31-3 モフリキッドアーマーと、狐策士の陰謀
うおおお恥ずかしい! 修正いたします!!
2025.06.29
ダイタランシー→ダイラタンシー
2020.07.29
すずいと→ずずいと
ライムはミライと入れ替わりの約束なので、本来だったらもう帰ってもらっていてよかった。
しかし事情をきいた彼女は、わざわざ残って手伝ってくれたのだった。
今日は何から何までありがとう、とみんなで彼女を見送れば、つぎの打ち合わせまで四十分とすこし。
ライムとミライはお風呂の準備をしてくれていたので、ありがたくイツカはお風呂へ。おれはみんなと勉強部屋へ入った。
まずは修復してもらったモフリキッドアーマーをチェック、充分すぎるほどの仕上がりにちょっと感動したのち、どの改良案で行くかを話し合う。
防御力、アーマー自体の耐久力を考えれば、もっと毛皮状部分の厚みを増したいところ。
しかし増やせば当然、重くなる。そうでなくとも魔力経路とPC&P機構、その裏打ちなど、いろいろ増やして重みが増しているのだ。これ以上となれば、イツカの身軽さを損ないかねない。
なら、魔晶石に『軽量化』も込めるのはどうか。あまり魔法頼みにして解呪くらうと泣けるぞ。イツカの体力もついているのだし、その重量は許容範囲じゃないか? 気になるなら、攻撃力の底上げで防御と変えたほうが。いやいや、相手はエクセリオン、防御は薄くはできない。もしあとがきつくなるなら脱着可能式のパーツにして……
わいわい言い合い、なんとなく方向性が見えてきたところへ、フサピカになったイツカがやってきた。
とりあえず直したてを着せて動いてもらう。よしよし、だいじょうぶそうだ。
アーマーの改良形式は、直接アーマーを増毛するのと、アタッチメント式とどっちがよりいいかイツカ本人に聞いてみたところ、ナナメ上の答えが返ってきた。
「ってか魔晶石に修復込めときゃ無敵じゃね?
とか、どーしてもヤバければ、適宜カナタに修復のオーブで撃ってもらえば」
「あああああ!!」
もちろん『修復』での対応は応急処置の域を出ない。きちんと直すには手作業でのメンテが必要だ。
しかし損耗がごくごく軽い段階、つまりただリキッド部分の消耗であるならば、それで間に合ってしまう。
どのみち、おれはイツカとともに戦うのだ。背後からフォローするおれが予備バッテリーになってやれば、重量問題は、問題にならなくなる。
もっともおれも直接対決で忙殺されていたらそうも行かないので、晶石での対応を併用するのがベストということになる。
それでも、最低限胸部、前腕のモフ度は上げた方が安心、ということで、上げる方向で。
データ上で改良シミュレーションを行い、ラフイメージを作ってみたところで、次の打ち合わせの五分前。
本日の武具開発チーム・共同研究会はお開きとなった。
チアキはレンに宿題をさせるために自室に強制連行。フユキとシオンもそれぞれ寮室に戻ると出ていった。
ハルオミだけはすぐにメールをまとめてしまいたいからというので、しばしそのまま。
おれとイツカ、ニノの三人は、アスカの部屋へ移動を開始した。
寮室の扉を出、左を向くと、十メートルほどの地点に、その場所はもう見える。
そう、アスカとハヤトの寮室は、おれたちのお隣なのだ。
すでにドアは開かれており、その前に背の高い執事さんがすらりと立っていた。
彼はおれたちの姿を認めると、怜悧にすら見える美貌を小さくほころばせ、腰を折るように一礼してくれた。
ほんの微かに上品な香り。秀でた額にはらり、銀髪がひとすじ落ちかかれば、ストイックな中に漂うおとなの色香。
一体何者だ、このハイレベルなイケメンは。どこかアスカやレインさんに似ている気もするから、もしかしてタカシロの流れを汲む誰かだろうか。
……なんて思ったのもつかの間。
『お、いらっさーい。もうみんなそろってるよん。
ささ、ずずいと奥へ』
「ぶふっ?!」
端正な口元から流れ出したのは、いつものライカのしゃべりだった。
これはひどい。三人でぶふっと吹いてしまった。
ギャップ系イケメン執事に連れられて応接に入れば、ソファーには上座からアカネさん、コトハさんナナさんがかけていた。下座にアスカとハヤト。
おれたち三人がその中間にあたる席にお邪魔すると、ライカがささっと紅茶を入れてくれる。
うん、黙っていれば超有能イケメン執事だ。一体どうしてああなった。
ともあれ、打ち合わせは始まった。
まず、コトハさんとナナさんがゼリーポーションをこの短期間でさらに改良してくれたとの発表が。
飲めばおなかでゆっくりとけるが、びんに詰めて投げたり、オーブにつめて撃ったりするとその衝撃で粘性が一気に低下、従来のようにパッと回復させることも可能になったというのだ。
「すごいね、どうやってこんなの考え付いたの?」
驚いて聞くと、ちょっぴりはにかんだ笑いとともに、コトハさんは教えてくれた。
「これ、ゼリーというよりジャムなんです。かための」
「あーなるほどジャムな!」
「なるほど、それ盲点だったよ!」
ニノとおれは瞬時に納得したが、イツカは「え? え?」とキョトン。
やつにはナナさんが優しく教えてくれた。
「ん~、ケチャップとかマヨネーズだとイツにゃんにはわかりやすいかな~。
ほらあれ、入れ物の中ではそんなたぷたぷしたりしないけど、ぐーっと出したりぬったりするときわりかしサラッといくじゃん? 混ぜてるとちょっとサラッとしたかんじなるし」
「あ~!」
いわゆるチキソトロピー。モフリキッドアーマーで利用しているダイラタンシーとは真逆の性質だ。
ちなみにイツカのやつは納得したのはいいのだが、ケチャップと聞いてピザ食べたいモードになってしまっている。さっきプリン食べたばかりなのに。
コトハさんはそんなイツカをやさしく見つめつつも軌道修正。
「だから、日持ちもそのくらいになっちゃうんです。だいたい、瓶やオーブに入れた後半年。
ポーションみたいに何年も置いておくことは難しいから……」
「おう、いっぱい使わせてもらうぜ! ありがとなコトハちゃんっ!」
「はい!」
はじめはナナさんの影に隠れていた彼女も、いつの間にかすっかり頼もしくなってくれた。
微笑ましく見つめていると、アスカがすかさずまぜっかえす。
「カナぴょんはホンっト家庭的な子大好きだなー。正統派のライムちゃん、ギャップ系のルカにゃん、こいぬちゃん系のミーたん」
「いやミライは将来の弟だからねっ?
それよりモフリキッドアーマー! ちょっと改良して形変わる感じなんです。アカネさんの衣装のデザインを邪魔してないといいんですけど!」
何度でもいうが、ミライへのおれの気持ちは清らかだ。悪乗りしかけたイツカをすばやくうさ耳ロールにしつつ、おれは携帯型端末をテーブルに置く。
ポチポチと操作をして、さっきのラフスケッチを3D投影してみせると、みんなからは予想外の反応が返ってきた。
「っ……」
ハヤトが息をのみ、コトハさんが口元を覆う。
ナナさんはいつもの笑顔だが、カピバラの耳が高速でピコピコピコ。
沈黙を破ったのは、アカネさんの一声だった。
「なにこれかわいくなってる――!!」
『うっわかっわいー!!』
「あっははは! グッジョブ『ぶぐかい』――!!」
ライカとアスカは腹を抱えて笑いつつもよくやったーと親指を突き上げる。
一体なんでだ。イツカと顔を見合わせる。
「いやだってさ! 胸のとこと前腕! もっふりコロッとなっててぬこ萌え度アップしてるじゃんー! やーマジよくやったニノっち!! これで後も捗るわ!!」
「なんのことだアスカ? 俺はただイツカの要望を形にしただけだぞ?」
ニノはきょとんとした顔でそう言ったものの、次の瞬間くくくくく……と笑い始めた。
「なるほどつまり、『わかってやってた』ってわけだねニノ?」
ぽかーんとしているイツカをわきに置き、おれはニノに笑顔を向けた。
笑いやんだやつの肩に優しく手を置いておれは告げた。
「『おれのもあわせて可愛く』とか言い出したら。わかってるよね?」
「え、えええええ…………」
ニノはなぜか、妙な汗をかき始めた。
コロッとしたにゃんこもシュッとしたにゃんこも可愛いと思います!!(主張)
シリアス「ワイの出番は」
すまねえ……orz
次回はたぶんシリアスさんが来ると思います。来てほしいです。お楽しみに!




