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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_30 プロの彼女ら、学生のおれたち

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30-7 プロの彼女ら、学生のおれたち

『グランドスラム・改』の大きさと威力は、突進してくる大型車両に匹敵する。

 見た目だけでも迫力のあるそれを、まともに受け止めようとする者は見たことがない。

 まして、防御が抜かれた状態で手を出すなんて。

 もしも高天原生の誰かがそれをしたならば、全員一致で『勇者』の称号が贈られることだろう。

 

 ともあれ、そんな無茶をしたダメージは大きなもの。

『グリーン』のアバターは耐久限界を迎え、消失した。

 それと同時に、彼女が仕掛けた『ライトニング・ケージ』も消失。

 おれは、残る二人に意識を向けた。


 ジュディは先生と渡り合っている。

 シルヴァン先生は、ハンター野外実習の引率を務めるだけあり、実力は確かだ。その先生が、仕留められていない。

 ジュディは一体前回から、どれだけ腕を上げたのだろう。どれだけ鍛えてきたのだろう。


「先生!」


 彼女は、プロ。おれたちは、しょせん学生。

 それでも、それでも思った。


「彼女と、やらせてください!」

「こいつ、カナタのライバルだからさ! 

 できる限りのことをしてまた会おうって約束してたから!」


 そのきもちに触れたいと。

 おれたちがそれを伝えれば、両者、同時に得物を引いた。

 シルヴァン先生は、一瞬切ない顔になる。

 しかし、振り切るようにしっぽをふった。


「ソリステラスに行かせることはできませんよ。たとえば、君たちの意に背くことになってでも。

 限界が来たら、強制的に止めます。それでもいいなら、やりなさい。

 これをもって君たちのバディ実習とします。そのつもりで臨むように」

「おやおや、ということはあたしも実習のエサ扱いかい? レディに対してずいぶんな扱いだねえ?」


 すると、横合いから飛んでくる軽口。マルキアだ。

 マユリさんの『ソニックブラスト』をかわしつつ、ルシード君と切り結んでいる。

 マルキアは踊るようなステップでくるくると立ち位置を入れ替える。そのためルカは加勢かなわず様子をうかがい、ハヤトがライカを使って神聖魔法での支援を行っている状態だ。

 もちろん『セイクリッド・フルブレッシング』はとうに使っている。それでも、まるで軽くあしらわれている。


 先生は渋い顔になる。


「あなたこそ、本気ではないでしょうに」

「そりゃそうさ。頑張る子供らを眺めていると癒されるからねえ。

 あんただってそうじゃないかい、白い奴?」

「『癒し』というのはもっと暖かく清らかな言葉だったと思いましたがね?

 ともあれ、選手交代です。

 ジュディ殿。ご存じの通り、この子たちは学生。普段交戦するアバターと違い、実際に傷を負いうる『肉入り』です。

 その点ご留意の上、どうぞお手柔らかに」

「……!!」


 シルヴァン先生はそれでも、的確にでっかい釘を刺していった。

 ジュディの手が一つ大きく震えた。

 イツカが抗議の声を上げかける。

 が、おれはイツカを制止した。それが先生の譲れないラインと、おれにはわかっていたからだ。

 イツカもわからないわけではない。

 試験のすんでいないモフリキッドアーマーをまとったやつは、口をつぐみ、剣を抜いた。



 女子一人に男二人。それだけ聞くと、卑怯としか言いようのない構図。

 しかし、おれたち二人でかかっても、彼女に勝つことはできない、となんとなくわかる。

 第二覚醒をタイミングよく使えたなら、ドローもあり、ぐらいのものだろう。

 そのわずかな可能性をこじあけんとする黒猫イツカは、もうこちらを振り向かない。

 黒い背中に強化のポーションを投げれば、二人は同時に地を蹴った。



 しかし、開戦してから2分もしないうち、イツカはたたらをふんでストップをかけてきた。

 

「カナタ! その方法は無理だ! つうかやめて無理っ!」


 おれは両手の魔擲弾銃オーブ・ランチャーに『瞬即装填フラッシュ・ロード』。ボムと回復のボムを混ぜこぜに装填すると、ジュディに向けて撃ち込んでいった。

 前回、彼女の不意を突き、勝ちにつなげた作戦だ。

 しかしもちろん、もうそれは通用しなかった。

 回復のボムは自分にストック。ボムだけを的確により分け、イツカに投げてくる。

 なんとジュディは、あのふしぎな網でキャッチしたものが何であるかを、ざっくりとでも判別できるようになっていたのだ。


 イツカのストップに了解と答え、ふたたび『瞬即装填フラッシュ・ロード』。左の銃に装填してあったボムを、新作の『回復と強化のミックスポーション弾』に差し替えた。

 奇策がだめなら、真正直に手数であたるほかはない。イツカは小さめのモーションで剣を振るい続け、おれはイツカを支援し続けた。


 それでも、イツカが剣を合わせるたびに、イツカにつけた支援効果が吸い取られる。

 まるで泥沼だ。これではいずれ、こちらの持ち球が尽きる。


 せめて、あの網の逆側をつければ。姿勢だけでも崩せれば。

 そう考え、右の銃でときおり足元を狙ってみたが、彼女は驚くべき正確さで対処してくる。


 あれからおれたちもトレーニングや実習、試合に合宿、はてはスゥさんの特訓を経て、それなりに実力を培ってきた自信はあった。

 それでも彼女には届いていない。なぜか。


 理由はすぐ、思い当たった。至極当たり前のことだった。

 ああ、なんておれはバカなんだろう。

 気持ちだけで言いだして、イツカにも先生にも迷惑を。


 ぐっと歯を食いしばった。

 それでも、それでもだ。

 震える手で、おれはもういちど『瞬即装填フラッシュ・ロード』。イツカの背に、ミックスポーション弾を撃ち込み続ける。

 続けなければならないから。

 おれたちのこの行動にはいま、個人を超えた意味があるからだ。


 今回のターゲットであるおれたちが、みずから身をさらしてくれば、ジュディは食いつかざるを得ない。

 必然、先生は手すきになる。戦況に集中できる。

 いざとなったら、このフィールドを棄ててでも、生徒たちを安全な場所へ転送する、その判断と行動をする役目が、先生にはある。

 同時に、それが可能である限り、増援が到着するまで抵抗を続け、時間を稼がねばならない。


 だから、先生はおれたちの行動を『許した』。

 勝てやしないのにジュディに挑んでみるという、青さ丸出しの愚行を。

 だから、先生はルシード君たちを、マルキアに『差し出した』。

 彼女が格下を相手に、『遊び』に興じるとわかっていながら。


「よし、そこまでだ。

 まったく、陽動などと手間を取らせやがって」


 再び歯を食いしばったその時、唐突に戦いは終わった。

 やっときたのだ。増援が。


 対マルキア秘密兵器というべき『青嵐公』。


「えへへー。野暮用でちょっとだけ早く来ちゃったー。

 新しい衣装、いろいろ考えてきたよー? どれもめっちゃかわいかっこいいから!」


 そして、今日夕方から打ち合わせの予定だった、アカネさんが手を振っていた。


評価いただいてしまいました! ありがとうございます!

ありがたすぎて赤飯に食われる勢いです!(謎)


次回、ちょっぴりソリステラスサイドの予定!

お楽しみに!!

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