というように両手を広げてくるりと回ると、上空で旋回する相棒を指さした。
「だーいじょうぶだってば、ミツル君も!
ほら、ぜんぜんあたしたちピンピンしてる。モモカだってあの通りよ!」
モモカがニッコリ手を振ってくれば、ミツルはちょっと照れたよう。
そそくさとフードをかぶりつつ、ちっちゃくふりふり手を振りかえす。
ミクは満足げにその姿を愛でていたかと思うと、猫耳戦士に向き直る。
「ねっアオバ、大丈夫でしょ、『あたしたち』なら。
この勢いでステージもサクサク成功させるわよ! さーいきましょうっ!」
そのまま、野をこえ山こえどんとこえ~、と謎の鼻歌を歌いつつ、軽い足取りで歩きだす。
上空ではモモカが「せっかく飛んだしさきいくねー」などと言いつつ、ついーんと滑空で飛んでいく。
アオバ少年はトホホな様子で猫耳を折る。
がっくりうつむき、大きく大きくため息した。
「あああもー……これじゃあ護衛にならねーよー……」
「ドンマイ。」
ミツルはぽんとその背中を叩き、なぜかサムズアップ。
「いや意味わかんないって! ミツルもどーにかしてよあいつら!
ああああ。騎士としての初仕事がこんなことになるなんて……どうか何事もありませんように……」
きらきらとした青葉色の瞳をうるませて、こげ茶のお耳もペタンとさせて。
あわれなヤマネコ新米騎士は、遠いお空に祈るのだった。
しかしこのとき彼はまだ、知らなかった。
もっともっと厄介な――剣でも弓でもハルバードでも、どうにもできない問題が、このすぐ後に彼らを見舞うことになるなんて。
前回に引き続き、あえて新作書き出しのように書いてみるテスツッ!!(謎)
次回、歌姫一行を襲った思わぬトラブルとは? どうぞ、お楽しみに!




