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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_4 狙われた、カナタ

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33/1358

4-3 ウサプリ様はご機嫌ナナメ~カナタ、学園闘技場デビュー!

誤字報告いただきました、ありがとうございます!

部分数:第33部分

67行目: あれでてあいつは→あれであいつは

 おれはしばし、その場でぽかーんとしていた。

 いまの状況を一言でいえば、なんの説明もなしに、突然ひとり闘技場に放り出された、というものだ。

 これはもしかして、余興のために歌えというやつだろうか。

 ソナタが大ファンだったおかげで、レモン・ソレイユの完コピには自信がある。

 ただ、それにしてはマイクがない。

 着ているものも『ぬののふく』と『かわのくつ』。

 そして、腰にはいつもの魔擲弾銃オーブランチャー

 ただし一丁だけで、装填されているのも500ポイント固定ボム――なんとおれが作ったやつだった、世の中狭い――が3発だけ。


 なるほど。これはつまり、見た目の派手なデカブツの攻撃をよけながら、弱点を正確に撃って片付けろという奴か。だんだん仕掛けが読めてきた。

 回避と狙撃は得意中の得意だ。そして、闘技場のファイトマネーはたとえ負けてもかなりおいしい。

 マッチングされる試合がこんなものばかりなら、このまま闘技場デビューしてしまうのもいいかもしれない。もちろん、スケジュールはやりくりし、無理のない範囲内でだけど。


 そんなことを考えていると、大音量でファンファーレが鳴り響いた。

 演台ではスパンコール120パーセントの真っ赤なスーツをまとった実況解説が、派手なアクションで声を張りはじめた。


『レディース、エーン、ジェントルメンッ。

 本日は待望の、大人気プレイヤーダブルデビュー戦だ!!

 投げ銭の用意はいいかァ? グッズ発注ボタン連打の用意はいいか――?!

 ではっ! まずはみなさんご存じ!

 特待生入学の期待の星。ウサプリこと、うさぎの国の王子様!

 ホシゾラ カナタ選手だ――!!』


 って、なんて紹介するんだよ!!

 とりあえず片手をあげて応えておいたが、場内の巨大モニターに映るおれの顔はやはり赤かった。

『かわいー!!』なんて歓声が上がったけど、それは男としてうれしくない。なんか太い声まで混じってるし。なるほど『後衛うさぎ男はアイドル』ってこういうわけね。よろしい、この試合でそいつをひっくり返してやる。おれは一瞬で決意した。


『ウサプリと言えばやっぱり射撃の腕前! まずはご覧ください!』


 その声とともに、入場ゲートが開く。

 そこから放たれたのは、三匹の小型スパイダーマンティスだった。

超聴覚ハイパーオーディション』で探ったところ、全個体Cランク。HPは493、388、502。特殊なステータスを持つものはなし。

 これに500固定を三発使えというのか。だとしたらおれをなめすぎだ。

 おれは足元の小石を拾い、三匹が近づいてくるのを待った。

 三匹ともが5m円内、つまりこの500ポイント固定ボムの爆発範囲に入った瞬間、その中央に小石を投げこむ。

 そうして追いかけるように『抜打狙撃クイック・エイミング・ショット』!


 後方から500ダメージを与えられ、爆散する小石。

 鋭いその欠片はスパイダーマンティスたちの装甲をつらぬき、150近くのダメージを与えた。  さらにそこに『防御を抜ければ固定で500ダメージを与える』爆炎が吹き付ける。

 結果は、言うまでもないだろう。


 かれらが一斉に淡緑の光球となり、消え去ったあとには、固定ドロップのカマとハネとが浮いていた。

 各個体へのダメージが最大HPの二倍に届かず、ティアブラでいうオーバーキルではなかったためだ。

 もちろん例のごとく、パッキングされた状態でだが。なんとなく微妙だ。


『こ、これは……まさかのっ! すごいっ! まさしくハンター以上のハンターだ――!』


 それでも実況は、ギャラリーは大盛り上がり。

 おれは天井に向けて銃を持った左手を突き上げてみせ、とりあえずドロップ品を回収。

 するとアップルさんがしずしずとやってきて、小さなざぶとんにのっけた500ポイントボム――これもまたおれの作ったものだった――一発を差し出してきた。

 よかった、やっとまともに状況がつかめそうだ。

 少し離れた場所を『羽ばたき飛行式小型カメラ』が浮遊している。

 それに拾われないよう、小声で彼女に問いかけてみた。


「アップルさん。これは一体、どうなってるんですか?」

「メイドのわたくしには詳しいことは……。

 ただ、イツカさまを恨まないであげてくださいましね。

 どうか、ご武運を」

「ありがとうございます」


 頭を下げながらの答えは、やはりというか断片的なものだった。

 ボムをざぶとんから取り上げ、再び一礼して去っていく背中を見送った。

 なるほど、おれを祭り上げて出しておいて、イツカと善戦させる。で、イツカを最終的に勝たせて、花を持たせて闘技場デビュー、と。

 だったら、やってやろうじゃないか。イツカとのバトルなら怖くない。


 たしかに攻撃を食らえばそれなり痛い。けれど、陽気に技と軽口を飛ばしあう模擬戦は、いつだって楽しいものだった。

 あれであいつは優しいのだ。完全に弱点でしかない、おれのでかもふロップイヤーは絶対に狙わない。互いに応酬ができるよう、コンビネーションも考えてくれる――いや、やつはあくまで直感で動いてるのだろうけれど。


『さあ、それでは本番だ!

 本日のセッティングは『とらわれのウサプリ』!

 手製の防具ははぎとられ、許された武器は銃一丁。

 手持ちの弾は自作の500ポイント固定ボムが3発きりだ!

 さあ、我々の王子はこの危機をどう脱してくれるのか?

 それとも衆目の中、無残に蹂躙されてしまうのかっ?!』


 ……いや、なにその無駄にエロくしようとした余分設定。

 おれ野郎なんですけど。そして相手はイツカなんすけど。

 げんなりしながらおれは、入場ゲートの方を見た。

 あー、もうはやくイツカとバトりたい。すっきりさっぱり片づけたい。

 しかし、入場ゲートから現れたのは、いつもの黒い軽武装のねこみみ少年ではなく、なにやらまがまがしい全身鎧フルプレートだった。


 その色合いは、明るすぎるほどの照明をはじいてなお暗い。

 全体的にシンプルなデザインではあるが、ただ一つ、あごの下ほどに目立つ意匠が施されている。

 ごてりとした錠前ふうの飾り。色はもちろん黒。

 全体の中でもそれは特に異質な感じで、なにやら首輪めいた忌まわしさを漂わせていた。


『おおっと、王子に差し向けられた刺客は、謎の黒騎士だああ!

 その正体やいかに?! どうするウサプリ!』


 おれの目の前、ゆっくりとスタート位置につき、腰の剣を抜くそいつ。

 そのしぐさには見覚えがあった。

 どこかぎこちなく、鞘から引き抜かれた長剣にも。

 その刀身には、ブルーのシグナル鉱石が根元から先端まで、ライン状に埋め込まれていた。

「それ、『イツカブレード』……

 イツカ?! おまえ、イツカなの?!」


 見間違いようもない。それはイツカのためにとおれが作り、毎日メンテをしているものだ。 『黒騎士』はこたえない。否、威嚇するようにぶん、と構えた。

 剣の切っ先は、まっすぐこちら。

 そのフォーム、間違いない、イツカだ。

 でも、イツカじゃない。

 だってイツカは、こんなに冷たくおれを見ない。


 兜のフェイスガードの向こう、わずかにのぞくルビーの瞳。

 それはまるっきり、狩りをする猫が、獲物を見るときのそれだった。


「まって……ちょっと……イツカ! なんで」


 ぶった切るようにゴングが鳴った。

 同時にイツカが斬りこんできた。

明日よりすこし投稿ペースを落とさせていただきます(試合終了まで一日二部分の予定)、ごめんなさいm(__)m


明日は朝に二部分(ボーナストラックと本編)投稿いたします。お楽しみに♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 闘技場の乗り良いですね♪ カナタとイツカもオモチャにされてますね。 でもこういう舞台を乗り切ればスターになれる……筈。
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