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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_31 天使の笑顔とレイジモード!

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31-4 無自覚なうさぎ王子と無自覚な黒猫騎士(ぶらっくにゃいと)

 ニノはやがて、腹を決めたのだろう。

 ふうっと一つ息を吐くと、真正面からおれを見た。

 そうしてこの上なく真剣な声と、真剣な顔で話し出す。


「なあカナタ?

 俺はまえまえっから思ってたんだが、お前どうしてそう、見た目にこだわらないんだ?」

「え?」


 おれはきょとんとしてしまう。だって。


「いや、そんなことないよ? ちゃんと定期的に散髪もしてるし、エステにも行ってるし、私服も……」

「リアルじゃない、装備の話だ。

 確かにいまの装備はよく似合ってる。むしろそんだけイケメンなのに下手に飾ろうとしないところがむしろ潔いとも思う。

 けどな、お前たちはアイドルバトラーだ。見た目はすーごく重要だ。

 それが一世一代の大勝負に向かっていくんだぞ。いまや世界中がおまえたちに注目してるといっても過言じゃない。

 モニター越しに眺めるお前たちの姿。それが魅力的なら魅力的なほど、お前たちの味方は増える。そのためには、強さはもちろん、ある程度の装飾は絶対に必要だ。

 お前に自覚はないようだから、このさいファンシークラフターとしてハッキリ言う。

 カナタ。お前には、そんじょそこらの野郎どもには絶対にない、清楚な気品があるんだ。

 お前の魅力を一番引き立てるのは、気品と清楚さ、そしてかわいらしさのあるファッションだ。それこそ『うさぎの国の王子様』といったイメージのな」


 真剣だった。

 人の耳で聞く声も、うさぎの耳で聴く声も。

 けれど、その内容におれは絶句していた。


「俺たちは、お前たちが魅力的に装ってめっちゃかっこよく勝って、男も女も年寄り子供も、世界中全員がお前たちに心底惚れ込むようにしたい。

 そうすれば、最悪『月萌ツクモエ杯』で負けちまったとしても、月萌は変わる。

 もちろん勝てばソリステラスや、世界を変える原動力になる。

 俺たちはお前らほど強くない。アカネさんは、お前らと戦わなきゃならない立場だ。

 だからせめて、ファッションの力でお前たちに協力したいんだ。

 ハメるみたいにしたことは謝る。けれど、この気持ちは本物だ。

 カナタ。頼む。俺たちを信じてくれ。俺たちの全力をお前の『武器』に加えてくれ!」


 アスカが、アカネさんが、おれを見つめているのを頭の後ろ側で感じた。

 ふたりの気持ちが、真剣であることも。


 ふいに、思い至った。

 ミソラ先生が、おれたちを『アイドルバトラー』にした、本当の理由。

 それはつまり、こういう事だったのかもしれないと。

 イツカを振り返れば、やつも頷いている。


「わかった。ニノを、みんなを信じてお願いするよ。

 おれとイツカの、これからの装備のデザイン面。

 ……ただ、あんまり可愛すぎるとやっぱ恥ずかしいかも。そこのとこは、お願いしていいかな?」

「お、……おう。ま、任せとけ」


 ニノはなぜか、急に照れたように頭をかいた。


『おーし、えっちな衣装オッケーいただきましたー!』

「あ、それはないから。」


 すかさずライカが『その姿に謝ろうか』レベルのアホ言ってくる。もちろん笑顔で一蹴だ。

 アスカが苦笑しながらやつにフェイスロック。かなりよーしゃなくシメながら、ニコニコ笑って言ってきた。


「ごめんね~うちのアホの子が~。

 だいじょぶ、アイバトデビュー戦辺りまでがラインだから。ソレ以上攻めてくと全国放送できなくなるからね!」


 逆にあれは全国放送ぎりぎりレベルなのか。あまり深く考えたくなくなってきた。


「まあいいや。

 そうだ、それでなんだけどさ……」



 ニノがデザイン変更してくれた『四ツ星チョーカー』を今後も着用できることになったこと。ついては、それをベースに真珠と琥珀の飾りの作成をお願いできないか。

 その頼みは快諾され、しばしの話し合いののちにアイテム・デザイン系部会も解散。

 急いで部屋に戻り、ミライを送り出し、お湯が冷めきらないうちにお風呂を頂くと、学食で夕飯を終えた。

 通常授業は受けていないし、実習も行っていないので、今日は課題がない。むしろ逆に、ずっと課題をしていたようなものだが。

 さすがに疲れを感じたので、今日はそのまま寝てしまうことにした。



 たぶんクイーンサイズだろう、ゆったりしたベッドにばふっと身を投げる。ぶ厚いマットレスのおかげで、ちっとも痛くない。

 程よい弾力と柔らかさに、癒される感じがした。

 ばふっという音がして左を向けば、となりのベッドでもイツカが同じようにしていた。

 いつものイツカならそのままわーいわーいとポンポン跳ねそうなもんだが、うつぶせのまま脱力状態。

 そういえば今日、気づけばやつも口数が減っていた。

 直後はアカネさんからプリンを頂いたりしてめっちゃハイテンション、打ち合わせではいろいろ悪乗りしたりしていたけれど……

 おれがお風呂から出た時にはソファーの上、猫耳しっぽを垂らし気味にしてじっと一点を見つめていたし、学食でも静かだったし、大好きなブラッシングも今日はいい、と言ってきた。


「……イツカ、落ち込んでる?」

「……ちょっぴり」


 はたして、やつはちょっと落ち込んでいた。


「あと二か月だぜ。なのに俺、ジュディにスパッと勝てなかった。

 お前たちに色々もらったのに。

『野生開放』で引き出した力もまだ体になじんでないし。第二覚醒もできてないし。

 スキルもステータスも……うあああ。まだまだだー……」

「それ言うならおれもだよ。

 あのとき、第二覚醒使えてたら勝ててた。せめてお前に『0-G』使え、て言えてたら……

 おれもまだまだだね……」

「は――……」


 ふたりして、深々とため息をついていた。

 ふかふかまくらに顔を埋め、もう一度イツカの方を見ると、イツカが甘えんぼモードでこっちを見ていた。

 むかしっからそうなのだが、こういうときのやつは無自覚にあざとい。

 ここにきて黒の猫耳しっぽが付いたおかげで、さらに破壊力が爆発してしまった。


「はいはい、耳だね? しょうがないなあ。

 ほかの野郎どもにはそういう顔しないでよヤバいから。あとあしたブラッシングしてね?」

「んー……」


 毛布の代わりに、ふわっとうさ耳をかけてやると、やつはふにゃんとひだまりの猫のような顔になり、そのまますーすー寝入ってしまった。

 うさ耳と入れ替えにして、そうっと布団をかけてやる。

 最後にかるく猫耳を触らせてもらってお休みを言うと、おれの気持ちもなんだかほっとしていた。

 ベッドに戻り、サイドテーブルのリモコンで照明を落とす。

 ふわふわのふとんをかぶると、すうっと意識が眠りに落ちた。


シリアスさんがほんの少しだけいらしたようです。


次回、修行とか頑張るの巻。

おたのしみに!

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